意地悪ドロンパとデリカシーのないQ太郎『ドロンパのお花見反対』/Fキャラお花見騒動④

毎朝仕事に出掛けて、毎晩家に帰ってくる。基本的に大人の一日は、ルーティンに満ちている。

けれど細かく見ていくと、いつもオフィスに行くわけではなく、取引先に出向いたり、どこか外の喫茶店でMTGをしたり、夜には会食が組まれたりもする。

毎日同じパターンの繰り返しかと思いきや、実は大人の世界では、それなりに日々のイベントがあるものなのだ。

ところが、子供の世界は違う。実は毎日ほぼ決められたスケジュールに則っり、毎日同じような面々と顔を合わせて、毎日同じような行動を取っている。子供の世界こそ、ルーティンの固まりなのである。

そんなことで、子供にとって、休日に大人と普段行けない場所に出掛けるという行為は、大人が思っている以上に楽しみに思うことなのである。


春のイベントと言えばお花見である。大人にとっては手頃な飲み会の口実になるわけだが、子供にとっても普段よりもご馳走を食べたり、飲ませてもらえないジュースを飲んだり、遠くまで出かけて走り回ったりと、楽しいことが目白押しなのである。

毎年春になると、藤子作品ではお花見に行きたい子供たちのお話が描かれる。ただし、すんなりとお花見にいけるわけではなく、家族の都合でそのチャンスが奪われてしまい、大いに嘆くこともあるし、願いが叶って喜ぶこともある。

こうしたFキャラのお花見にまつわる悲喜こもごもをたっぷりと検証していく。題して「Fキャラお花見騒動」

これまで3本の記事で、のび太(ドラえもん)、カワル(バケルくん)、みつ夫&ブービー(パーマン)のドタバタお花見を見てきた。これまでの記事は以下。


本稿では、「オバQ」から、あのツンデレキャラがお花見を邪魔するというエピソードを取り上げる。

「新オバケのQ太郎」『ドロンパのお花見反対』
「小学三年生」1972年4月号

本作の主人公は、我らがQちゃんではなく、大原家の隣人、神成家の居候、ドロンパである。ドロンパは初登場以来、いけ好かないキャラクターをいかんなく発揮し、真っ正直な性格のQちゃんと何かとぶつかることになる。

しかしただの口の悪い意地悪な奴かと言うとそうではなく、人の気持ちを慮る行為を取ることもある。ただし極端な恥ずかしがり屋(もしくはカッコつけしい)なので、隠れて善行に励んで、周囲からはただの意地悪オバケだと思われたままとなる。

本作では、そうしたひねくれ具合100%のドロンパのらしさが全開するエピソードとなっている。


大原家では家族みんなで電車で山まで遠出してお花見をすることになっている。「みんなで楽しくご馳走を食べるんだ」と、QちゃんとO次郎は悪びれなくドロンパに自慢してしまう。

ドロンパは「フン、くだらない」と切り捨てるのだが、当然心の内はそうは思っていない。内心と外目の行動が食い違うのが、ドロンパの最大の特徴なのである。

実際にドロンパは家主である神成さんに、「うちも行こうよ」と声を掛けるが、「今日は天気がいいから屋根を直す」と言って、願いを聞いてもらえない。

天気がいいからなおさらお花見に行きたいドロンパなのに、そうした気持ちを神成さんは汲み取れないのである。また、神成さんが屋根仕事をすると言っているが、これは後ほどの事故に繋がるセリフである。


準備に手間取ったようだが、ようやく大原家揃ってお花見に出発となる。よせば良いのに、Qちゃんがドロンパに「留守番頼むな」などと軽口を叩くものだから、ドロンパの意地悪な心に火が点いてしまう。

「留守番か、よし見てやる、僕は親切だから」と言って、大原家の中に侵入するドロンパ。家中をフムフムと歩き回り各方面を点検すると、「お~い大変だぞ」と、歩き出している大原家に声を掛ける。

勝手口のカギを締め忘れているというのだ。ママが急いで戻って鍵を掛けてくると、そのタイミングで「ガスの元栓も締め忘れてる」と告げる。とんだ二度手間だが、なかなか出発させないドロンパの作戦である。

ママが再び戻ってくると、ドロンパは「テレビをつけっぱなしだった」と指摘。今度は心当たりのあるQちゃんが急いで帰宅することになる。「こんなことしてたら日が暮れちゃうわ」とママ。


こういう時は、さらに嫌なことが起こるものだ。家族の前にパパの会社の社長が歩いてくる。そして、一言

「この近くに用事があってね。ついでに君んとこへ寄ろうかと・・・、」

最悪なタイミング、と家族全員が思ったところで、社長さんは、

「思ったけど急ぐからまた今度な」

と告げて去って行く。ホッと全員胸をなでおろす大原家なのであった。


・・・そんな大原家の内心の一喜一憂を読み取ったドロンパは、パパの姿に化けて、社長に「是非うちへお寄りください、是非是非」と声を掛ける。

社長はそうまでいうならと引き返し、「ちょっとだけ寄ろう」と本物のパパに話しかける。「えっ」と声を上げる面々。正ちゃんやQちゃんたちは怒り心頭で、社長を睨みつけるので、「にらめっこしていんです」とパパがフォローを入れることに。

部屋では、元々家に呼びたくないパパと急ぎの用事がある社長が向かい合い、特に話題も広がらない。気まずい時間が流れた後、

「わしゃ急いでいるんだがねえ」
「えっ、実は私も」

と噛み合ってしまい、社長は「なんじゃい」とプリプリしながら大原家を後にする。


「また何か起きないうちに急げ」と、家を出るQちゃんたち。すると、そこへ「誰か来てえ」という叫び声が聞こえてくる。なんと屋根を修理していた神成さんが梯子を踏み外して、屋根から落下してしまったのだ。

大慌てのドロンを尻目に、いざとなったら頼りになるパパは、冷静に「早くお医者さんを」とQちゃんに指示をだす。他の家族も布団を出してきて敷いて、神成さんを運んで横にする。見事なまでのチームプレイなのである。

駆けつけたお医者さんから「心配いりません」と太鼓判を貰い一安心。これでようやく再出発できるかと思ったのだが・・・。なんとそこに雨が降ってきてしまう。

「また今度にしましょう」とパパとママ。楽しみが奪われた正ちゃんQちゃんO次郎は「桜が散っちゃうよ~」と大号泣&猛抗議。遠出してご馳走を食べるお花見のチャンスは、そんなに簡単に巡って来ないことを知っているのである。


そんなQちゃんたちの様子を遠巻きにみているドロンパ。俯き、雨にびしょ濡れになっている姿から、さすがに申し訳ないと感じている様子が伺える。

すると何を思ったか、ドロンパがスッと大原家に入っていき、ドロンと何かに姿を変える。それは、一本の満開の桜の木であった。

「さあ花見をしてくれ」と、ドロンパ。驚く大原家の人々。お花見に遠出はできなかったが、この後きっと用意していたご馳走を家族で食べて、部屋でお花見をしたに違いない。


基本強がっているが、実はさびしん坊のドロンパ。自分もお花見に連れて行ってくれと頼めば済む話だったのだが、その一言が言えずにこの大騒ぎとなってしまう。

一方のデリカシーのないQちゃんが、ドロンパを必要以上に悔しがらせるから、意地悪をされてしまう。一緒に行くかと一声かけてやれば良かったのだ。

そういうことで、Qちゃんとドロンパのライバル関係が下地にあって、お花見反対運動が起きてしまったのだ。


まあ、最終的にはドロンパらしい返礼ができたので、四方丸く収まったのではないでしょうか・・。



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