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変装の名人バケルが、変装の名人に変装する『怪人五十面相』/怪人千面相関連作①

パーマンのライバル、怪人千面相。若い方はご存じないかもしれないが、このキャラクターは江戸川乱歩の「明智小五郎シリーズ」に登場する、変装などのトリックを操る怪人二十面相のパロディキャラとなっている。

また、「明智小五郎シリーズ」では、小林少年を団長とする少年探偵団が結成され、怪人二十面相と幾度も戦っている。この少年探偵団は「名探偵コナン」などにも受け継がれていることで知っている方も多いだろう。


藤子先生も明智小五郎シリーズは愛読していたものと思われ、そこからインスパイアされた怪人千面相というキャラクターを、「パーマン」以外にも登場させている。

そこで、ここまで「新パーマンVS怪人千面相」ということで3本の記事を書いたが、ここからは「怪人千面相関連作」という括りで、さらに数本の記事を展開してみたい。

これまでの千面相記事はこちら・・。


まずは、「旧パーマン」と「新パーマン」の連載空白期に描かれた作品、「バケルくん」に登場する「千面相」をご紹介したい。

「バケルくん」『怪人五十面相』「小学三年生」1975年12月号

「バケルくん」に登場するのは千面相ではなく「怪人五十面相」。パーマンの千面相と比較して20分の1しか変装できない名前だが、本来は「二十面相」から取られたキャラクターなので、むしろパロディとしてはこちらの名称の方がしっくりくる。


まずは、「バケルくん」って何?という方もいるかと思うので、ざっくりとした作品説明から。「バケルくん」は、宇宙人が残していった変身できる人形を使って、カワルがバケルやその家族たち、その他色々なキャラクターに姿を変え、事件や騒動を解決していくというお話。

レギュラーメンバーとなるバケル一家は、運動能力が高いバケルくんを筆頭に、いくらでもお金を出せるパパや、家事の得意なママ、頭が良く可愛い外見の姉ユメ代、そしてよく鼻が利く犬トロンで構成される。

カワルはいつしか複数の人形に変身してそれぞれ別の動きをさせるという能力を身に着け、以後はカワル+バケル一家を同時に演じることもできるようになる。

また、人形はバケルの家族以外にも膨大な種類があって、毎話ゲストキャラ的に登場させている。今回取り上げる「怪人五十面相」もそうした人形の一つである。

人形一覧は記事にしているので、もしよろしければ、こちらをご覧ください。


さて、物語は「バケルくん」世界のジャイアンであるゴン太の無理難題から始まる。ゴン太が命を掛けている草野球もオフシーズンとなり、来春までチームの結びつきをなくしたくないという発想から、「少年たんてい団」を作ろうと言い出す。

この「少年たんてい団」は、江戸川乱歩のパロディだが、昭和の時代では少年探偵団ごっこは、わりとメジャーな遊びであった。


ただ探偵団を作るだけならいいのだが、ゴン太は併せて何か事件を持ってこいと皆に命じる。困った団員たちは、コロッケ盗難事件・ゴミ捨て事件・財布紛失事件などの身近な事件を紹介、もしくはロンドンの銀行強盗事件を解決しようという突飛な話も出てくる。

ゴン太はこれらの提案には納得できず、例えば「怪人五十面相なんかと命がけの知恵比べがしたい」などと言い出す。そして、明日までに事件を探してこないとただじゃおかねぇといきり立つ。ジャイアン顔負けのガキ大将ぶりである。

こんな困った時には、バケル一家の家族会議が招集される。カワルは五本指を使って、5人家族に変身し、何か妙案がないかと考える。すると頭脳明晰なユメ代が、何かアイディアを浮かべたらしく、家族全員でそれに賛同する。


翌日、ゴン太が「いたずら手紙が届いた」と激怒している。それはなんと怪人五十面相からの犯行予告だった。

「明日午後三時、君の持っているジャイアンツ全選手のサインボールをもらいに行く。怪人五十面相」

昨日五十面相と知恵比べをしたいとゴン太が騒いでいたので、普通に考えればここにいる少年探偵団の誰かのいたずらだと思うのが普通だろう。

ちなみにカワルが「五十面相にしてはケチなものを狙うんだね」と感想を述べると、ゴン太は「命から二番目の宝だ」と激昂する。ちなみにこのサインボールは、また別の作品でも登場している。


