【意外】カバ夫はパーマンを強く信用している『おれをパーマン5号にしろ』/正義のヒーローごっこ⑥
「正義のヒーローごっこ」と題して、正義のヒーローに憧れて、自分もヒーローとして活躍したいと願う藤子キャラを紹介してきた。
彼らが憧れるヒーローは、テレビ番組などで活躍する人物たちで、それはスーパーダンだったり、バードマンだったり、スーパーマンだったりした。(特に影響を受けず、自らガンバルマンや、ウルトラギャルと名乗る人たちいたが・・)
ここで少し視点を変えて考えてみたいのは、本当にヒーローが実在する世界の人たちは、やはり彼らに憧れるのだろうかということだ。さらに実在のヒーローがとても身近な存在であったら、どうなるだろうか。
正義のヒーローが自分たちと同じ年代の少年少女であった場合に、彼らはヒーローの仲間入りをしたいと考えるのだろうか。
その答えは、YESである。
それは我らがヒーローの物語「パーマン」を読めばすぐにわかるというものだ。
そこで本稿では、パーマンの活躍を見ているうちに、自分もパーマンになって活躍したくなってしまった男のお話を取り上げてみたい。
「パーマン」『おれをパーマン5号にしろ』
「小学三年生」1967年8月号/大全集3巻
1960年代の「旧パーマン」では、最終的にパーマンは5号まで揃ったが、連載してすぐの頃は4号までの登場に留まっていた。いまや幻のパーマンと呼ばれるパーマン5号(通称パー坊)が初お披露目したのは、連載開始から8ヶ月が経過してからだった。
本作のタイトルが『おれをパーマン5号にしろ』となっているが、これはまだパーマン5号登場前のお話だからである。
そして、タイトルで「おれ」と言っているところからもわかるが、本作でパーマンの仲間に入りたいと考えたのは、カバ夫である。
藤子キャラのガキ大将たちは、自分の腕力に自信があると見え、ジャイアンアにしてもブラゴリラにしても、自らヒーローを名乗っている。「パーマン」世界のジャイアンであるカバ夫も、やはり同類なのであろうか。
冒頭、家の前で妹のガン子が出てくるのを待っていたみつ夫が、三重晴三から花火を投げつけられる。それを見たカバ夫が、みつ夫に代わって三重晴三を成敗する。
いつもなら一緒に意地悪しそうなカバ夫が、急にみつ夫の肩を持ってきたので気味悪がる。案の定、カバ夫がみつ夫にすり寄ったのには訳があった。
カバ夫の目的は、パーマンと仲良しのみつ夫に、自分をパーマン5号にするよう頼んで欲しかったのだ。「パーマンには助手が要らない」とみつ夫は答えるが、「そこを何とか」と食い下がってくる。
困っていたところにガン子が家から出てきたので、「これから出張から帰ってくるパパの迎えがある」と言い訳して、何とかその場をやり過ごす。
ごった返す駅構内(後に下野駅だとわかる)。人ごみをかき分け、何とかパパと合流するが、お土産を列車の座席に置いてきてしまったようで、慌てて戻っていく。
ちなみにパパは一人で引き返したように見えたが、次のコマではみつ夫だけが駅の外のベンチでパパの戻りを待っている。ガン子はいつの間にかパパの後を追って行ったようである。
パパの大荷物を手に一人で待つみつ夫に、怪しげな男が話しかけてくる。訝しく思ったところに、男は見回りの警官を見つけて、慌てて走り去っていく。警官はみつ夫に「東京は怖いところだよ、家出なんてやめて帰りなさい」と注意を受ける。
どうやら大荷物を持ったみつ夫は、怪しい男からも警察官からも、家出少年と思われてしまったようである。
ここでパパとガン子と再合流。パパが言うには、近ごろ家出をした人を騙して連れ出し、人身売買をしているというニュースがあるらしい。みつ夫に最初に声を掛けた男は、人さらいだったのだろうか?
