【ディズニー音楽の歴史】ミュージカルの掟を破壊!映画『ターザン』とフィル・コリンズの革命な話
1999年に公開された長編第37作『ターザン(Tarzan)』。
『リトル・マーメイド』から10年間続いた、輝かしい「ディズニー・ルネサンス」の最後を飾る特大ヒット作です。
本作の最大の功績は、ディズニーアニメーションの音楽構造を根本から変えてしまったことにあります。白羽の矢が立ったのは、イギリスの世界的ロック/ポップ・ミュージシャン、フィル・コリンズ。
彼と、映画音楽家のマーク・マンシーナがタッグを組み、ジャングルの野性味と極上のポップスが融合した、全く新しいサウンドトラックを生み出しました。
【雑学①】最大の革命!「キャラクターが歌わない」ディズニー映画
これまでのディズニー映画の絶対的なルールは、「キャラクターが突然歌い出して気持ちを表現する(ミュージカル形式)」ことでした。
しかし、フィル・コリンズは制作陣に対し「野生で育ったターザンが、突然立ち上がって朗々と歌い出すのは不自然だ」と主張しました。
そこで本作がとった画期的な手法が、「フィル・コリンズ自身が、第三者のストーリーテラー(あるいはキャラクターの心の声)として全編の歌を歌う」というものです(※カーラの冒頭の子守唄などを除く)。
これにより、映画はミュージカルというより「極上のミュージックビデオ」や「ロックオペラ」のような、かつてないスタイリッシュな疾走感を手に入れました。
【雑学②】ドラマーの真骨頂!タイプライターも楽器になる「トラッシン・ザ・キャンプ」
フィル・コリンズは、元々超絶技巧の「ドラマー」として世界的に名を馳せた人物です。
そのため、『ターザン』の音楽は従来のオーケストラ主体のディズニー音楽とは異なり、「打楽器(パーカッション)とリズム」が異常なほど強調されています。
その真骨頂が、ゴリラたちが人間のベースキャンプを荒らすシーンで流れる「トラッシン・ザ・キャンプ(Trashin' the Camp)」です。
この曲では、スキャット(Nsyncとの共演版も有名)と共に、「タイプライターの打鍵音、ガラスが割れる音、鍋やフライパンを叩く音」といった日用品のサンプリング音が、完璧なリズムのパーカッションとして使用されています。
まさにドラマーのフィル・コリンズだからこそ生み出せた、圧倒的なグルーヴ感です。
【雑学③】狂気の執念!フィル・コリンズ本人が「5ヶ国語」で歌唱
本作の主題歌であり、アカデミー賞歌曲賞を受賞した歴史的名曲「ユール・ビー・イン・マイ・ハート(You'll Be in My Heart)」。
フィル・コリンズは、この曲に込めた「親子の普遍的な愛」というメッセージを世界中の人々に直接届けるため、なんと自分自身の声で「英語・フランス語・ドイツ語・イタリア語・スペイン語」の5ヶ国語のバージョンをレコーディングしました。
外国語の発音を一つ一つプロの指導のもとで暗記し、全く同じエモーショナルな熱量で歌い上げるという、アーティストとしての狂気とも言える執念。世界中での特大ヒットは、彼のこの妥協なき情熱によってもたらされたのです。
(※ちなみに日本語版の歌唱は、V6の坂本昌行さんが担当し、こちらもファンの間で伝説的な名カバーとして語り継がれています!)
ルネサンスの終焉と、新たな音楽の夜明け
『ターザン』の音楽は、アラン・メンケンが築き上げた「ディズニー=ブロードウェイ」という10年間の黄金の呪縛から、スタジオを見事に解き放ちました。
重低音が響くジャングルのパーカッションと、フィル・コリンズの哀愁漂うハスキーボイス。
ぜひ、低音の鳴りが良いスピーカーで、この「掟破りのサウンドトラック」を体感してみてください!
