#423 なぜ日本人は投資=ギャンブルと考えてしまうのか?
NISAや新NISAの普及によって、近年は投資に関する話題を目にする機会が増えました。
テレビやSNSでも、
「資産形成」
「長期投資」
「インデックス投資」
といった言葉をよく見かけます。
しかし、その一方で、
「投資は怖い」
「投資はギャンブルだ」
という声も根強く残っています。
実際、私の周囲でも、
「投資は損をしそうだからやらない」
「株は博打みたいなものでしょ?」
という人は少なくありません。
では、なぜ日本人は投資に対してこのようなイメージを持つのでしょうか。
その背景には、日本の歴史や経済の変化が深く関係しています。
銀行預金が正義だった時代
現在では考えにくいことですが、かつて日本では銀行預金だけで資産が増える時代がありました。
高度経済成長期からバブル期にかけて、日本の銀行預金金利は非常に高い水準でした。
定期預金の金利が5%を超えることも珍しくなく、時代によっては7%を超えることもありました。
例えば100万円を預金すれば、年間で数万円の利息がつくことになります。しかも元本保証です。
リスクを取らなくても資産が増えるのですから、多くの人が銀行へお金を預けるのは当然でした。
当時の日本では、
「お金は銀行に預けるもの」
という考え方が常識だったのです。
そのため、投資は一部の専門家や資産家が行う特別なものというイメージが形成されていきました。
バブル崩壊が投資への不信感を生んだ
さらに、日本人の投資観に大きな影響を与えたのがバブル崩壊です。
1980年代後半、日本では株価や不動産価格が急激に上昇しました。
多くの人が、
「株は必ず上がる」
「土地の値段は下がらない」
と信じていました。
しかし1990年代に入るとバブルは崩壊します。
株価は大幅に下落し、不動産価格も長期的に下がり続けました。
巨額の損失を抱えた人も少なくありませんでした。
その結果、
「投資は危険だ」
「投資は失敗すると人生が終わる」
というイメージが社会全体に広がっていったのです。
特にバブル崩壊を経験した世代ほど、その記憶は強く残っています。
現在でも投資に否定的な意見が一定数存在する背景には、この時代の影響があると言われています。
ゼロ金利時代の到来
ところが、その後日本経済は別の問題に直面します。
長引く不況です。
景気を回復させるため、日本銀行は金利を大幅に引き下げました。
いわゆるゼロ金利政策です。
現在では普通預金の金利はほぼゼロに近い状態が続いています。
100万円を預金しても、1年間で得られる利息はわずかです。
つまり、
「銀行に預けておけばお金が増える」
という時代は終わったのです。
しかし、多くの日本人の価値観は簡単には変わりませんでした。
親世代から子世代へ、
「お金は銀行へ預けなさい」
という考え方が受け継がれてきたからです。
結果として、
「預金は安全」
「投資は危険」
というイメージだけが残ることになりました。
世界と比べると日本は特殊だった
実は、日本人ほど預金を好む国はそれほど多くありません。
例えばアメリカでは、多くの家庭が株式や投資信託を通じて資産形成を行っています。
老後資金や教育資金を運用することも一般的です。
もちろんアメリカでも投資リスクは存在します。
しかし、
「長期的に経済が成長するなら資産も増える」
という考え方が社会に根付いています。
一方、日本では長年にわたり、
「投資は危険」
「預金が安全」
という価値観が強く残ってきました。
この違いが、個人金融資産の運用方法にも表れています。
いま「貯蓄から投資へ」が進んでいる
近年、政府は「貯蓄から投資へ」という方針を打ち出しています。
その象徴がNISA制度です。
特に2024年から始まった新NISAは大きな話題になりました。
背景にあるのは、
「預金だけでは資産形成が難しい時代になった」
という現実です。
物価が上がる一方で、預金金利はほとんど増えません。
例えば年間2%の物価上昇が続けば、お金の価値は実質的に目減りしていきます。
つまり、
「何もしないことにもリスクがある」
時代になったのです。
だからこそ政府は、長期的な資産形成の手段として投資を後押ししているのです。
金利のある時代に戻りつつある?
投資が怖いと感じること自体は自然なことです。
しかし、その感覚がどこから来ているのかを知ることは大切です。
日本人が投資をギャンブルだと考えてしまう背景には、単なる知識不足ではなく、日本の経済史そのものが関係しているのです。
もっとも、最近は少し状況が変わり始めています。
長らく続いてきたゼロ金利政策は転換点を迎え、日本でも預金金利が徐々に上昇し始めています。
実際に、一部の銀行では普通預金や定期預金の金利引き上げが行われるようになりました。
かつてのような高金利時代とは程遠いものの、
「銀行に預けても全く増えない」
という時代は少しずつ変化しつつあるのです。
だからといって、
「これからは預金だけで十分」
という話ではありません。
むしろ大切なのは、
「預金か投資か」
という二者択一ではなく、
それぞれの特徴を理解したうえで、自分に合った形で資産を持つことです。
日本人が投資に慎重なのには、それなりの理由があります。
しかし、その理由の多くは過去の時代背景から生まれたものでもあります。
これからの時代に必要なのは、
「投資はギャンブルだ」
と決めつけることでも、
「投資さえしておけば安心だ」
と信じ込むことでもありません。
なぜ自分は投資を怖いと感じるのか。
その理由を知ることこそが、資産形成の第一歩なのかもしれません。
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