見出し画像

#418 奨学金は本当に「奨学」なのか? 384万円を返済した実体験から考える

私は大学時代、月8万円の奨学金を4年間借りました。
合計すると384万円です。
当時は親に言われるがまま「大学へ進学するためには仕方がない」と思って申し込みをしました。

しかし社会人になって最初に驚いたのは返済額でした。
毎月の返済額は約1万8千円。しかも、そのうち約3千円は利子の返済です。元本を返しているつもりなのに、まず利子から支払わなければならない。
その仕組みに強い歯がゆさを感じたことを今でも覚えています。

私にとって奨学金はまぎれもなく「借金」でした。

その後、私は20代の間、ボーナスや余剰資金のほとんどを奨学金の繰上返済に回しました。旅行や趣味に使うお金よりも、まず借金を減らすことを優先したのです。
その結果、当初の予定よりかなり早く完済することができました。

予定より早く返済で来たとは言え、利子を含めて400万円~500万円のマイナス(負債)を背負った状態で社会人生活をスタートしたことになります。

そのような20代を思い返すと、

「学ぶために借りたお金の返済に、20代の自由な選択肢を削られていた」

という感覚があります。

近年では、奨学金の返済に苦しむ若者の存在がしばしば社会問題として取り上げられるようになりました。
その背景には、日本の教育制度と社会の仕組みが深く関係しています。

そもそも日本の奨学金とは?

奨学金とは、経済的な理由などによって進学が難しい学生を支援するための制度です。
日本で最も多く利用されているのが、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金です。

奨学金には大きく分けて3種類あります。

・給付型奨学金(返済不要)
・第一種奨学金(無利子)
・第二種奨学金(有利子)

このうち、多くの学生が利用しているのは貸与型奨学金です。

2024年度の新規採用者数を見ると、給付型奨学金が約13.6万人、第一種奨学金が約18.6万人、第二種奨学金が約20.3万人となっており、貸与型奨学金を受ける学生の割合が多くなっています。

出典:https://www.jasso.go.jp/shogakukin/chihoshien/sosei/zisseki.html?utm_source=chatgpt.com

つまり現在でも、多くの学生が「将来返済することを前提にお金を借りて大学へ進学している」のです。

なお、給付型奨学金は主に世帯収入などの家計基準によって決まります。
第一種奨学金は家計基準に加えて学力基準もあり、第二種奨学金は比較的利用しやすい仕組みになっています。

そのため、

「給付型を利用したかったが対象外だった」

「無利子を希望したが基準を満たせなかった」

という理由で、有利子の第二種奨学金を選ぶ学生も少なくありません。

なぜ多くの学生が奨学金を利用するのか?

では、なぜこれほど多くの学生が奨学金を利用しているのでしょうか。

最大の理由は大学進学にかかる費用の高さです。

私立大学の場合、学費だけでも数百万円が必要になります。さらに一人暮らしをする場合は、

・家賃
・食費
・光熱費
・教材費

なども必要になります。

現在では大学進学率が50%を超え、多くの高校生にとって大学進学は特別なものではなくなりました。

しかしその一方で、教育費は年々高額化しています。

進学したい。しかしお金が足りない。

そのギャップを埋めるために、多くの家庭が奨学金を利用しているのです。

海外と比べると日本の奨学金は異質?

実は海外では、「奨学金」と聞くと返済不要のお金をイメージする国も少なくありません。

もちろん国によって制度は異なりますが、日本のように貸与型が中心となっている国は決して多くありません。

特にヨーロッパの一部の国では、高等教育そのものの学費が安かったり、給付型支援が充実していたりします。

一方、日本では長年にわたり貸与型奨学金が中心でした。

つまり、「大学へ行きたいなら、まず借金をする」という構造が当たり前になっていたのです。

その結果、多くの若者が社会人になった瞬間から返済生活をスタートすることになります。

利子付き奨学金の問題点

個人的な意見ではありますが、私は自身の体験も踏まえて、利子付き奨学金制度にに大きな疑問を感じています。

教育は個人だけでなく社会全体にも利益をもたらします。

大学で学んだ人材は、

・教師
・看護師
・技術者
・研究者
・公務員

など、エッセンシャルワーカーとして社会を支えています。

つまり、高等教育は社会への投資でもあるのです。

それにもかかわらず、

「学びたい人が借金を背負って社会へ出る」

という構造は、本当に望ましいのでしょうか。

特に現在は物価上昇や賃金の伸び悩みも続いています。その中で毎月返済を続けることは決して簡単ではありません。

私は幸い教員という比較的安定した職業で社会人生活をスタートできたため、予定より早く返済をすることができました。

しかし、中には奨学金の返済が結婚や出産、住宅購入など人生の選択にネガティブな影響しているという指摘もあります。

このように、教育を受けることが将来の重荷になるのであれば、それは社会全体にとっても大きな損失なのではないでしょうか。

奨学金の問題は社会の問題

私は奨学金のおかげで大学へ進学することができました。
その意味では感謝しています。

しかし同時に、30代近くまで返済を続けた経験から、

「学ぶために借金をしなければならない社会」

に疑問を感じるようになりました。

奨学金とは給付型なら文字通り貰えるお金ですが、貸与型、とくに利子付き奨学金は、実質的には教育ローンです。

奨学金は本当に借金なのか。
その答えは国やその人の置かれている状況によって異なるでしょう。

しかし少なくとも、私にとってはまぎれもなく「借金」でした。

奨学金について考えることは、大学に進学するための資金をどのように調達するという個人の問題でもありますが、「教育を誰が支えるのか」という社会のあり方そのものを考えることにつながっているのです。

【関連記事】

【目次】


いいなと思ったら応援しよう!