五十面相を口に出しておきながら、五十面相なんている訳ないとゴン太は怒るのだが、そこで突然、木の枝に座っている女の子が、「いいえ本当にいます」と話しかけてくる。

「五十面相は恐ろしい力を持っているの。まるで化け物みたいな。あの男に狙われたらおしまいよ。やると言ったら必ずやるんだから」

突然登場し、しかも何やら五十面相のことにやたら詳しい。呆気にとられたゴン太が何者か尋ねると、「知りたい?」と表情が怪しくなる。そして、パッと木の上から草むらの中に飛び降りると、ヌウと口ひげの男性が立ち上がる。

この男、「吾輩が五十面相だ」と名乗る。見た目はパーマンの千面相とまるで変わらない。五十面相は変装の名人で女の子でも誰でも化けられると豪語、サインボールは必ずいただくと言い捨てて草むらに姿を消す。

ゴン太の「少年探偵団、かかれ」という呼びかけに反応してメンバーたちが草むらに飛び込むが、もう五十面相の姿はない。代わりに、ドラえもん顔の小さな猫が走り去っていく。


もう読者なら誰でもわかるが、怪人五十面相は、バケル所有の人形なのであった。バケル人形はもともと変身できる人形なので、変装の名人という設定がバチっとはまる。その意味で、怪人五十面相は「バケルくん」にピッタリなキャラクターである。


翌日、カワルは怪人五十面相騒ぎをさらに大きくして、二度とゴン太が探偵ごっこなどしないようにと画策する。

サインボールを狙われている少年探偵団の団長ゴン太は、団員たちを自分の家の周り配備して警護させる。そこへバケルが姿を見せるのだが、ゴン太からすれば頼れる味方の登場である。

一緒にサインボールを見張ろうということで、部屋の中に入れる。時間は2時半で、犯行予告まであと30分という時間帯。ゴン太は、この厳重体制なら五十面相は入り込めないと少しだけ余裕を見せる。


すると味方のはずのバケルが、「それはどうかな」と怪しく呟く。続けて「あいつは魔法使いみたいなやつだからね」と不気味なことを言い出し、ゴン太も「何を言い出す」と焦り出す。

ここでバケルは、チョと人形のボタンを押して、五十面相に変身。突然目の前に五十面相が現われ、腰を抜かさんばかりに慌てるゴン太。五十面相は「約束の時間にはまだ間がある」と余裕たっぷりに引き下がっていく。

こうなってしまうと、誰が味方かわからなくなったゴン太は、団員たちを呼び集めたいが、五十面相が混じっている可能性もあるので、一人で対応せざるを得なくなる。

変装の名人というのは、かくもやっかいなものなのだ。


いよいよ3時近くになり、挙動不審となるゴン太。すると部屋の外から笑い声が聞こえてくる。誰だと扉を開けると、足元に五十面相の人形が落ちている。

冷静さを欠いているゴン太は、「人形に変身して来たな」と言って踏みつぶすのだが、これによって、ゴン太は五十面相に「変身」してしまう。そこで、代わりに人形となったゴン太を使って、カワルがゴン太に化ける。

この時点で、
ゴン太→怪人五十面相
カワル→ゴン太

という組み合わせになる。


既に混乱の極みにいるゴン太は、自分が目の前に現れたので、「なんだ俺じゃないか」となぜか安心する。信用できるのは自分だけ・・・。そう思ったのもつかの間、自分が二人いるわけがないと思い直す。

そこでゴン太は「俺に変装して来たぞ!」と大声を出す。「俺を捕まえろ」と探偵団たちに指示が飛ぶのだが、そこでバケルが、こっそりとゴン太と五十面相を再び入れ替えさせて、元に戻す。

その結果・・・ゴン太からの「俺を捕まえろ」という指示に従った団員たちに、ゴン太は追い回されてしまう羽目になるのであった。


変装の名人という千面相(本作では五十面相)が、変身をテーマにしている「バケルくん」に登場するのは、考えてみれば必然であった。本作は、バケルが怪人五十面相に扮して、少年探偵団率いるゴン太から命から二番目の宝であるサインボールを盗むと予告を出す。

誰にでも変装できる相手に対して、ゴン太は自分しか信じられなくなるのだが、そこで自分が目の前に現れたので、仲間だと考えてしまう・・・。なかなか無茶苦茶な展開だが、いかにもバケルくんらしい一篇である。



さて次稿では、元祖「怪人千面相」について見ていきたい。


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