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『FX戦士くるみちゃん8』のそれはそれは立派な負けフラグ

『FX戦士くるみちゃん』8巻読んだ。(以下ネタバレあり)
前巻の〇ページにも渡るぶち抜きスイスフランショックを喰らったくるみは、なけなしの100万を手にして最後の戦いに挑むのであった……。

もうこの時点で嫌な予感しかしねぇー。
会社の上司が「ちょっと山田くん、いま時間あるかな?」って言いだしたときくらいに嫌な予感しかしねぇー。
俺たちの戦いはこれからだ!
が打ち切り漫画のありがちな最終回であるように、
これが一世一代の最後の勝負だ!
つって有り金全部ぶっこむ賭け事は、人生の最終回になりがち。
こんな立派な負けフラグなかなかない。

リアルでもそうじゃない?
Xとかで株クラあたりをのぞいていると、ごくたまに人生賭けてるレベルの取引をしている人がいる。
すでに負けて借金をしているのに、その借金を返すために投資をしている人とか。
私はそういう人のウォッチをするのがすごい好きなのだが(野次馬)、投資で負けを取り戻して奇跡の大復活を実現しているのを、いままで見たことがない。
もちろん私が観測した範囲において、という注釈付きなのだが、そういう勝負に出ている人で勝っている人の話を聞いたこともない。

本を出版したりマネー系記事にインタビューされたりしてる、有名な投資の成功者やインフルエンサーにしてもそうだ。
彼らももちろん何回も負けを経験していて、その失敗談が語られることもある。
けれど、投資でウン百万ウン千万の借金を背負って、そこから復活を果たしたみたいなストーリーは聞いたことがない。
投資で富を築いた人たちは、負けたときはちゃんと冷静に損切をしていて、損を限定している。

おそらく「これが人生を賭けた大勝負!」って気負うことが、投資においてはマイナスに働くんだと思う。
前の巻で「FX市場は平等である。投資家それぞれの事情など決して考慮されることはない。どれだけ相場に感情を乗せていても、お金を積んでいても」みたいな文章があったけれど、本当にそのとおり。
むしろ冷静な判断ができなくなるので、感情を乗せるのは負けの第一歩まである。
私の乏しい投資経験においても「乗るしかない、このビッグウェーブに!」って熱くなって売買したときは100パー損失出してるし。

という勉強ができるFX戦士くるみちゃんは、やはり最高の教材。
今巻はくるみの最後の戦い回で、変顔回でもあった。
変顔してるおっさんYoutuberのサムネみたいなコマが怒涛の続出。
特にチャートがくるみの予想と違う動きをしたときの「?」の顔がよくて、思わず笑ってしまった。
「?」じゃねーよ「?」じゃ。
けどこの感情は、私にも身に覚えがありすぎる。
上がる上がると思っていたのに下がったときって、ほんと意味わかんないよね。

そしてこんな立派な立派な死亡フラグを立てておいて、回避できることなどなく、無事死亡するのだった。
でも、

  終
制作・著作
━━━━━
 ⓃⒽⓀ

という感じでは終わらないし、ある意味そこから物語が始まっていた。
むしろここからが本番だった。
マイナスの意味での億り人となったくるみは、送られる側になろうとして身辺整理を始める。
そこからのくるみの心情というか、言動が、かなりリアルでね。
私は作品と作者を結びつけるのは嫌いなんだが、この巻ばかりは、作者も負けてこんな気持ちになったことあるんだろうか?
と考えてしまった。
それくらい、絶望する人間の心の動きがこれでもかというくらい丁寧に描かれているのだ。

「そっか…お母さんも同じ気持ちだったのかも」
ってくるみが気づくシーンとか、いい。
踏切で待つ萌智子が
「祈りを捧げる千羽鶴は必要ない」
ってモノローグで断言するシーンとか、いい。

あれ? これ読んでる漫画変わった?
さっきまでくるみちゃんの変顔劇場だったのに……。
なんかちょいちょい思うけれどこの漫画、演出や作画が映画っぽくてかなりかっこいいコマが出てくる。

萌智子が「死にたいのか死にたくないのか」とくるみに詰めるシーンもよかったし。
お、お前そんなキャラだっけ?
と戸惑うけれど、萌智子は家庭環境から「くるみは自分と同じだ」みたいに思っていたシーンもあったし、もしかしたら自分と重ねているのかもしれんね。
もしくは単純にくるみのことが好きなのかもしれない。

さて、この漫画はどういう着地をするんだろう。
当初は、一人や二人は破滅する鬱エンドで終わると予想していて、それはそれでいいと思うんだが、どうやらそうはならなさそうかな?
ぬるいといえばぬるいかもしれないが、萌智子がくるみを救おうとする展開もかなりよかったので、とりあえず最後まで見届けようと思う。

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