AI活用を個人で終わらせない。セブンリッチのAI文化を牽引する3人のアクセラレーター
SEVENRICH GROUP(以下、セブンリッチ)は、組織全体でAI活用を進める施策のひとつとして「AI Acceleration Program(AIアクセラレーション プログラム)」を始めました。
本プログラムを通じて、個人によるAI活用とAIアウトプットの社内共有が進んでおり、開始後1ヶ月で100個以上のアウトプットが集積しました。
このプログラムでは、特に多様なアウトプットをしたメンバーが、AI Accelerator(AIアクセラレーター)に認定されます。今回は、AI AcceleratorとしてセブンリッチのAI文化を醸成するメンバーに、セブンリッチ全体に共有したアウトプットや、本プログラムの意義について聞きました。
セブンリッチ全メンバーのAI活用を加速させる、AI Acceleration Program
これまでセブンリッチでは、個人のAI活用や事業部単位でのAI導入が進んでいましたが、より組織全体でAI活用を進めるため、AI Acceleration Programがスタートしました。
本プログラムの参加者には、3ヶ月間でひとり12個のAIアウトプットを作成・共有してもらいます。それをセブンリッチの資産として蓄積、増加、そして活用し続ける状態を目指します。
1ヶ月という短期間で12個のAIアウトプットを共有したメンバーは、“AI Accelerator”として認定。活動資金が支給され、さらにAIの探究を進めることができます。またAI Acceleratorは、社内のAI研修への登壇やメンバーの相談役として活動し、セブンリッチ全体のAI活用を促進してもらいます。
本プログラムがスタートして以来、「これまでAIを触ってなかった人も扱うようになった」「AIについて相談する・される機会が増えた」などの声が上がり、その効果が見えてきています。
第1期アクセラレーター
第1期には、3人のアクセラレーターが選出されました。

株式会社SEVENRICH Accounting 外林 洋輝
税務・会計業界で10年以上のキャリアを持ち、現在は株式会社SEVENRICH Accounting(SRA)の税理チームに所属。実務に精通する一方で、2年ほど前から自らAI活用に取り組み、現在はセブンリッチグループ全体のAI文化醸成を牽引している。税法DBを用いたNotebookLMの活用、税務QA Botの構築、OCRによるレシート読み込みから仕訳までを自動化するツールの開発、マネーフォワードのMCPサーバーを活用した月次決算の自動化など業務フローの抜本的な改善を主導。これまで1営業日を要していた作業のリードタイムを大幅に短縮するなど、専門知識と最新技術を掛け合わせた圧倒的な業務効率化を実現している。

株式会社BPIO 堀江 孝輔
大学卒業後、ブライダル業界での接客や外資系生命保険会社での営業に従事し、顧客の人生に深く関わる経験を積む。その後、個人の価値を最大化する支援を目的とした株式会社Hoshiiroを設立。2025年12月、SEVENRICH GROUPへ参画し、現在は株式会社BPIOの社長室にて、研修事業をはじめ、「なんでも屋」として多岐にわたるプロジェクトを牽引。研修事業の立ち上げから総務BPOサービスの設計、新卒・インターン向け育成プログラムの構築まで、定型業務にとらわれない柔軟な実行力を発揮し、組織の新たな価値創造を多角的に支援している。

