【閑話休題】第一種衛生管理者・合格法のすべて
■はじめに
今回の閑話休題は、私が保有している資格のひとつ「第一種衛生管理者」の合格法についてお話しします。
なぜ社労士受験の連載でこの資格を取り上げるのか。理由は明確です。衛生管理者試験の出題範囲は、社労士試験の労働安全衛生法と大きく重なっているからです。社労士受験生にとっては学習の相乗効果が期待できますし、人事労務の実務家にとっては選任義務のある必置資格として、持っていて損のない資格です。
私自身、人事部門で働く中でこの資格を取得しました。学習を通じて得た安衛法の土台は、社労士試験でも確実に活きたと感じています。
■第一種衛生管理者とはどんな資格か
まず概要を整理します。
●常時50人以上の労働者を使用する事業場では、衛生管理者の選任が法律で義務付けられています
●第一種は有害業務を含むすべての業種に対応でき、第二種は有害業務との関連が薄い業種に限定されます
●取得するなら第一種を強くおすすめします。適用範囲が広く、学習範囲の差もそれほど大きくないためです
試験は各地の安全衛生技術センターで毎月複数回実施されており、受験機会が非常に多いのが特徴です。年に一度しかチャンスのない社労士試験とは対照的で、この点は精神的にかなり楽です。
なお、受験には実務経験の証明が必要です。学歴に応じて必要な労働衛生の実務経験年数が変わりますので、受験を考える方は早めに勤務先で事業者証明の段取りを確認しておいてください。試験勉強より先に、ここでつまずく方が意外と多いのです。
■試験の構造を知る
出題は大きく三つの分野に分かれます。
●関係法令(有害業務に係るもの・係るもの以外)
●労働衛生(有害業務に係るもの・係るもの以外)
●労働生理
合格基準は、各科目40パーセント以上、かつ全体で60パーセント以上の得点です。この基準の意味するところは重要です。つまり、苦手分野を作りすぎなければ、満点を狙う必要はまったくないということです。全体で6割。この数字を常に意識してください。
■合格法の核心・過去問中心主義
結論から言います。この試験は過去問学習が圧倒的に有効です。
衛生管理者試験は、過去に出題された問題と同じ趣旨の問題が繰り返し出題される傾向が非常に強い試験です。テキストを最初から最後まで精読する必要はありません。私が実践した手順は次のとおりです。
●手順その1・いきなり過去問を解く
最初は解けなくて構いません。どんな知識が問われるのかを体感することが目的です。
●手順その2・解説を読み、必要な箇所だけテキストで補強する
問題から逆算してテキストを引く。この順番が学習効率を決めます。
●手順その3・過去問を繰り返す
公表されている過去問を数年分、最低でも3周は回してください。2周目以降は間違えた問題だけに絞れば、周回速度はどんどん上がります。
学習時間の目安は、人事労務の実務経験がある方なら60時間前後、まったくの初学者でも100時間程度が相場です。1日1時間なら2か月から3か月。社労士試験と比べれば、はるかに短期決戦です。
■分野別の攻略ポイント
●関係法令
安衛法の体系を押さえます。衛生管理者の選任、産業医、衛生委員会、健康診断、特別教育あたりが頻出の中心です。社労士受験経験者や受験予定者なら、この分野はそのまま安衛法対策になります。
●労働衛生(有害業務)
第一種の山場はここです。有機溶剤、特定化学物質、粉じん、電離放射線など、聞き慣れない用語が並びます。ただし出題パターンは限られていますので、過去問で問われた物質と障害の組み合わせを覚えていけば十分に戦えます。暗記が中心の分野と割り切ってください。
●労働生理
心臓の働き、呼吸、神経、筋肉、腎臓といった人体の仕組みが問われます。実は多くの受験者にとって、ここが得点源になります。一度理解してしまえば忘れにくく、出題も素直だからです。苦手意識を持たず、先に固めてしまうことをおすすめします。
■社労士受験生へのメッセージ
社労士試験の学習において、安衛法は「範囲が広いわりに出題数が少ない」という、なんとも扱いに困る科目です。深入りは禁物、しかし捨てることもできない。
衛生管理者の学習は、この安衛法の骨格を短期間で作るのに最適です。もし社労士本試験まで時間に余裕のある時期なら、先に衛生管理者を取ってしまうという戦略は十分に成立します。合格という成功体験がひとつ手に入ることも、長い社労士受験生活においては小さくない意味を持ちます。
一方で、本試験直前期に手を出すのはおすすめしません。あくまで時間的余裕があることが前提です。優先すべきは常に本丸の社労士試験である点は、間違えないでください。
■おわりに
第一種衛生管理者は、正しい手順で学習すれば決して難しい試験ではありません。過去問から入り、過去問を回し、6割を確実に取る。それだけです。
そして人事労務の道を歩む方にとって、この資格は名刺に書ける以上の価値を持ちます。職場の健康と安全を守る知識は、実務のあらゆる場面で顔を出すからです。
受験機会は毎月あります。思い立ったが吉日です。
それでは、また次回の記事でお会いしましょう。
