#428 なぜ日本には戸籍がある?
役所で戸籍謄本を取ったことがある人は多いでしょう。
結婚や相続の手続きでは当たり前のように求められます。
しかし、世界に目を向けると、日本のような戸籍制度を持つ国はそれほど多くありません。
むしろ、
「家族全体を一冊で管理する制度」
の方が少数派です。
では、なぜ日本には戸籍があるのでしょうか。
その背景には、日本人の家族観と欧米の家族観の違いが隠されています。
戸籍とは何を記録する制度なのか
戸籍とは、家族関係を公的に記録する制度です。
例えば、
・誰が親なのか
・誰と結婚したのか
・子どもが生まれたこと
・離婚したこと
・亡くなったこと
などが記録されます。
住民票が
「どこに住んでいるか」
を示すのに対し、
戸籍は
「誰と家族なのか」
を示す制度なのです。
世界では個人を管理するのが普通
実は、海外にも出生届や婚姻届はあります。
しかし、多くの国では家族単位ではなく個人単位で管理されています。
例えばアメリカでは、
・出生証明書
・婚姻証明書
・死亡証明書
などをそれぞれ別に管理します。
つまり、
「この人が生まれた」
という記録はありますが、
日本の戸籍のように家族全体の関係を一冊で管理する仕組みはありません。
世界的にはこちらの方が一般的です。
日本はなぜ家族単位で管理するのか
では、なぜ日本だけ家族単位なのでしょうか。
その背景には、日本の「家(いえ)」という考え方があります。
現在の私たちは結婚や離婚を個人同士の問題として考えています。
しかし、かつての日本では家族は個人の集まりというより、一つの共同体として考えられていました。
特に江戸時代には、
「家を存続させること」
が非常に重要でした。
家には、
・財産
・土地
・仕事
・墓
などがあり、それらを次の世代へ受け継ぐ必要がありました。
そのため、
「誰が家の一員なのか」
を明確にすることが重要だったのです。
つまり日本では、
まず個人がいて家族ができるのではなく、
家という共同体があり、その中に個人が属する
という考え方が強かったのです。
明治政府は「家」を制度化した
明治時代になると政府は近代国家づくりを進めます。
そこで整備されたのが近代戸籍です。
ただし、明治政府は欧米の制度をそのまま導入したわけではありません。
日本社会に根付いていた
「家」
の考え方を制度として取り込みました。
その結果、
戸籍は個人を管理する制度ではなく、
家族を管理する制度
として整備されたのです。
現在の戸籍は当時ほど家制度の色合いは強くありませんが、
その仕組みには今でも家族単位で考える発想が残っています。
戸籍は実は便利な制度でもある
戸籍制度には賛否がありますが、便利な面もあります。
例えば相続です。
誰が親で、
誰が子で、
誰が配偶者なのか。
日本では戸籍をたどることで比較的簡単に確認できます。
海外では出生証明書や婚姻証明書など複数の書類を集めなければならない場合もあります。
つまり、
日本は家族単位で管理する代わりに、親族関係を確認しやすい
という特徴があるのです。
戸籍制度をめぐる議論
もっとも、戸籍制度は現在でも議論の対象になっています。
例えば、
・夫婦別姓との関係
・結婚による氏の変更
・プライバシーの問題
・家族の多様化への対応
などです。
戸籍はもともと「家族単位」で作られた制度です。
そのため、
「個人を重視する現代社会に合わなくなっているのではないか」
という意見もあります。
一方で、
相続や親族関係の確認などで便利な面があることも事実です。
戸籍制度を残すべきか、それとも見直すべきか。
この議論は現在も続いています。
戸籍から見える日本人の価値観
戸籍制度は単なる行政手続きではありません。
そこには日本社会の歴史が反映されています。
欧米では、
「まず個人が存在する」
という考え方が強く、
制度も個人単位で作られています。
一方、日本では長い間、
「個人は家族や共同体の一員である」
という考え方が重視されてきました。
戸籍制度は、その違いを今も残している制度の一つなのです。
私たちは普段、戸籍を当たり前のものだと思っています。
しかし世界的に見ると、それは決して当たり前ではありません。
戸籍は飛鳥時代の国家建設に始まり、明治時代の近代化を経て、現在まで受け継がれてきました。
そして今、その戸籍制度そのものが見直しの議論の中にあります。
戸籍を通して見ると、日本人が家族をどのように考えてきたのか、そしてこれからどのように考えていくのかが見えてくるのかもしれません。
【目次】
【参考】