株式会社DELTA 馬場 翔梧
2015年よりエンジニアとしてのキャリアをスタートし、Javaを用いた大規模パッケージソフトの運用保守や新規開発に従事。その後、インフラエンジニアとしてAWSの運用・設計構築部門のマネージャーを務める。2023年、株式会社DELTAに入社。現在はこれまでの経験を活かし、企業のインフラコスト削減における提案から実施までを一貫して手掛けている。AWS認定ソリューションアーキテクト(SAP)の専門知識と、簿記の知見を掛け合わせたコスト最適化支援を強みとし、成功報酬型のビジネスモデルを通じて顧客の課題解決に制限なく取り組んでいる。
3時間の作業が15分に、書類選考の工数削減など、業務効率化を実現
ここからは、AI Acceleratorとなった3名による鼎談をお届けします。
——皆さんは、AIを活用して1ヶ月で12個ものアウトプットを生み出しました。どんなものを制作したのか、教えてください。
馬場 翔梧(以下、馬場):
一番気に入っていて、すでに普段の業務で使用しているのは、書類選考のためのフォーマットです。
僕が所属する株式会社DELTAでは、CTOやエンジニアリング組織のパートナーとして、技術負債の解消や生産性向上、開発支援などをしており、それを担えるような経験者の中途採用を積極的に行っています。
従来のDELTAでは、中途採用の書類選考業務が属人化していて、求職者の提出書類を細かく読み込むのに工数がかかっていました。しかし、NotebookLMを活用することで、現在は書類選考の工数が大幅に削減されています。
——どんな仕組みなのでしょう?
馬場:
NotebookLMにDELTAのカルチャーや求人票をあらかじめアップロードしておきます。それから、求職者の提出書類をリソースとして、NotebookLMが書類選考担当者の代わりに情報を整理し、テンプレート通りに情報を出力してくれます。
そのフォーマットのおかげで、非エンジニアの人事メンバーは技術的観点を意識した書類選考の分析が可能になりました。その後の選考を担当するエンジニアも、この分析結果をベースに、最終的な合否判断を実施しています。AIを活用することで担当者ごとの主観や状況によるブレも抑えられるようになりました。両者の間を、AIが「翻訳者」として繋いでくれている実感がありますね。AIの活用をあくまで「分析まで」にとどめ、最終判断は人間が行うことで、より公平な選考ができるようになったと思います。

堀江 孝輔(以下、堀江):
NotebookLMを馬場さんのように使ったことがなかったので新鮮です。面白い活用方法ですね。すでに学習した一般論よりも、馬場さんが入れたデータリソースを優先的に読み込んでくれるのですか?
馬場:
そうですね。たとえばプロンプトを書くとき、「あなたはプロのリクルーターです」とAIに指示して、書類選考業務の一部をAIに代替させるケースがよくあると思います。ですがそれだと、クリティカルなアウトプットが返ってくることはほとんどありません。
自社の求人票とカルチャーをソースとして与えたとえば、「◯◯という技術を触っていなければ、自社とはマッチしないから確認するように」と細かいプロンプトをたくさん読み込ませているので、いい感じにアウトプットしてくれるようになりました。
外林 洋輝(以下、外林):
NotebookLMと人間のアウトプットで差分はありますか?
馬場:
差分がなくなるようにプロンプトをチューニングしたので、今はほとんどありません。ただ、NotebookLMが「DELTAにマッチしない可能性がある」と判断したとしても、ほかの実績がないかを確認するために次の選考に進んでもらうことはあります。
——ちなみに、個人情報をAIに読み込ませるのは問題ないのでしょうか?
馬場:
NotebookLMでは個人データが学習に使われない(*1)ため、その点は問題ないと思います。もちろん名前や住所など、個人を特定できる情報はマスキングしています。人事の仕事をAIに渡していける一方で、今後は応募する側も書類をAIに書かせる、そんな時代になると思います。
——外林さんもお気に入りのアウトプットを教えてください。
外林:
人間ではなくボットだけが会話しているSlackチャンネルを作っていて、それがお気に入りですね。即レスするボットや返信が少し遅いボットなど、いろいろな性格のボットがいます。とくに個性を付与しているわけではなく、同じモデルを使っているのに不思議ですよね。じつはこれ、メッセージに対してスタンプを押しているのもボットなんですよ。

