SS#002_白いナズナの呼び鈴 / The Shepherd’s Purse Doorbell
インターフォンがなったので、壁に取り付けられたモニターをみたら、画面いっぱいの葉っぱとその奥にうっすらSさんが見えた。
ご近所に住むSさんは在宅で仕事をしていて、同じく在宅で仕事をしている私を気遣って、あれやこれやいろいろなものを持ってきてくれる。
「これ、シロイロナヅナ。駅前の花屋で配ってたの。踏まれると香りを出すんですって。入口に植えておけば、香りで来客を知らせてくれるインターフォンになるみたい。ここに植えておいてあげるわね。」
あれ以来、3人の来客があった。1人目は水道局員、2人目はガス会社、そして、3人目はSさんだ。いつもインターフォンとモニターで確認してしまったので、香りのインターフォンの動作のほどはよくわからないが、ドアを開けたときに香ってくるにおいが強くなっている気がする。
根を下ろした場所にじっとたたずみ、雨が降っても虫に食べられても日照りが続いても孤独に過ごしている、という印象が強い植物ですが、最近では、彼らは香りを使って、自分自身の状況や周囲の状況を伝えあっていることが分かってきています。コミュニケーションの相手は、自分自身のこともあるし、となりに生えている植物だったり、昆虫や菌であったりすることもあります。ミツバチなどの昆虫が、蜜の香りに引き寄せられて花に潜っていく姿を見たことがある人は多いかもしれません。同じように、葉っぱが虫に食べられてちぎられたとき、茎に穴が開いたときなど、植物は、ストレスを感じたときに香りを使って他の植物に警告を送っていることが知られてきています。根でさえも、絡み合う隣の根と香りを通じて、栄養素や水分などの情報を共有していることが分かってきています。
あとがき的なもの:
発想の原点は、虫に食べられたときや傷ついたとき植物が放つ香りを他の植物が感じ(立ち聞き、というらしい)、防衛反応を高めていると知ったこと。ここから、「植物が踏まれたときも香りが出るよなー」という発想につながりました。