パパを迎えに行った下野駅では、しばしば人さらいが出ると聞いたみつ夫。人身売買事件の捜査を始めることにする。
早速出動しようとすると、出てくるのを待ち受けていたカバ夫が、パーマンを呼ぶ。カバ夫が仲間に入りたいと言いたいことは既にわかっているので、「助手はいらない、そんなことを考える暇があったら勉強したまえ」と、依頼を聞く前に断ってしまう。
もちろん、簡単には諦めないカバ夫は、みつ夫(コピー)を捕まえて、パーマンの向かった先を聞き出す。
ブービーと合流したパーマンは、西郷像の立つ公園(下野公園?)で、まずは荷物を持ってぼんやりとしている家出人を探す。家出人のあたりをつけて、馴れ馴れしく近づくヤツこそが人さらいであると考えたのだ。
すると探し物の名人ブービーが、さっそく家出人と思しき芋娘田舎者風の女子を認め、彼女に近づいてペラペラと調子よく話しかけている怪しいサングラス姿の男を見つけ出す。
男が女の子をどこかへと連れ出そうとしているので、尾行すると、近くのレストランの中へと入っていく。パーマンは、「ご馳走して騙す気だな」と勘を働かせ、近くの席で話を聞こうと、自分たちもレストランに入る。
パーマンの恰好は目立つので、人さらいに警戒されそうなものだが、なぜか気が付かない。お店の人もパーマンとわかりそうなものだが、何も食べないなら出て行ってくれと迷惑がられる。
まだこの時点では、パーマンの認知度は高くないようである。
仕方なくラーメンを注文して、家出女と怪しい男の会話を盗み聞くパーマンたち。怪しい男は自分を棚に上げて、「東京には悪い人がいるから気をつけなさい」などと注意をしている。家出娘は「よろすく」と訛りつつ、すっかり男を信用してしまった様子。
二人が食堂を出ていくので後を追おうとすると、当然パーマンたちはラーメン代を請求される。ところが一円足らず、後で払いに来ると言っても、ウエイターの女性はガンと首を縦に振らない。
するとそこへ、お手製のパーマンマスクとマントを身につけたカバ夫が登場。俺を助手にするならば一円を貸そうと申し出る。
背に腹は代えられず、カバ夫から一円を借りて後を追うが、怪しい男と家出女の足取りを見失ってしまう。
助手にしたカバ夫を連れて空を飛ばねばならないので、ロープでカバ夫の体を括りつけて、パーマンと2号でぶら下げる格好となる。カバ夫は念願の空中飛行なので大喜びだが、これ、実際に飛んでみた場合には、ロープが腹にかなり食い込みそうで、いつまで笑っていられるだろうか・・・。
人さらいを見失ってしまったので、次なる作戦として、みつ夫に家出人のフリをさせて、わざと誘拐させようと考える。いわゆるおとり捜査である。カバ夫に「あいつならボーっとしてるから家出人に見える」と言われて、パーマンは腹を立てる。
ともあれ、カバ夫に見つからないようにマスクとマントを外すみつ夫。小さくしたパーマンセットを手にして、「これをやつらに見つけられたらまずい」と警戒する。何気ない場面だが、後々の重要な伏線となっている。
カバ夫は自家製マスクを被ったままみつ夫を見張ろうとするので、目立つから脱げと指示を出す。そこへ、先ほど田舎娘を引き連れていったサングラス男が一人でウロウロしているのを見つけて、みつ夫は自ら「家出したんだけど」と話しかける。
「どこかへ連れて行ってよ」とグイグイ迫るみつ夫に、サングラス男の方が警戒心を示す。そしてこのタイミングでカバ夫が「人さらい、待て」と飛び込んでくるものだから、完全におとり捜査だとバレてしまう。
カバ夫とみつ夫は、男にパンチを食らってあっさりと気絶。そこへ、冒頭の駅の場面でみつ夫に近づいてきた怪しげなチンピラ風の男が合流してくる。二人は、人さらいコンビであったようだ。
どこかへと走っていくトラックのバンの中で、みつ夫とカバ夫は目を覚ます。荷台の中には、先にサングラス男に誘われていた田舎娘がのんびりフースカと眠っている。運転席では例の二人組が、今日の3人の獲物を高く売り飛ばそうなどと話している。
これで人さらいの証拠は十分揃った。あとはパーマンとなって悪者を退治するだけである。ところが、みつ夫がポケットを探っても、チューブ状のパーマンセットが見当たらない。
「ない」と慌てていると、カバ夫も財布が無くなっていることに気が付く。どうやら眠っている間にポケットを探られたようである。パーマンセットも取られてしまったのだろうか?