堀江:
僕が作ったボットも外林さんが作ったチャンネルに参加しているので、業務中にふと見てしまいます。外林さんのボットは一番頭がいいですよね。
僕のボットは、自分が担当しているプロジェクトからネタを引っ張ってきてチャンネルに投稿しているのですが、何かと煽ってくる嫌なやつです(笑)。


外林:
堀江さんが提出していたアウトプットを見ましたが、「3時間かかっていた給与計算の作業が15分になった」というワークフローをつくりだしたのはすごいですね。
堀江:
かなり業務改善ができましたね。僕が所属している株式会社BPIOでは、労務BPO(*2)サービスを提供しているのですが、その勤怠管理にかかる時間を短縮するアプリを作りました。社労士から送られたデータの中には、打刻漏れや打刻の重複などエラーが出ている従業員がいます。そのエラーが出ている人をリストアップし、データと突合する一連のフローに、約3時間ほどかかっていました。
そこで、そのフローを改善すべく、勤怠管理システムからCSVファイルをローカル環境にダウンロードし、AIが突合、テンプレートを出力させる仕組みを構築。新しいワークフローが整ってからは、AIが出力したものをコピペして、先方に返送するだけなので業務時間が大幅に短縮されました。
——先ほどの馬場さん同様、堀江さんも個人情報を扱っていますが、セキュリティに関しては問題ないのでしょうか?
堀江:
インターネットには直接つながらないローカル環境にプログラムを構築しており、漏洩のリスクヘッジをきちんと行っています。
外林:
今後の拡張性についてはどう考えていますか。
堀江:
あまり作り込みすぎず、限定的なワークフローのままにしておこうと思います。アウトソーシングをする立場上、どうしてもクライアントの判断で業務内容が変更されることがあるので、EDA(*3)として小さく活用しています。
(*1)参考:NotebookLMの詳細(NotebookLM でデータを保護する仕組み)
(*2)労務BPO:堀江さんが所属するBPIOでは、給与計算や勤怠管理などクライアント企業の労務業務を代行し、業務改善フローの提案などを行っています。
(*3)EDA(Event-Driven Architecture):「CSVの読み込み」のようなイベントをトリガーにして、特定のプログラムが駆動する仕組み。
AI Acceleration Programを機に、セブンリッチの各所で起きている変化
——1ヶ月で12個のアウトプットに挑戦した感想を教えてください。いかがでしたか?
堀江:
僕は12個出せば賞金がもらえるのか……!と思って意気込んで始めましたが、やってみたらなかなか大変でしたね(笑)。

