見出し画像

オランダで天皇皇后両陛下をお迎えした日|まさかの展開

先日、国中に大歓迎されながら、
天皇皇后両陛下が来蘭された。

アムステルダムのダム広場で歓迎式典があると聞きつけ、

こんな機会は二度とないのでは!?

と、バスやメトロを乗り継いで、開始一時間前に鼻息荒く現地に到着した。

ダム広場は全体にバリケードが張られ、
物々しい雰囲気の警察官が周囲を点々と囲っている。

かなりの数のパトカーや白バイも集結。
(これには息子たち大歓喜)

明らかに、いつものそれとは様相が違う。

だからはじめは「ここどこなん状態」で、
まるで違う場所に来たかと思った。

庶民なりに、

「きっと遠くからしか拝見できないだろうな。だって庶民だし」

と控えめに構えていたものの、

「あっ、もうここから入れないのねー!」

と、国の象徴との距離感に圧倒される。

宮殿に近い場所になんとか隙間を見つけ、
フェンス越しにその時を待っていた。

日本人もたくさん集まっていたが、現地のオランダ人や観光客らしき人々も多くいた。

待ちくたびれた長男が、

「てんのうへいか、まだー?まだこないのー?!」

とめちゃ大声で話すので、閉口した。

そして、音楽隊の演奏や、兵隊さん(儀仗兵というらしい)の行進で厳かに式典がはじまった。

両陛下のお目見えはまだかまだかとスマホを握りしめていたが、
ついにそのときが!


…と、なぜか両陛下がお目見えした瞬間、
どこからともなく現れた女性警官が口を開いた。

「ここにはいられません、ムーブ!」

「とにかくここはダメ。」

「ムーブ!」


え?

いやいや…

先に言ってくれよ。でしかない。

今、めちゃいいところ!



「じゃあどこなら立ってていいの?」
と、ちょっとだけ抗うが、

「それは知らないけど、
とにかくここではないどこかへ。」

と、要領を得ない回答。

というかオランダ人も日本人も、
みんな頑なに動かなさすぎる。


動こうとしているのが私たちだけなので、
身動きが取れず、ちっともムーブできないのである。

言うこと聞かない人多すぎん?
私が真面目すぎるだけ?

そう思っていたら、

その警官が諦めたように言った。

「ここにいたいなら、コーヒーを頼んでテラスに座ったら?」

観衆が張り付くバリケードの真後ろは、カフェのテラス席だった。

具体的なOKパターンだ!

どうしてもこの場に留まりたい私に、希望の光が差した。

息子たちも疲れているし、
警官に怒られ続けたくないので、
おとなしくカフェに入ることにした。

コーヒーと子供のジュースを注文してテラス席に腰を下ろすと、

「おぉ」

さっきまで立っていた観衆が見事にムーブ完了していた。
ずっと見やすい。

人混みに押されることもなく、
大柄な警官にシャウトされることもなく、
息子たちはジュースを飲みながら、
私はゆっくりスマホを構える。

結果的に、警官さんのおかげで特等席だったのかな。

「ムーブ!」
なんて急かされたときは、
正直どうなることかと思ったけれど。
(色々と見逃したし)



その後、両陛下が供花される戦没者慰霊の時間になった。

朝、天気予報を見た夫は、

「ちょうどその時間、雨やん!」

と心配していた。

私は、

「でもね、晴れるかもよ。天皇陛下のいらっしゃるところは晴れるって聞いたことある」

と、どこかで聞き齧ったことを得意げに話した。

夫は、「いやいや、まさか」と笑っていた。

実際、式典が始まった頃、
どんよりとした雲が広がっていた。


ところが。

両陛下が慰霊碑に向かわれる、
本当にその瞬間だった。

まるで舞台の照明が当たるように雲が切れ、
やわらかな日差しが広場を包み込んだ。

「晴れてる…!」

思わず小さく呟いた。

ほかの日本人の「晴れてる…」も、どこからか聞こえた。


広場全体が静まり返る中で、
その光景だけが、今でも強く心に残っている。

偶然なのかもしれない。

でも、
その場にいた誰もが、
ほんの少しだけ空を見上げた気がした。


お後ろ姿しか撮れず。


式典そのものは厳かで、
警備は想像以上に厳重だった。

それでも、沿道にはたくさんの笑顔があって、
オランダの人たちが両陛下を歓迎している空気も伝わってきた。

異国の地で、
自分の国の天皇皇后両陛下をお迎えする人たちの姿を見る。

そんな経験ができるなんて、
オランダに住む前の私は想像もしなかった。

あの柔らかな光に包まれるダム広場、
きっとずっと忘れないと思う。


文化は違う。
歴史も違う。

それでも、敬意を払う気持ちはちゃんと伝わる。


オランダの好きなところを、
またひとつ見つけた日だった。


いいなと思ったら応援しよう!