税理士がAI開発。丸一日かかっていた業務を20分に短縮した「実務で使える」AIツール

セブンリッチグループに2025年10月に入社した外林洋輝(とばやし ひろき)さん。税理士として業界歴10年超のキャリアを持つ彼は、入社してたったの2ヶ月でAIツールを複数開発し、業務改善を推進しています。
外林さんがAIに可能性を感じたのは6年前。当時担当していたクライアント企業でAIの未来を肌で感じたことがきっかけでした。以来、税理士業務と並行して最新技術をキャッチアップし続けています。
今回は外林さんに、入社後に開発したツールやチームでのAI活用の現在地、AI開発を経て見えてきたことなど、詳しくお話を伺いました。
「これからはAIの時代」6年前の予感がセブンリッチで現実に
──外林さんは2025年10月にセブンリッチへ入社されました。現在は税理士のシニアマネージャーとして働きながら、ご自身でAIツールを開発されているそうですね。
外林:
はい。入社してから2ヶ月で複数のAIツールを作りました。どれも現場の課題から生まれたもので、実際に運用して成果も出ています。
私がもともとAIに興味を持ったのは6年前。当時いたベンチャー企業で担当したクライアントが、AI関連の先進的な企業でした。その技術を目の当たりにし、「これからはAIの時代が来る」と肌で感じたことがきっかけです。それ以来、税理士としての実務をこなしながら情報を追い、2年ほど前から自分でも開発をするようになりました。
1ヶ月で400件の質問に答える「Tax QA bot」
──セブンリッチに入社後、最初に開発されたのはどのようなツールだったのでしょうか?
外林:
最初に手がけたのは、リサーチ業務を効率化する「Tax QA bot」です。会計事務所の仕事は、税法の調査や背景確認が日常的に発生します。現場では、「わからないことがパッと調べられて、その答えがすぐに出たらいいのに」という声が常々上がっていました。誰に頼まれたわけではないですが、それならば自分がその理想に近づけるために開発をしてみようと。そうして出来上がったのがTax QA botです。

Tax QA botは、Slackでボットをメンションして質問をすると、瞬時に回答が返ってくる仕組みです。Slack上のやり取りはすべてスプレッドシートにログとして残るので、後から検索もできます。
じつは、もともと税務・会計事務所チームには「事業部のQAを一元管理できていない」という課題もありました。ボットであれば、課題と現場の理想を同時に解決できると閃いたのも、開発するモチベーションになっていました。
──ひとつの開発で課題と理想を解決できるのは素晴らしいですね。AI全体にいえることですが、情報の正確性の担保、いわゆるハルシネーション(もっともらしい嘘)に対しては、どう対策されましたか?
外林:
ハルシネーション対策としては、「NotebookLM」を使い、ファクトチェックをする業務フローを組み込みました。国税庁のホームページやe-Govから取得した条文をマークダウン形式でデータベース化して、NotebookLMに読み込ませています。ボットの回答をNotebookLMに入れることで、その根拠資料と照らし合わせてチェックできるので、かなり高い精度で正確性を担保できています。
──ここまでのお話を伺っていると、Tax QA botは日々の業務にかなり役立っていそうだと感じます。実際に導入してから、現場やチームメンバーの反応はいかがでしたか?
外林:
チームメンバーからは、「便利で使いやすい」と言ってもらえました。開発したボットがうまく動いたこともそうですが、それよりもチームの役に立てたこと、みんなに喜んでもらえたことが嬉しかったです。
最初は恐る恐る触っていたメンバーも、今では頻繁に使ってくれています。その証拠に、リリースから1ヶ月で約400件もの質問が寄せられました。月平均で考えると、毎日10件以上質問が飛び交っている計算になります。
……じつはこれは裏話ですが、新しいツールへの抵抗感を減らすために、あえて「すごく性格のいいボット」という設定にしたんですよ(笑)。ボットが活発に動いているのを見ると、細かいところまでこだわってよかったなあと思います。蓄積されたログも資産のひとつなので、今後はマニュアル作成や教育にも活用していく予定です。
1営業日の作業が30分に短縮。OCRツールで実現した効率化
──2つ目のツールについても教えてください!
外林:
2つ目は、アナログな資料を自動で仕訳入力する「AI OCRツール」です。今も会計ソフトとデータ連携をして自動化していますが、どうしても紙の通帳やレシートなど、アナログなデータが残ってしまうクライアントもいます。そうしたアナログデータでも、画像をアップロードすると、AIが文字を読み取って勘定科目や金額を自動入力してくれる仕組みを作りました。
──既存の会計ソフトにもOCR機能はあると思いますが、それとは何が違うのでしょうか?
外林:
既存のソフトには機能やコストやリードタイムの面で課題がありました。具体例を挙げると、OCRでテキストは読み込める機能は備わっているものの、仕訳生成機能がありません。対応しているソフトがあったとしても、仕訳生成を会計システムに依存していたりすることがほとんどでした。自作したツールでは、OCRによるレシートの読み込みから仕訳の作成、画面上でのレビュー・仕訳の修正までを簡単に行うことができます。
リードタイムの面については、1営業日かかっていたものが30分に短縮できました。これまでは、スキャンから仕訳の納品まで1営業日かかり、それをただ待つだけの時間が生じていたのですが、自作したAI OCRツールであればスキャンから仕訳のインポートまでわずか30分で終わります。
現在、AI OCRツールは20社ほどで運用中です。2026年中には月15〜20社ペースで拡大して、すべてのアナログデータをこのシステムに置き換える計画です。

ついでに、といってはなんですが、社内規定などを検索する専用ボットも作りました。GoogleのFile Searchを使い、RAGベースでポータルサイトから必要な情報をすぐに引き出せるようにしています。
作業を減らして、価値ある時間を増やす
──最後に、外林さんの今後の展望をお聞かせください。
外林:
会計・税務の「作業」自体は、AIによってこれからもっと減っていくはずです。僕が目指しているのは、そうして圧縮して空いた時間を、クライアント企業の分析や、対面でのコミュニケーションといった「高付加価値業務」に回すこと。それが実現できたら、すごくアツいですよね。
ChatGPTやGemini、Claude、Manus、n8nなど様々なサービスを使って開発を行っていますが、「思いついたら1週間以内にプロトタイプを作る」ことを目標にしています。これからもスピード感を持って開発を続け、高付加価値業務ができる環境を整えていきたいです。
──社内やチームでのAI活用もさらに進んでいきそうですね。
外林:
そうですね。社内には業務改善リーダーの方やRPAが得意な方など心強い仲間もいます。
会計事務所のAI活用はまだこれからですが、だからこそ「まずはボットを使ってみる」という体験を増やしたい。「あ、いいな」と肌で感じてもらえれば、自然とAIの活用は広がっていくと思うので、その瞬間を生み出せるような開発をしていきたいです。
