AIの進化を「整いました」で測る
過去にも何度か書きましたが、AIに面白い話をさせても、あまり面白くありません。
なぞなぞやダジャレを頼むと、たしかに答えは返ってきます。ただ、笑えないというより、そもそも意味が分からないことがあります。言葉はつながっているようで、どこが面白いのかをこちらが考えなければなりません。
解説を読んでも分からないときがあります。
笑わせてもらうはずが、気づけば僕がAIのギャグを解読しています。
しかも、こちらが「よく分からない」と言うと、AIは急に先生のような顔をして、自分のギャグの構造を説明し始めます。言葉の掛かり方を長々と解説されても、笑いは戻ってきません。お笑いを頼んだはずなのに、最後は国語の授業になります。
面白さを説明されればされるほど、最初から面白くなかったことだけが、はっきりしてしまいます。その間もAIだけは、最後まで妙に自信満々なままです。
アラフィフの僕も、ご多分に漏れず、親父ギャグがふっと頭に浮かびます。何かを見たり、人の言葉を聞いたりした瞬間、頼んでもいないのに頭の中で言葉がつながります。
でも、ほとんど口には出しません。
自分ではまだ若いつもりなので、親父ギャグが浮かんだこと自体をなかったことにします。誰にも気づかれないうちに、頭の中のゴミ箱へ移します。
ところが、AIが堂々と出してくるダジャレを見ると、ときどき思います。今、僕が飲み込んだやつのほうが、まだ意味は通じていたな、と。
そんな僕が去年見つけたのが、ねづっちさんと生成AIがなぞかけで対決する動画でした。
「生成AI vs 人類代表ねづっち」
AIが文章を書き、絵を描き、音楽や動画まで作るようになった今、なぞかけもできて当然のような気がします。
お題を二つの意味につなげて、最後に「その心は」と落とす。文章として見るだけなら、AIが得意そうな仕事です。
けれど、実際のなぞかけは、言葉がつながれば完成というものでもありません。聞いた瞬間に意味が分かり、少し意外で、「うまい」と思えて、できれば笑える。その全部が短い言葉の中に入っています。
説明されてから納得するのでは遅いのです。
ねづっちさんの「整いました」は、答えそのものだけではなく、お題を受け取ってから出すまでの速さも含めて芸になっています。考え込む時間さえ、ほとんど見せません。
去年の動画を見て、AIの進化を比べるのに、こんなに分かりやすくて面白い競技はないと思いました。
そして一年後、同じ企画がもう一度行われました。
「[人類 vs AI]即興なぞかけ対決!結果は!?」
この一年でAIはかなり変わりました。以前は苦手だった指示にも応え、長い文章の流れをつかみ、画像の中に日本語を入れることまで少しずつ上手になっています。
去年できなかったことが、次に試す頃には普通にできるようになっていることもあります。
それなら、笑いも一年で変わったのか。僕はそこが気になりました。
これは、人間に勝ってほしいとか、AIに勝ってほしいという話ではありません。ねづっちさんが圧倒しても面白いし、AIが思いがけない一言を出しても面白い。去年は意味不明だった答えが、今年は少し「うまい」に近づいているだけでも面白いのです。
僕が楽しみにしているのは、勝敗より、その距離です。去年との差が縮まっているのか、それとも変わらず開いたままなのか、そこを確かめたいのです。
AIは毎日のように更新されます。新しいモデルが出るたび、性能を示す数字や難しいテスト結果が並びます。追いかけるだけで一日が終わりそうな量です。でも、それを見ても、僕にはどれほど賢くなったのか、いまひとつ実感できないことがあります。
数字では分からなくても、笑えるかどうかなら、僕にもその場ですぐ判断できます。難しい説明だって必要ありません。
その点、なぞかけなら分かります。
聞いて笑えたか。意味が通じたか。ねづっちさんの答えを聞いたあとでも、AIの答えに「うまい」と思えたか。難しい数字は必要ありません。統計ではなく笑いの温度で確かめられるのは、案外貴重な物差しだと思います。
そして、もう一つ楽しみなのは、AIだけではなく、こちらの受け取り方も変わることです。去年なら意味不明だと思った答えを、今年は面白いと思うかもしれません。
逆に、AIがどれだけ賢くなっても、意味は合っているのに少しも笑えないままかもしれません。笑いは、正解したかどうかだけでは決まりません。
来年もこの対決があったら、僕はきっと見ます。できれば毎年続けてほしいとさえ思います。その頃のAIは、ねづっちさんの「整いました」に、どこまで近づいているでしょうか。
AIの進化を測る物差しはいろいろありますが、僕にとって一番分かりやすいのは、今のところ「整いました」です。
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