#432 なぜインダス文字は解読できない?
世界には今でも解読されていない文字が存在します。
その代表例が、
インダス文字
です。
約4000年前に栄えたインダス文明では、独自の文字が使われていました。
発掘調査によって数千点もの文字資料が発見されています。
ところが現在でも、
誰も読むことができません。
古代文明の文字と聞くと、
「エジプトのヒエログリフ」
を思い浮かべる人も多いでしょう。
しかしヒエログリフはすでに解読されています。
メソポタミア文明の楔形文字も読むことができます。
では、なぜインダス文字だけが今も謎のままなのでしょうか。
今回は世界史最大級のミステリーの一つに迫ってみたいと思います。
インダス文字とは?
インダス文字は、紀元前2600年頃から栄えたインダス文明で使われていた文字です。
現在のパキスタンやインド北西部にあたる地域で発見されています。
文字は主に、
・印章
・土器
・銅板
などに刻まれていました。
発見された記号は約400種類以上あると考えられています。
そのため、
単なる記号ではなく文字体系である可能性が高い
と考えられています。
しかし問題があります。
それらの文字は非常に短いのです。
長い文章が存在しない
実はインダス文字最大の問題はここにあります。
例えばエジプト文明では、
神殿
墓
石碑
などに長い文章が残されていました。
メソポタミア文明でも、
法律
契約書
行政文書
など膨大な文章が発見されています。
ところがインダス文字は、
長くても数文字から十数文字程度しかありません。
現代で言えば、
文章ではなく会社のロゴや名前だけが大量に残っている
ような状態です。
これでは文法を分析することができません。
解読のヒントが圧倒的に不足しているのです。
ヒエログリフはなぜ解読できたのか
ここで逆に、
なぜヒエログリフは解読できたのか
を考えてみましょう。
ヒエログリフ解読の決定打になったのは、
ロゼッタ・ストーン
でした。
この石碑には、
同じ内容が
・ヒエログリフ
・デモティック文字
・古代ギリシャ語
の3種類で書かれていました。
古代ギリシャ語はすでに読めたため、
「この部分は王の名前だ」
「この記号はこの音だ」
と比較しながら解読を進めることができたのです。
つまり、
読める言語との対照表
が存在したのです。
インダス文字には「ロゼッタ・ストーン」がない
ところがインダス文字には、それがありません。
今のところ、
インダス文字と他の言語を並べて書いた資料
が一つも発見されていないのです。
つまり、
答え合わせができない。
研究者たちは、
これは王の名前ではないか
これは数字ではないか
と予想しています。
しかし確証を得る方法がありません。
まるで暗号文だけを渡されて、
解読の手がかりを何も与えられていないような状態なのです。
そもそも何語なのかも分からない
さらに厄介な問題があります。
インダス文字が、
どの言語を書いたものなのか
分かっていないのです。
例えば、
現在のタミル語などにつながるドラヴィダ系言語だった
という説があります。
一方で、
インド・ヨーロッパ語族だった
という説もあります。
さらには、
そもそも文字ではなく宗教的な記号だった
という極端な説まで存在します。
何語を書いていたのか分からなければ、
発音も意味も推測できません。
AIでも解読できないのか?
近年ではAIを使った研究も進んでいます。
大量のデータを分析し、
文字の並び方の法則を調べる試みも行われています。
実際に、
インダス文字には一定の文法的な規則がある
ことも分かってきました。
しかし、
意味そのもの
までは分かっていません。
どれだけ高性能なAIでも、
比較対象となる資料が存在しなければ限界があるのです。
文字が読めないから文明も分からない
インダス文明には不思議な点がたくさんあります。
例えば、
・王宮が見つからない
・王墓が見つからない
・戦争の痕跡が少ない
などです。
もし文字が読めれば、
・王の名前
・法律
・宗教
・政治制度
などが具体的に分かるかもしれません。
しかし文字が読めないため、
文明全体が大きな謎に包まれています。
つまり、
インダス文明最大の謎は、
王様ではなく文字
なのです。
4000年前のメッセージはまだ読めない
私たちはスマートフォン一つで世界中の情報を読むことができます。
しかし、
4000年前の人々が残した文字
は今も読むことができません。
インダス文字は、
世界史の教科書に載っているにもかかわらず、
内容がほとんど分かっていない珍しい文字です。
もしかすると、
明日新しい遺跡が発見されて解読が進むかもしれません。
あるいは100年後も謎のままかもしれません。
インダス文字は、
人類の歴史にはまだ解けていない問題が残っていることを教えてくれる、
世界最大級のミステリーなのです。
【目次】
【参考】