パーマンに変身できないし、バッジもないのでパーマン2号も呼べない。ひどく落ち込んでいると、カバ夫が「そのうちパーマンが助けに来てくれる」と元気づける。
が、そのパーマンの中身はここにいて、マントとマスクは手元にない。みつ夫は「パーマンは来ない」と言うと、カバ夫は必ず来ると断言する。さすが助手に名乗りを上げるだけあって、パーマンに対して絶大なる信用を置いているのである。
来る来ないで言い争いとなり、100万を賭けようということに。すると「100万」という言葉を聞いて、家出娘が目を覚ます。どうやらこの期に及んでも、いいとこへ連れて行ってくれていると思い込んでいるようである。
「僕らは攫われたんだ」と説明すると、「なぬ!それは本当か」と目の色を変え、「逃げるべ」と言って、ドカンと後部の扉を破壊して、移動中のトラックから飛び降りてしまう。
世間知らずの田舎女は、超人並みの怪力の持ち主であったようだ・・。
みつ夫とカバ夫も続けてトラックから飛び降りるが、田舎女と違って二人は普通の男の子であって、落ちた拍子にカバ夫は気絶し、みつ夫は足を挫いてしまう。
犯人たちは3人が逃げたことを知り、トラックを急転回させてみつ夫たちに迫ってくる。車が突っ込んでくるので、慌てふためくみつ夫。「おだずげ~~い」とジタバタすると、靴が脱げて中からパーマンセットが転がりだす。
なんとみつ夫は忘れていたが、公園でパーマンセットを脱いだ時に、用心して靴の中に隠しておいたのだ。
「これさえあれば」とパー着したパーマン。突っ込んでくるトラックをドカンと殴りつけると、あっと言う間に車体をバラバラにしてしまう。
これにて勝負あり。カバ夫の無事を確認すると、「パーマンはきっと来る、100万円賭けるぞ」と、ムニャムニャ寝言を口にしている。
これを聞いたパーマンは、「まずい!!」と言ってマスクを取って仕舞う。今回の件をパーマンの手柄にすると、100万円をカバ夫に請求されてしまう・・・。
そこへ警察が到着。みつ夫は「やっつけたのはカバ夫くんです」と、目を覚ましたカバ夫を指差す。いつの間にか、カバ夫に自家製のパーマンセットを装着させている。
「おれ、そんなことしたか?」と、疑問を呈するカバ夫であったが、「大活躍だったじゃないか!」とおだて、警察にも褒められると、「パーマンの助手として当然のことをしただけです」と得意満面。
さすがはカバ夫、都合よく記憶を書き換えることのできる思考回路をお持ちのようである。
本作では、ジャイアンやブタゴリラのように、ガキ大将キャラはヒーローとして活躍したい願望があることが再確認できた。
合わせて、カバ夫は100万円を賭けるほどにパーマンは約束を守る男だと信用を寄せていることも判明した。パーマンは強くてむかつく的な感情も普段は見せているが、基本的には助手になりたいほどに心から憧れていたのである。
