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『水田の小言を熟読するほど一生ものの自炊力が身につくいちいちうるさい定番レシピ』

水田の小言を熟読するほど一生ものの自炊力が身につくいちいちうるさい定番レシピ

著者:水田信二
発売日:2025年3月25日
発行元:ヨシモトブックス
ページ数:128ページ
金額:1760円(税込み)


 初めてこのタイトルを見た時の感想は「ながあ……」だった。正直今も思っている。そして、中身を見た時の感想は「文字多っ!細かっ!」だった。   
 しかし、一通り読み終えて表紙へ戻ると、タイトルの意味がわかる――内容をわりと端的に伝えているということがわかるレシピ本となっている。

 
 この『水田の小言を熟読するほど一生ものの自炊力が身につくいちいちうるさい定番レシピ』(以下レシピ本と記載)は、水田信二さんという芸人の方が著者だ。
 元料理人で、それを活かして様々な番組で料理をしたり、水田さんの冠番組『水田信二の注文の多い料理教室』(以下、料理教室と記載)では、先生としてゲストに料理の作り方や料理の楽しさを教授されたりしている。
※『水田信二の注文の多い料理教室』
 →BSよしもとにて、毎週日曜日21:30~放送中(7月より放送曜日と時間が変更になった)。また、TVerやYouTubeでも配信中。

 私はこの料理教室が大好きだ。ずっとずっと続いて欲しいため、再生回数を増やす以外で何か力になれるもの(クラウドファンディングなど)があったらやりたいと思っているくらい好きだ。

 この番組に生徒として来られるゲストの方々は、「え、これ本当に先生じゃなくて俺が作るんですね……」と苦笑していたり、先生の顔色や反応を窺い、時には滝のように汗を流したりして料理をしている。書き出していて改めて思ったが、料理番組ではあまり見ない光景ばかりだ。
 しかし、料理が完成し、テーブルに移動して自分で作った料理を口にしたゲストの方々は、皆揃って一口目をいった後は目を見開き、「ん~~~~まっ!」と驚いたようにそして嬉しそうに言う。
 私の中では、このゲストの反応と、それを隣で優しい笑顔を浮かべながら見ている水田さんの姿を見るのもこの番組の楽しみの1つになっている。

 

 “食べる楽しさ”というものは、食に関する楽しみの中でみると一番感じたりしやすいものだと私は思っている。しかし一方で、“料理を作る楽しさ”というものはなかなか難しい。
 一人暮らしや結婚など生活の変化をきっかけに料理を始める人も多いと思うが、最初は“料理は生きていくために/家族のためにやらなければいけないもの”という認識になってしまっている人もいるのではないだろうか。

 何を作るか考えて食材を買って家で作って皿洗いをして。やってみると結構体力がいるものだ。そのうえ、時間ばかりがかかってあまり良い物ができなかった時は絶望に近い。そんな経験が重なると、料理に対する苦手意識が出てきて、楽しくない/やりたくない、という気持ちになってしまう人がいるのもわかる。
 しかし水田さんは、時に厳しく時に優しく普通の料理番組では触れないであろう細かいところも含めて教え、ゲストが帰る頃には、この料理を自分が作ったんだという喜びと誇らしさを感じさせるとともに、また家で作りたい!と次に繋がるような“料理を作る楽しさ”までを伝えている。そこが水田さんの教え方のすごくて素敵なところだと私は思う。

 



 レシピ本の紹介から脱線しまくっているが、ここで少し自分の話をさせていただきたい。
 私は今24歳で、料理は中学1年生(12、13歳)くらいからするようになった。主に土日の朝とお昼のごはん。ストレス解消も兼ねていて、朝からガッツリめのパスタ料理を作ったり、パウンドケーキなどのお菓子を焼いたりと台所に居る時間が結構長かった。

 昔から料理動画や料理番組を見るのが好きで、リアルタイムで見たものや録画して見たもののなかで気になったレシピをもとに作ることもあった。しかし、計量することはほとんどない。レシピは見るが、家にある材料などの量に合わせるため、結局全てが目分量に。(計算するべきだったのだが、面倒さが圧倒的に勝っていた)
 そのうえ、家にない材料や調味料は他のものに代えて作ったり入れずに作ったりなどしていたため、動画や番組で紹介されていた料理の本来の味を味わったことがないと言える。応用力は多少身についたが、少しもったいないこともしていたなと今は思う。

