#239 安芸高田市は地方自治の学校

安芸高田市で起きていることを見ると、地方自治について学ぶことができる。

2020年6月、当時の安芸高田市の市長が、河井克行前法務大臣から現金を受け取っていたことを認めて辞職した。

8月に行われた市長選で、前副市長を破って当選したのが石丸伸二新市長である。地元安芸高田市出身で、京都大学に進学、元銀行員という経歴である。市政や自身の考えをTwitterで発信することが話題となった。

石丸市長が全国的に話題となったきっかけが、議会との対立だ。
対立と言っても、そもそも首長と議員をそれぞれ選挙で選ぶ二元代表制において、首長と議会は相対する存在である。それが政策の対立なら良いのだが、安芸高田市の場合は議会から市長への私怨による対立ともとれる状況になってしまっている。

発端となったのは、Twitterにおける石丸市長のあるツイートだ。市議会で議員が居眠りをしていたとツイート。それに対し、市議会は市長を呼び出し、非公開の場で「敵に回すなら政策に反対するぞと説得?恫喝?あり」とツイートし、物議をかもした。

ちなみに居眠りをしていた議員は体調が悪かったと弁明。「恫喝」を指摘された議員は逆に名誉棄損だとして市長に対して訴訟を起こしている。

その後、議会は市長が行う政策に反対する姿勢をとり、市長が提案した副市長人事を否決するなど、対立を強めている。

2023年には、市長が決定した道の駅への無印良品出店計画を議会が否決。

このことを受け、石丸市政に賛成派の議員から、「不信任決議案」が提出された。本来、不信任決議案は反対派が出すものだが、賛成派が提出したというところがポイントだ。

議会で不信任決議が可決された場合、市長は議決から10日以内に議会を解散するか辞職しなければならない。賛成派の議員は、議会を解散させて市民に判断を委ねることを目的として不信任決議案を出したのだ。

この不信任決議案は、「反対派」の議員によって否決された。その代わりに、法的拘束力を持たない問責決議案を提出した。こちらは賛成多数で可決された。しかし、法的拘束力をもたないため議会が市長に一方的に注意をしたというだけである。

反対派の議員はインタビューの中で「まだそこまでじゃない」と語っているが、石丸市長は「自分の議席が失われるリスクがあるからですよ。相手の文句はつけるけど、不信任は出さない。これを権力の私物化と言う」として強烈に批判している。

安芸高田市の市長と議会の対立は溝を深めている。
これは個人的な意見だが、YouTubeで公開されている市長と議員のやり取りを見ていると、議員がむきになって市政を良くすることではなく市長に反対すること、市長の批判をすることが目的に議論を行っているように見える。
議員側が感情的であったり理解不足で「議論」すらならない場面も多々みられる。

この対立を解消するには、市長が自分の主催する政党をつくって議員を当選させれば良いという方法がある。例えば、大阪では橋下徹氏が維新の会をつくったし、東京では小池知事が都民ファーストの会をつくって都議会に多数の議員を送り出している。

石丸市長は橋下徹氏との対談の中で、この方法をきっぱりと否定している。

この動画での対談は実におもしろい。
橋下氏は、Twitterで「自分で政党を立ち上げ、選挙を通じて市議会議員を入れ替えればいい」と発言。

それに対し石丸市長は「市長与党をつくることに抵抗がある」と言う。
本来地方自治は二元代表制で、首長と議会がそれぞれ独立して対等なものであるはずが、市長与党をつくると首長が議会を支配している状態になってしまうという懸念があるようだ。

橋下氏は、維新の会の議員に自分の政策が否決された例をあげながら、自分のイエスマンになる人ではなく、(感情的にならず)政策議論ができるメンバーを市議会に入れることが必要だと指摘。
そして、橋下氏は誰もが思っているけど言えないことをズバリ言ってしまう。

「(安芸高田市議会の)今のメンバーでは政策議論はできないと思う」

さて、安芸高田市は今後どのような方向に向かっていくのだろうか。
安芸高田市に住む有権者は市長にまきこまれる形で決断をせまられているのだと思う。「地方自治は民主主義の学校」を体現している安芸高田市は地方自治の学校である。

また、人口が減少していく地方の自治体がかかえる課題について石丸市長自ら端的にプレゼンしている動画がこちら。

「人口動態は簡単には変わらない」=少子化・過疎化を改善するのは難しいという前提にたった上で、何をしなければならないのかを理路整然と説明している。安易に「移住者を増やそう」「子どもを増やそう」ではなく、現実的に何が問題で、今後何をしなけばならないかを語っている。

多くの政治家が自身の人気がなくなるから言えない現実を冷静に語っている。政治家の説明責任とはかくあるべしだと思う。

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