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クイーンズタウン旅行記(1日目):食と街と雨上がりの湖

ニュージーランドに住んで3年以上経つが、クイーンズタウンにはまだ行ったことがなかった。「NZに住んでいるなら当然行くでしょう」と友人に言われるたびに、「まあそのうち」と答え続けてきた。そのうち、がついに来た。

オークランドから飛行機で約2時間。クイーンズタウン空港に降り立った瞬間、空気が違うとわかった。澄んでいて、冷たくて、どこか凛としている。オークランドとは明らかに違う空気だ。この街は、期待を裏切らないと確信した。


まずはFergburgerへ

クイーンズタウンに来たらまずここに行くべきだ、と誰もが言うバーガーショップで、NZで最も美味しいバーガーとしてメディアにも度々登場している。朝7時から行列ができ、深夜まで営業。観光客と地元民が入り混じって、同じバーガーを食べている。

少し遅めのランチに訪れた。列は店の外まで伸びていたが、思ったよりは回転が速い。15分ほど待って、カウンターへ。

頼んだのは定番の「Ferg Deluxe」。パティは分厚く、レタス、トマト、チーズ、ピクルスがみっちり挟まっている。両手でしっかり持たないと崩れる。一口食べて、「あ、これは本物だ」と思った。

肉の質が違う。NZの牧草で育った牛の肉は、こういう食べ方が一番合っているのかもしれない。ケチャップやマスタードより、肉そのものの味が前に出てくる。バーガーひとつで、昼は十分だった。


ルーフテラスの夕暮れ

ホテルに戻って、しばらく部屋でゆっくりした。

ランチの満足感と移動の疲れが混ざって、ちょうどいい眠気があった。少し横になって、外の気配を聞いていると、雨音がいつの間にか止んでいた。起き上がって窓を見ると、雲はまだ厚いが、雨は上がっている。

近くのカフェでフラットホワイトをテイクアウトして、屋上のルーフテラスへ向かった。

そこに広がっていた景色が、この旅で最初の「息を呑む瞬間」だった。

街の灯りが、雨に濡れた路面に反射して滲んでいる。その先にワカティプ湖が静かに横たわり、湖の向こうには雲をまとった山々がそびえている。山頂には雪が積もっていて、雲の切れ間からその白さが覗いている。空はまだ暗雲が支配しているが、その重さが逆に山のスケールを際立たせていた。

夕暮れ時のクイーンズタウンは、絵のようだ——という言い方が陳腐に聞こえるくらい、本当に絵のような景色だった。

フラットホワイトを両手で包みながら、しばらく動けなかった。観光地を巡るわけでも、予定をこなすわけでもない。ただ、そこに立って、景色が暗くなっていくのを眺めていた。

こういう時間が、旅の中で一番好きかもしれない。


夕食どこで食べるか問題

クイーンズタウンは、食事の選択肢が多くて困る。事前に候補を4つに絞っていた。それぞれ、キャラクターがまったく違う。

Flame Bar & Grillは、ビーチストリート沿いに構える南アフリカ式BBQの店で、秘伝のレシピで仕上げたリブとステーキがクイーンズタウンで10年以上愛され続けている看板店だ。2階に上がるとワカティプ湖を見渡す眺望が広がり、ステーキは「ソースも何もいらない」と言わしめるほど素材で勝負しているという評判がある。肉好きには外せない一軒だ。

Botswana Butcheryは、歴史的建造物Archer's Cottageの中に構える、湖ビューとロッジ風の暖炉が年中稼働するスタイリッシュな店で、ディテールへの徹底したこだわりと知識豊富なスタッフによるサービスが評判だ。雰囲気は4店の中で最も格式があり、記念日や特別なお祝いに使われることが多い。ただしその分、ワインリストの価格も含めてかなり上を行く。

Rātāは、ミシュランスターシェフのジョシュ・エメットと地元レストラン界の重鎮フルール・コールトンが組んだ、NZを代表するコンテンポラリーダイニングのひとつだ。センタービルに佇む光あふれる空間で、サウスアイランドの旬の食材を産地直結で使ったメニューを、オーガニック食材へのこだわりと持続可能な調達の姿勢とともに提供している。料理の完成度という点では、4店の中で最も高そうだ。

そしてFinz Seafood & Grill。シーフード専門で、湖畔のロケーションが売りだ。

結論から言うと、Finzを選んだ。理由は単純で、「湖を眺めながらシーフードを食べる」というイメージがしっくりきたからだ。肉系の3店はどれも魅力的だったが、Flameは賑やかな雰囲気が強く少し違う気がした。Botswana Butcheryは次回の特別な機会に取っておきたい。Rātāは次の夜でもよかったが、ミルフォードから戻った翌日の夜は疲労が確定していたので、初日に気合を入れるよりゆったり過ごせる店を選んだ。

消去法のようでいて、これが正しい選択だったと今も思っている。


と言うわけで、Finz Seafood & Grillへ

ワカティプ湖に面したロケーションで、窓の外に湖と対岸の山が広がる。日が沈みかけると、空がオレンジとピンクに染まって、その色が湖面に映る。食事より先に、しばらくそれを眺めた。

料理は、地元の食材を丁寧に使ったシーフード中心のメニュー。グリーンマッセル(二枚貝)のチャウダー、イエローツナのタルタル、NZサーモンのグリル、シーフードパスタ、などを頼んだ。どれも素材の質が高く、余計な味付けをしていない。白ワインとよく合った。

湖を眺めながら飲むワインは、格別だった。クイーンズタウンは物価が高い街だが、この夕食は値段に見合う、あるいはそれ以上の体験だった。

残りの3店は、次回への宿題として持ち帰った。 クイーンズタウンにまた来る理由が、これで3つ増えた。


おわりに

クイーンズタウンは、「NZに住んでいるのにまだ行ったことがない」と言い続けた自分を、少し後悔させる街だった。

もっと早く来れば良かった。でも、「そのうち」が来たからこそ、ちゃんと味わえた気もする。

ミルフォードサウンドの話は、また明日。


こんにちは、あるいはこんばんは。

現在、ニュージーランドにある日系企業の社長として、現地のスタッフを率いている。言葉も文化も異なる環境で、どう意思決定し、どう伝えるか——日々の実践から得た学びを共有している。

海外赴任を考えている人、今まさに孤軍奮闘している人に届けば幸いだ。

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