#409「日本の刑事事件の有罪率は99.9%?」それって本当に“異常”なのか
日本では、「逆転無罪」が大ニュースになることがあります。
最近でも、袴田事件 の再審無罪判決は全国的に大きく報道されました。
しかし、このニュースが話題となることはよく考えると不思議なことなのです。
本来、裁判は「有罪か無罪か分からない人」を判断する場のはずです。
それなのに、なぜ無罪判決がここまでニュースになるのでしょうか。
その背景にあるのが、日本の刑事裁判の「有罪率99.9%」という数字です。
世界的に見ても日本の有罪率は非常に高い水準です。
実は、この「99.9%」という数字には、多くの人が誤解しやすいポイントがあります。
なぜ日本の有罪率はここまで高いのでしょうか?
「99.9%」とはどんな数字なのか
まず重要なのは、「逮捕された人の99.9%が有罪」という意味ではない、ということです。
ここを誤解している人はかなり多いです。
実際の99.9%という数字は、「起訴された刑事事件で有罪になる割合」を指しています。
つまり、
警察が捜査
↓
検察が起訴※ここで無罪になる可能性のある事件はほとんど不起訴となる
↓
裁判
↓
有罪
という流れの中で、「検察が裁判に持ち込んだ事件」だけを対象にしている数字なのです。
日本の検察は「かなり厳選して起訴」している
ここが最大のポイントです。
日本の検察は、「有罪にできると強く判断した事件」をかなり慎重に選んで起訴しています。
こうした考え方のことを、「起訴便宜主義」といいます。
起訴便宜主義とは、被告人の性格や年齢、犯罪の軽重や情状を考慮して、起訴をするかどうかを検察官の裁量に委ねる仕組みです。
日本では、たとえ犯罪の証拠がある程度あっても、
反省している
初犯
被害が小さい
示談が成立した
などの場合には、「起訴しない」という判断もできます。
つまり日本では、「怪しいからとりあえず裁判へ」とはなりにくいのです。
逆に言えば、「起訴される段階で、かなり絞り込まれている」とも言えます。そのため、有罪率が非常に高くなるのです。
日本の司法に問題はないのか
もっとも、「有罪率99.9%だから日本の司法は優秀だ」と単純には言えません。日本の刑事司法については、以前からさまざまな課題も指摘されています。
特によく問題視されるのが、
・長時間の取り調べ
・自白重視の捜査
・勾留の長期化などです。
海外メディアなどでは、このような日本の制度を「人質司法」と批判することもあります。これは、「容疑を否認すると長く拘束されやすい」という問題です。
たとえば、罪を認めれば早く釈放されやすい一方、「やっていない」と否認すると、取り調べや勾留が長引くケースがあります。
その結果、
「早く外に出たい」
「このままでは仕事や生活が壊れてしまう」
という精神状態に追い込まれ、実際には無実でも自白してしまう危険性があるのです。
実際、日本では長年、「自白」が非常に重要視されてきました。
そのため、
・無実でも精神的に追い込まれる
・虚偽の自白をしてしまう
・否認すると保釈されにくい
といった問題点が指摘されてきたのです。
冤罪事件も存在する
さらに、有罪率99.9%という数字を語る上で避けられないのが、「冤罪」の問題です。
日本では過去に、
足利事件
布川事件
松橋事件
など、後に無罪が判明した事件がありました。
特に袴田事件では、58年後に再審無罪が確定し、静岡地裁は「捜査機関による証拠の捏造」にまで言及しました。
この判決は、日本社会にかなり大きな衝撃を与えました。
逆に言えば、「無罪判決」がここまでニュースになること自体、日本では有罪判決が非常に多いことを示しているとも言えるのです。
「99.9%」だけでは実態は見えない
ここまで見ると分かるように、「有罪率99.9%」という数字だけで、「日本司法は完璧」「日本司法は異常」と単純には言えません。
実際には、
・起訴前の厳しい選別
・自白重視の捜査
・長期勾留の問題
・冤罪事件
など、さまざまな要素が重なっています。
つまり日本の刑事裁判は、「裁判で白黒を決める」というより、「起訴前にかなり決着がついている」制度とも言えるのです。
だからこそ、日本では「逆転無罪」が大きなニュースになります。
本来、裁判は有罪か無罪かを公平に判断する場のはずです。しかし現実には、「起訴された時点で、ほぼ有罪になる」と多くの人が感じているからこそ、無罪判決が“特別な出来事”として受け止められるのかもしれません。
【目次】
【参考】
