#126 奴隷がうらやましかった古代の人々

『万葉集』には次のような歌がおさめられている。

つるばみの衣 人みな事なしと 言ひしときより 着ほしく思ほゆ 

『万葉集』より

「つるばみの衣」とは、ドングリの煮汁で染めた着物のことで、当時の奴婢という身分の人が着ていた服である。「事なし」とは心配事がないという意味である。この歌の意味はおおよそ次の通りだ。

奴婢の着物を着ている人々は、心配事がないと人々が言っているのを聞いた時から、その着物を着てみたいと思っていた。

つまり、一般の人(良民)が、奴婢(賤民)になりたいと言っていたということだ。(奴婢については以下の記事を参照)

なぜ当時の人々は、奴隷的な身分である奴婢になりたいと思ったのだろうか。教科書にあるように、当時の人々は租・調・庸・防人・衛士などのさまざまな負担に苦しんでいた。対して奴婢(私奴婢)は良民の3分の1の口分田が与えられており、租を負担するのみだった。負担の面だけで見れば良民よりははるかに楽だったのだ。奴婢は主人の所有物とされ、さまざまな自由が制限され、時には売買されることもあった。しかし、それを差し引いてもさまざまな負担から逃れることの方が当時の人々にとって重要だったのかもしれない。

【目次】

【参考】


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