見出し画像

#470 日本にFBIのような組織がないのはなぜ?

近年、

「日本にもFBIのような情報機関が必要ではないか」

という議論を耳にする機会が増えています。

背景にあるのは、

・中国やロシアによるスパイ活動への警戒
・サイバー攻撃の増加
・経済安全保障への関心の高まり

などです。

こうした議論の中でよく登場するのが、

「インテリジェンス機能」

という言葉です。

インテリジェンスとは、単なる情報収集ではありません。

国家の安全保障に関わる情報を集め、分析し、政府の意思決定に役立てる活動全体を指します。

スパイ活動の摘発やテロ対策、外国の動向把握などもその一部です。

実際、経済安全保障推進法の制定や、重要情報を扱うためのセキュリティ・クリアランス制度の整備など、日本でも安全保障分野の強化が進められています。

こうした流れの中で、

「アメリカにはFBIがあるのに、日本にはなぜないのか」

という疑問を持つ人も少なくありません。

では、そもそもFBIとはどのような組織なのでしょうか。

そもそもFBIとは何なのか

FBIとは、

「Federal Bureau of Investigation(連邦捜査局)」

の略です。

アメリカ司法省に属する組織で、

・テロ対策
・スパイ摘発
・サイバー犯罪捜査
・汚職捜査
・重大犯罪捜査

などを担当しています。

日本人の感覚だと警察に近いように思えますが、実際には少し違います。

アメリカでは警察は州や市ごとに存在しています。

例えばニューヨーク市警察(NYPD)やロサンゼルス市警察(LAPD)が有名です。

一方、FBIは州をまたぐ重大事件や国家安全保障に関わる案件を担当します。

さらに情報収集や防諜活動も行っており、

「警察」と「情報機関」

の両方の性格を持っています。

イギリスの情報機関MI6は、映画『007』で有名ですが、FBIはそれよりも捜査機関としての色彩が強い組織です。

なぜ日本にFBIがないのか

では、なぜ日本には同じような組織が存在しないのでしょうか。

その理由は戦後の歴史と深く関係しています。

戦前の日本には、

・特別高等警察(特高警察)
・憲兵隊

といった強力な治安機関が存在しました。

これらの組織は治安維持だけでなく、

・思想監視
・言論統制
・政治運動の取り締まり

なども行っていました。

敗戦後、日本はGHQの占領下で民主化を進めます。

その過程で特高警察などは解体されました。

そして、

「国家による過度な監視権限の集中」

に対する警戒感が強まったのです。

そのため日本では、アメリカのFBIのように、

捜査・情報収集・防諜

を一つの巨大組織に集中させる形は採用されませんでした。

それでも日本に情報機関は存在する?

とはいえ、日本にインテリジェンス機能がないわけではありません。

実際には複数の組織が情報収集を行っています。

最も有名なのは警察庁公安部門です。

公安警察は、

・テロ対策
・過激派対策
・外国勢力の動向把握

などを担当しています。

人気漫画『名探偵コナン』に登場する安室透(降谷零)は、

「警察庁警備局警備企画課」

に所属する公安警察官という設定です。

また、

公安調査庁

という組織もあります。

こちらは法務省の外局で、

・オウム真理教などの調査
・過激派組織の動向把握
・テロ組織などに関する情報収集

などを行っています。

ドラマ『相棒』では、反町隆史さんが演じる冠城亘が公安調査庁へ入庁する場面が描かれました。

さらに、

内閣情報調査室(内調)

も存在します。

ドラマ『相棒』では、仲間由紀恵さん演じる社美彌子が内閣情報調査室に関わる人物として登場します。

内調は首相官邸直属の情報機関で、各省庁から集めた情報を分析する役割を担っています。

ただし、FBIのような強力な捜査権は持っていません。

「別班」は本当に存在するのか?

情報機関の話になると、

「別班(べっぱん)」

という言葉を聞くことがあります。

ドラマ『VIVANT』で有名になりました。

別班とは、自衛隊内に存在する非公式な情報部隊だと言われています。

元自衛官の証言などから存在を指摘する声はありますが、政府は公式には認めていません。

そのため、

「存在すると言われているが詳細は不明」

というのが現在の状況です。

少なくともFBIのように法律で設置された公的機関ではありません。

日本は「分散型」の情報体制を選んだ

アメリカにはFBIという巨大組織があります。

しかし日本では、

・警察庁公安部門
・公安調査庁
・内閣情報調査室
・防衛省情報部門

などが役割を分担しています。

つまり、

「一つの巨大な情報機関」

ではなく、

「複数の組織が情報を分担する体制」

になっているのです。

これは日本が積極的に選んだというよりも、

戦後の民主化政策や戦前体制への反省の中で形成された仕組みだと言えるでしょう。

情報機関のあり方は国の歴史を映している

映画やドラマの影響もあり、

「日本にもFBIのような組織を作るべきだ」

という意見はしばしば聞かれます。

しかし、その国がどのような情報機関を持つのかは歴史と深く結びついています。

アメリカは強力な連邦捜査機関を発展させました。

一方、日本は戦後、情報機能を複数の組織に分散させる体制を築いてきました。

そのため、

「なぜ日本にFBIがないのか」

という疑問は、

単なる組織の違いではなく、

戦後日本の安全保障や民主化の歴史そのものにつながっているのです。

ニュースで公安や内調という言葉を見かけたとき、そんな視点で考えてみると、日本の安全保障の仕組みが少し違って見えてくるかもしれません。

【関連記事】

【目次】

いいなと思ったら応援しよう!