#433 なぜ人類最初の都市は砂漠の中で生まれたのか?
現代の先進国の多くは温帯に位置しています。
日本、ヨーロッパ、アメリカ北部など、比較的過ごしやすい気候の地域に大都市が集中しています。
そのため私たちは、
「文明は住みやすい場所で発展する」
と思いがちです。
ところが世界史を振り返ると、不思議な事実があります。
人類最初の都市が誕生した場所の一つであるメソポタミアは、現在では乾燥地帯や砂漠が広がる地域なのです。
なぜ人類は、わざわざそんな場所で都市を築いたのでしょうか。
実は、
砂漠だったからこそ都市が生まれた
とも言えるのです。
今回は、人類最初の都市が誕生した理由を考えてみたいと思います。
砂漠の中にあった「豊かな土地」
まず誤解しやすいのですが、メソポタミア文明は完全な砂漠の中にあったわけではありません。
文明が栄えたのは、
・チグリス川
・ユーフラテス川
という二つの大河の流域でした。
この地域は、
「肥沃な三日月地帯」
とも呼ばれています。
川が氾濫すると土が運ばれ、農業に適した肥沃な土地が生まれました。
つまり、
周囲は乾燥地帯
川沿いだけが豊かな農地
という特殊な環境だったのです。
自然が豊かすぎる場所は都市が生まれにくい
人類最初の都市を作るという点では、
自然が豊かすぎる場所は必ずしも有利ではありません。
例えば森林が豊かな地域では、
・狩り
・採集
・木の実の収穫
などで生活できます。
そのため、
わざわざ大勢が集まって暮らす必要がありません。
一方で乾燥地帯では事情が違います。
生きるためには、限られた水を利用する必要があります。
すると人々は川沿いに集まり、協力して農業を行うようになります。
つまり、
環境が厳しいからこそ
人々は集団で生活する必要があったのです。
都市は「水の管理」から生まれた
メソポタミア文明最大の課題は水でした。
雨は少なく、農業は川の水に頼るしかありません。
そこで人々は、
・運河
・用水路
・堤防
などを作るようになります。
これを灌漑(かんがい)と言います。
しかし灌漑工事は一人ではできません。
大勢の人が協力しなければなりません。
誰が工事を担当するのか。
誰が水を分配するのか。
誰が管理するのか。
こうした役割分担が生まれ、やがて行政組織や支配者が登場します。
つまり、
都市は農業から生まれたのではなく、
水の管理から生まれた
とも言えるのです。
人が集まると仕事が増える
さらに農業が成功すると、余った食料が生まれます。
すると全員が農業をする必要がなくなります。
そこで、
・職人
・商人
・神官
・役人
・兵士
などの専門職が登場します。
こうして社会が複雑化していきました。
そして、
・神殿
・市場
・行政施設
などが建設され、本格的な都市が誕生したのです。
有名なウルやウルクといった都市国家は、このようにして発展しました。
なぜ四大文明は大河の近くなのか?
実はこの話はメソポタミア文明だけではありません。
エジプト文明はナイル川。
インダス文明はインダス川。
中国文明は黄河。
四大文明はすべて大河の近くで発展しています。
偶然ではありません。
古代において、
水を管理すること
が文明を生み出す条件だったからです。
その意味では、
文明の主役は王様でも軍隊でもなく、
大河だった
と言えるかもしれません。
砂漠だったからこそ都市が生まれた
私たちは、
豊かな自然があれば文明が発展する
と思いがちです。
しかし人類最初の都市が生まれた理由は少し違いました。
周囲は乾燥地帯。
生きるためには川の水を管理しなければならない。
だから人々は集まり、協力し、ルールを作り、都市を築いたのです。
つまり、
砂漠だったからこそ文明が生まれたのです。
これは一見すると矛盾しているようですが、人類史を考えるうえで非常に重要な視点です。
人類最初の都市は、豊かな自然が与えてくれたものではありません。
人々が厳しい環境の中で生き抜くために協力して作り上げたものだったのです。
【目次】