外林:
僕も大変でしたね。グループのみんなに共有して活用してもらうという前提条件がありましたが、僕が作っていたものは税務会計領域に関するものに偏っていました。「グループに向けたものとして」、という前提条件を満たしているかどうか、これを出しても使ってくれるだろうか、また、レベル感の調整やニーズ面での心配もありましたね。
馬場:
わかります。「自分や同業のチームだけ」で使うものなら考えるのは簡単ですが、異なる事業部やセブンリッチグループ全体でも使えるものとなると、ハードルは上がるんですよね。1ヶ月で12個というと、週3個作るペースですし。結果的に、書類選考のAI化という成果が生まれたのはよかったと思いつつ、本業の傍らで個人開発を続けるのは大変でした(笑)。
僕は最初に、AIが飲み会の幹事の代わりにお店を検索するシステムを共有したのですが、皆さんの反応が良かったので達成できたというのもあります。こういうカジュアルなものでいいんだと、気楽に開発を続けられましたね。
——皆さんが多様なアウトプットをされる中で、AI Acceleration Programによって周囲に変化はありましたか。
堀江:
BPIOでは以前からGAS(*4)を活用していましたが、このプログラムをきっかけに、個人でもAIの活用が広がっていると感じます。
また、BPIOの代表である一杉が「まずはセブンリッチで一番AIを使う組織になろう」と旗を上げ、Claude Codeというコーディングアシスタントを導入した影響も大きいと思います。今までClaude Codeを触ったことがない人が自分でアプリを作っているくらい、周りの人が変わってきている実感があります。
馬場:
DELTAはセブンリッチにおけるテック部門なので、もともとAIには予算を使っていて、全員が業務においてAIを活用していました。ただAI Acceleration Programが始まったことで、代表の丹から「うちからAcceleratorを出さないのはやばい!みんな頑張ってくれ!」とプレッシャーをかけられており、全員がより意識して業務に活用しています。業務とは関係ない個人開発をするようになっています。
外林:
SRAでは、最初に僕がマネージャーに「Claude Codeを業務で使いましょう」と声をかけました。徐々にチームの意識が高まりはじめ、今ではClaude Codeを使い始めるメンバーもちらほらいます。Acceleration Programにアウトプットを提出している人が増えてきているので、今後は会計チームも組織規模でAI活用が進んでいきそうです。
(*4)GAS(Google Apps Script):Gmailやスプレッドシートなど、Googleプロダクト全体でタスクの統合と自動化ができるプログラミング環境。
AIを活用する人をひとりでも多くしたい
——AI Acceleratorになり周囲の変化を実感する中で、ご自身の考え方にも変化はあったのでしょうか?
馬場:
技術的なキャッチアップをこれからも続けていかなければならないと思っています。僕たちITエンジニアはとくに、AIと一緒に働くAIネイティブであることが求められるようになる職種です。AIの導入を前提にした業務フローを構築し、AIの活用を突き詰めることが自分のキャリアアップにもつながると感じていますね。
——昔と同じではいけない、という焦りもありますか?
馬場:
そうですね。AIが仕事を奪ってくれるという楽観的な考え方もあるかもしれませんが、僕はAIが発達するに伴い、人間の仕事の密度も上がると考えています。
たとえば、これまで複数人で取り掛かっていた業務を、AIを扱える一人ひとりが短時間で終わらせる時代が来ると思うんです。その浮いた時間でAIには任せられない高度な判断をしたり、別のプロジェクトに参加したりするようになる。つまり、一人ひとりが同じ時間で生み出せる成果が、これまでとは比べ物にならないほど凝縮されるということです。
そのひとりになれるかどうか、AIが人間をふるいにかけるようなイメージさえあります。だからこそ、キャッチアップを続けてAIの進歩についていかなければならないんですよね。
外林:
馬場さんの言うことには同意です。会計事務所であるSRAには現在、会計士や税理士のほかに、何名もの会計・税務スタッフが在籍しています。しかしいずれは、クライアントに対して責任を負う人とAIだけで済むかもしれません。人と違ってAIはすぐに環境に順応し育つので、人とAIの仕事量が逆転する日は近いかもしれないと感じています。
——最後に、セブンリッチの今後について、皆さんが考えていることを教えてください。
馬場:
AIをどんどん触ってほしいと思います。一度自分の仕事を洗い出してみて、時間がかかる仕事や苦手な仕事をAIに任せてみる。AIと仕事をしていると、こんな機能もあるのか、次はこうやってみようか、と、やりたいことが増えてくると思います。気負いすぎずに触ってほしいです。
外林:
僕は、AIを活用する人がひとりでも多くなれば嬉しいです。
堀江:
外林さんは、勉強会を開くなど、自分だけでなく周囲にもAI活用を推進していますよね。
外林:
それは結果的に自分が楽になるからだと思います(笑)。最近は教えた人が僕よりも使いこなしているので、すごいなと思って見ています。
堀江:僕は、そもそも組織全体でAIが活用されている状態、いわゆるゴールがまだ想像できていません。これまでは会計ソフトやSaaSを導入することによって、業務の一部を自動化してきました。その代わりにAIを導入するのが、果たしてAIを活用したことになるのか。その答えは出ていません。とても可能性のある存在だと思うので、「AIを活用するとはどういうことなのか」をこれからも問い続けたいと思います。
