『エウロペアナ』

パトリク・オウジェドニーク『エウロペアナ』。
二十世紀の歴史を、戦争も革命も流行も発明も区別することなく、ブラックユーモアと痛烈な皮肉でコラージュのように描いた異色の歴史文学。
二十世紀という時代を、戦争も革命も発明も流行も、まるで酔っ払いのように脈絡なく並べ立てていく。
不条理で、滑稽で、人類はなんとくだらないことを、これほど真面目に繰り返してきたのだろうと、私は半ば呆れながらその話に付き合うような気持ちでページをめくっていた。大量虐殺も、宗教も、人種も、革命も、作者は世界中の二律背反を同じ熱量で皮肉たっぷりに語り続け、私は眉を集めながらもいつしかその視点を共有し、作者と同じ温度で人類を軽蔑し、笑った。
ところが、終盤のほんの数行、自国の歴史に触れた瞬間、それまで読んできた歴史の重さは一変する。
同じように並べられていたはずなのに、その数行だけが私の中へ深く入り込み、それまで付き合ってきたすべてが茶番だったのかと、眩暈がした。
歴史そのものの価値が変わったわけではない。変わったのは、私の受け取り方。ホロコーストも、ジェノサイドも、宗教による虐殺も、同じ熱量で読み進めてきたはずなのに、「自分事」に触れた瞬間、疑ったこともなかった自分の認識そのものが、不確かなものになった。
歴史は事実として記録される。しかし、その重さは事実だけでは決まらない。記憶や文化、そして自分との距離によって、その意味は無意識のうちに変化していく。
作者は、人類の愚かさを笑う。
笑われていたのは、私だったね。
