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#489 地図の海岸線は満潮と干潮どちらを表している?

地図を見ていると、海と陸の境目に一本の線が引かれています。

私たちはこれを「海岸線」と呼んでいます。

ところが、海岸はいつも同じ場所にあるわけではありません。

海には潮の満ち引きがあるからです。

干潮になれば海面が下がり、砂浜が広く現れます。

満潮になれば海面が上がり、今まで陸地だった場所まで海になります。

では、地図に描かれている海岸線は、いったいいつの状態を表しているのでしょうか?

地図の海岸線は「満潮時」

国土地理院のFAQには、「海岸線は、干潮時か満潮時、いずれを表示しているのですか?」という質問があります。

その答えは、非常にシンプルです。

「満潮時を表示しています。」

国土地理院の地図記号「海岸線」についても、「満潮時の陸地と海面との境界」を表示すると説明されています。

つまり、地図上の海岸線は「海が最も沖まで引いたときの境界」ではありません。

満潮になって海面が陸地側へ入り込んだときの境界を基準にしているのです。

干潮になると、海岸線より海側に広い陸地が現れることがあります。

それでも、地図ではそこを「陸地」として描き直すわけではありません。

その代表的な例が、「干潟」です。

干潟は地図では「海」になる?

干潟とは、潮の満ち引きによって海面の下に隠れたり、陸上に現れたりする、砂や泥などからできた平坦な場所です。

国土地理院も、

干潟を「潮間帯に形成される砂や泥からなる広く平坦な部分」と説明しています。

低潮時には広く露出しますが、満潮時には海面に覆われます。

つまり、干潟は「陸なのか海なのか」が一見すると分かりにくい場所です。

例えば、有明海は広大な干潟で知られています。

干潮の時間に有明海を見ると、海水が大きく引き、広大な泥の干潟が姿を現します。

写真だけを見れば、「ここは陸なのだろうか?」と思ってしまうほどです。

ところが、地図を見ると、その干潟の多くは海側として扱われます。

これは、地図の海岸線が満潮時の状態を基準としているからです。

干潮時に一時的に現れる場所まで「陸地」として地図に描いてしまうと、潮が満ちるたびに陸地の面積が変わってしまいます。

そこで、地図では満潮時の境界を基準にして、海と陸を区別しているのです。

満潮時なら海岸線はいつも同じ?

ややこしいことに、「満潮時」といっても、毎回まったく同じ場所まで海水が満ちてくるとは限りません。

潮の満ち引きは、月や太陽の影響を受けています。

また、実際の海面は潮汐だけで決まるわけではありません。

風や波、気圧などの気象条件によって海面の高さは変化します。

そのため、ある日の満潮時に撮影した航空写真を見て、「ここまで海水が来ているから、ここが満潮時の海岸線だ」と単純に決めることはできません。

国土地理院は、地図を作成・更新する際に航空写真を重要な情報として利用しています。空中写真は現況を忠実に写し、地図の作成や更新に欠かせない情報となっています。

さらに、海岸線の位置を扱う際には、潮位や波などの影響を考慮する必要があります。

つまり、地図の海岸線は、ある瞬間の海をそのまま写真のように写した線ではありません。

さまざまな資料や測量結果などをもとに、地図上で基準となる「満潮時の海岸線」が決められているのです。

地図は「その瞬間の世界」を描いているわけではない

私たちは地図を見ると、「この線が実際の海岸線なのだから、現地に行けばそこに海と陸の境目がある」と考えがちです。

ところが、実際の自然はもっと複雑です。

海岸は潮によって動きます。

波によっても変化します。

砂浜では、長い時間をかけて砂が移動することもあります。

それでも地図では、こうした変化する自然を、一定の基準に従って一本の線として表現しなければなりません。

だからこそ、「海岸線」という一本の線にも、地図を作るためのルールが隠れているのです。

おわりに

地図の海岸線は、干潮時ではなく満潮時の陸地と海面との境界を表しています。

そのため、干潮になると広大な干潟が現れる有明海のような場所では、実際に目の前に陸地が広がっていても、地図では海として扱われる場所があります。

そして、満潮時といっても、海面の高さは毎回完全に同じではありません。

潮汐だけでなく、風や波などの影響もあります。

つまり、地図に描かれた海岸線は、自然界に存在する「絶対的な境界線」ではありません。

変化し続ける自然を、一定のルールによって一本の線にしたものなのです。

普段何気なく見ている地図の一本の線。

そこには、自然の複雑さを地図に落とし込むための、測量と地理の知恵が詰まっているのです。

【参考】

【目次】

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