 

 その後、中学から高校に上がったタイミングで忙しさなどが変化し、第一次料理ブームが私の中で終わった。
 ちなみに第一次とは書いたが、第二次料理ブームはまだ来ていない。燃え尽きた状態に近いと表現するべきか、ここしばらくは料理に対しておざなりになっていた。朝昼晩自分で作るし、一時はお弁当なども作っていたが、ほとんどが冷蔵庫の中にある食材でなんとなくで作るものばかり。これも立派な料理であることに間違いはないと思うのだが、毎週台所に立って(今日はこれを作るんだ!)と意気込んでいた中学生の頃の自分に伝えたら驚くとは思う。
 思い返せば、この料理を作るためにはこの材料や器具が必要だから……とあからじめ確認しながら買い物リストにメモすることも少なくなっていた。

 

 そんななか、先述した料理教室が始まった。元々水田信二さんが好きで、料理番組を見ることも好きだったため、必然的に毎週必ず見るようになった。
 そして今年の3月、大好きな料理番組をされている方がレシピ本を出版された。

 
 料理教室のように口頭ではなく、文章で伝えるとなると一体どうなるのだろうか。きっと、元料理人であり芸人である水田さんならではのレシピ本になっているのだろうなとは思っていたが、読んでみると、料理教室よりもさらに細かく、タイトル通りうるさかった。
 料理をしている時の水田さんのしゃべり方や声のトーンなどを知っている方にはきっとわかってもらえると思うのだが、読んでいくと音読されているかのごとく水田さんの声が脳内で再生された。

 時に水田さんからの小言にくすっと笑い、なるほどなるほどと頷き、理解を深め、新たな知識を得られる。読み物としてもかなり面白い。そして、冒頭では材料の切り方や火加減などについてもイラスト付きでわかりやすく解説されていて、学校の教材としても良さそうなほどの素敵なレシピ本だ。



 
 特に私がこのレシピ本で好きなところを2つ紹介したい。

 1つめは、工程にかかるであろう時間が書かれているところだ。料理全体にかかるであろう時間が書かれているのは一般的だが、このレシピ本は工程ごとに時間が記されている。それも秒単位で、だ。

 一番最初に載っている『牛肉のしょうゆ焼き丼(ごはんの炊き方)』という料理名の下に『58分50秒』と書かれていることに気づいた時は、思わず「えっ!?」と声が出た。まだ少ししか読んでいないのに、この時点でもうすでに(こんなレシピ本初めて見た……)という感想を抱いていた。

 料理をしたことがなかったり、料理が苦手だったりする人は、この工程にはどれくらい時間をかければ良いのだろうかと迷うことも多いと思う。
 また、人によって考え方も違うため、野菜の皮を剥く工程で考えてみた時、皮は少しも残してはいけないレベルなんだと思い、丁寧に時間をかけすぎて力尽きてしまう人もいれば、逆に、これくらいで良いだろうとてきとうにやり過ぎて、食べた時にあれ……?となる人など、色々な人が出てくる可能性も考えられる。
 しかし、その点このレシピ本では、工程1つ1つに“私たちが”かかるであろう分数・秒数が記載されているため、私たちはだいたいその時間を目安にしてやれば良い。そしてこの分数・分秒の記載は、しっかり丁寧にやったうえで目安よりも早くできた時に、料理の上達を実感させてもくれるだろう。

 


 2つめは、どうしてこの工程をするのかという理由が書かれているところだ。

 料理の色々な工程において、料理番組でよくこの工程を挟んでいるからやっている/レシピ本に書かれているからやっている、などとなんとなくでやっていることはわりと多いのではないだろうか。私も実際にそうで、水田さんのレシピ本を読んで、これはこういう意味があったのか!、ととても勉強になった。
 また、なぜ?どうして?と細かいことが気になってしまう人にもぴったりな一冊となっている。

 
 1つ例示すると、先述した『牛肉のしょうゆ焼き丼(ごはんの炊き方)』のページでは、『米を入れたジャーの釜(もしくはボウル)に、水(分量外)を半分くらい入れる。入れたらすぐに捨てる。』という工程に対して、『では、なぜせっかく入れた水をすぐ捨てるのか。理由は、米に付着しているヌカを取るため。すぐに水を捨てないと、米に付着してたヌカの成分が水と一緒に米に吸収されてしまう。ヌカは独特のにおいがあるので、落とした方がいい。』という吹き出しがつけられている。

 
 親がやっているのを見よう見まねでやり始め、家庭科の授業でもここまで詳しく教えてもらった記憶はなく、“そういうもの”という認識で今までやり続けてきたが、これを読んで(ああ~!そういうことか!)と深く頷きながら少しレベルアップした気分になれた。
 理由を知っているうえで取り組むと、知識や力がより身につくとともに、さらに料理を楽しむこともできるのではないだろうか。




 自分の話を挟んだせいで長くなってしまったが、今回『水田の小言を熟読するほど一生ものの自炊力が身につくいちいちうるさい定番レシピ』が第12回料理レシピ本大賞の一次選考を通過されたという。水田さんの、そしてこのレシピ本のファンとして大変嬉しい。

 ただ正直に言うと、しっかりと読みつつも燃え尽きた状態は継続中で、レシピ本の中の料理をまだ一回も作れていなかった。
 この大賞とコラボしたnoteの企画があると知り、拙い文章しか書けないけれど……と勢いで書き始めたは良いが、このままでは読書感想文で終わってしまう。いや、重い腰を上げるのには今しかない。この機会に……!
 そう思って、レシピ本を再び開いた。
 何を作ろうかと見ていくなかで、既に材料が家に揃っていた料理一品と、長いことやっていない揚げ物料理から一品を選択。そして、水田さんの味をできる限り完璧に再現したい/本来の味を味わいたい、その一心で久しぶりにレシピ本を読む→買い物リストに必要なものを追加する、という流れをとった。



一品目
卵とトマトの炒め物』(かかる時間:3分45秒)

材料(2人分)
・卵……2個
・トマト……1個(小さいと思ったら1個半か2個)
・塩……2~3つまみ
・米油(サラダ油でも可)……大さじ2

 必要なものが既に家にあったのと、1ページ完結で工程を頭に叩き込みやすいと思い、選んでみた。
 この料理はこれまでに何度か作ったことがあるのだが、たいてい食べていると終盤の頃には水分が出てきて、べちゃっとなってしまっていた。そのため、作ろうかなと思ってもべちゃっとしている記憶が蘇り、だんだんと手を出さなくなっていった料理だ。
 水田さんのレシピに従って作るとどうなるのだろうか……と作ってみた結果がこちら。


食べた後に撮った写真を確認してお皿の汚れに気づく。ああ……




 写真を撮っていたため、出来上がって数分ほど経ってから食べ始めたのだが、最後まで水分は出てこず、全然べちゃっとしなかった。
 これまでは、油の中に水分があるトマトを入れると跳ねると思って弱火で、なおかつ少し長めの時間炒めていたためそれが原因だとは思うのだが、こんなにも違うのかと感動した。


 トマトの水分は外に出ることなく留まっていて、噛むとじゅわっとその水分と程よい酸味が口の中にすぐさま広がる。卵には少し火を通しすぎてしまったが、味付けがシンプルゆえに卵とトマトそれぞれのうま味を感じられる。これまでは創味シャンタンを入れて作っていたのだが、塩だけでもとてもおいしくてびっくりした。
 また、塩はずっと瓶に入っている物を振って使っていたため、これくらいしっかりめに入れるんだなあと勉強になった。そして塩を加える際には、“頭の中の水田さん”と表現するべきか、「ひとつまみは指三本」という声が聞こえてきて、これがあの塩ひとつまみ……!とちょっとした感動もあった。


 早くてうまい。べちゃっとしている記憶も塗り替えられ、これなら私でも作れるし、むしろ積極的に作りたくなる。
 この時期はよくトマトをもらうのだが、丸かじりしたり、マリネっぽいものを作るだけだったので、今年の夏は特にリピートしたい。


 ただ、今回は自分の中に少し悔しさも残った。かかった時間は5分45秒で、目安よりも2分多い……。考えられる原因としては以下の3つだ。
・トマトがかなり小さくて個数を増やしたため、ヘタを取って切る工程で時間がかかった。
・塩ひとつまみに感動し、塩をつまんでいる三本の指をしばし眺めてしまった。
・材料や器具、お皿などあらかじめ準備しておいたが、配置の工夫が足りなかった。

 これらも踏まえながらリピートしていき、手軽に作れる料理としてまずはこの一品を極めていきたいと思う。




二品目
れんこんの唐揚げ』(かかる時間:8分)

材料(2人分)
・れんこん……200g
・塩……ひとつまみ
・青のり……2つまみ
・米粉(片栗粉もしくは小麦粉でも可)……大さじ1強
・米油(サラダ油も可)……鍋の深さ2cmになる量

 
 必要な材料が少なめで、そういえばれんこんを使った料理をしたことがないなあと思い、選んだ。
 れんこんと青のりを買い物リストに追加してスーパーへ。野菜コーナーに行ってみると、れんこんが1つだけ、かつ割引された状態で残っていて、とても運が良かった。

 買い物に行った翌日のお昼に取りかかり、できたものがこちら。




 れんこんチップスよりも厚めであるため、あのシャキシャキ感も楽しめてとてもおいしい。1つ食べた瞬間に、「うまっ」と声が出て、これは200gでは物足りなくなるやつだ……!となった。
 れんこんの天ぷらなど、油で揚げた状態のれんこんが好きという父からも「うまい!」の言葉をもらうことができ、嬉しさが募る。

 また、料理教室の揚げ物回でたびたび出てくる、「揚げたものを鍋から取り出す時、一カ所だけを油につけたまま数秒ほど待ち、それから取り出すと油がよく切れてぽたぽた落ちにくくなる」という水田さんからの教えを実際にやってみることができたのも嬉しかった。
 比較もしてみようと、わざと何もせずに油の中から取り出してもみたが、笑ってしまうくらい全然違う。料理教室で見たことのある光景だったが、やはり実際に自分でやってみると新鮮な驚きと感動があった。


 ちなみに、かかった時間は16分9秒で、目安よりも倍ではあったが、久しぶりに油を扱うということでかなり慎重に作業していたため、結構頑張った方だと思う。
 おいしくて、父にもうまいの言葉をもらえて、油の中から取り出す時のあの作業も実践できて。全てにおいて大満足で、久しぶりにしっかりと料理をしたが、とても楽しかった。
 これからも自分のできそうなものから作って、また少しずつ料理に力を入れていきたい。



最後に

 私が今回作った二品は、工程も少なく短時間でできたが、今後料理によっては手間だなあと思う工程も出てくるかもしれない。
 しかし、掲載されている料理を実際に作ってみたことによって、“このレシピ本通りに作れば、手間を上回るおいしさと感動が必ず待っている”ということを身をもって知ることができたため、今後私は時間がかかる料理を作るとなった時でもきっと手間を惜しまなくなるだろう。(決意の意味も込めて……)
 このレシピ本を読んで一回でも作ってみてもらうと、私の言っている意味がわかってもらえるのではないかと思う。

 

 おいしんじ!となること間違いなしのレシピが多数収載されている、『水田の小言を熟読するほど一生ものの自炊力が身につくいちいちうるさい定番レシピ』。
 様々な人におすすめできるレシピ本となっているが、特に私は、料理初心者の人や料理に対して苦手意識を持っている人、普段から料理はするけれどレシピ本はまだ買ったことがない人など、“初めての一冊”としてぜひおすすめしたい。



【参考・引用】
・水田信二/水田の小言を熟読するほど一生ものの自炊力が身につくいちいちうるさい定番レシピ/ヨシモトブックス/2025年/25P、26P、86P、122P


拙い文章を最後まで読んでくださりありがとうございました。

私の文章、ながあ……。


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