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これからは死ぬも生きるも一緒・・『うまそうな三人』/モジャ公を語らう②

子供の頃、正直「モジャ公」はそれほど得意ではなかった。絵柄やお話のトーンは他の藤子漫画と変わらないが、どこか心に影を落とす「怖さ」みたいなものをひしひしと感じていたからだ。

その感情はどこから来ているものなのだろうか、と考えた時に、作品内に漂う死の香りみたいなもののせいではないかと思い至った。作中に漂う死の香り、すなわち「死」そのものを、直接的・間接的に描写しているからに他ならない。

例えば、前回の記事で紹介した『地球人は怖いよ』では、以下のような「死」を発見することができる。

・留置所で怪物宇宙人に食べられそうになる
・警官に簡単に「死刑」を宣告される

こんなものは、「モジャ公」の世界においては序の口みたいなもの。今後のエピソードの中で、空夫たちは次々と死の恐怖にさらされることになる。これがどうにも、少年期の僕の心をザワザワさせたのではないかと思うのだ。


本稿では前作から続く第三エピソードとなる『うまそうな三人』を解読していくが、これもタイトルからしてヤバそうな「死」の雰囲気が出ている。そして扉絵も、本作での空夫たちの行く末が心配になるイラストとなっている。

この死を予感させるいわゆるブラックジョークが、「モジャ公」の魅力であり、子供の読者を恐怖させるものなのだと思う。


『うまそうな三人』「週刊ぼくらマガジン」1969年3~5号

扉絵では3人が「料理」になっている。ドンモシチュー、空夫ステーキ、モジャコロッケである。このページを見るだけで、本作の先行き不安感を強く印象付ける。

本作は前作ラストからの続きで、空夫がモジャ公とドンモに見直されて、二人から「兄貴と呼ばせてくれ」と言われるシーンから始まる。空夫も二人の言葉を聞いて、「初めて心の友に巡り合ったような気がするぜ」と感動する。

「これからは死ぬも生きるも一緒だ」と三人抱き合うのだが、このセリフでもさり気なく「死」という言葉が使われている。


・・・で、ドンモとモジャ公が急に懐いてきたのは、前作で空夫が警官から巻き上げたお金(411ボル)を狙っていたためだということが判明する。

3人が揉み合っていると、宇宙船が着陸態勢に入る。例によって行先は出鱈目にパンチカードを放り込んでいたのだが、改めてカードを見ると「カミカミ星」と書かれている。

旅慣れたモジャ公でも全く知らない星で、スター名鑑にも載っていない。すると、カードの左下に「危険地帯」を示すマークが表記されている。これは立ち入る者の生命を保証しない星だという。早くも死の予感がよぎる展開!


三人は本当は引き返したいのだが、各々強がって言い出せず、結局着陸してしまう。唯一の武器、レーザーガンを飲み込んだモジャ公が先頭で、カミカミ星に降り立つ三人。

深い霧の中を「生きるも死ぬも一緒だゾ」と三人で固まって、恐る恐る歩き出す。すると霧が晴れあがり、いつの間にか家の中に入っている。部屋には食べ物が置いてあり、宇宙食に飽きていた三人はそれをガッツいて完食してしまう。


するとそこへ一人の可愛らしい女の子が入ってくる。続けて女の子の両親も現れて、「他の星のお客様? 何年振りかしら」と大喜び。3人はすっかり大歓迎されるのであった。

空夫たちはとてもここが危険地帯とは思えないと感じ始めた時、家族の口から意外なことを切り出される。

「危険地帯ですから滅多に寄り付く人がいないのです。あなた方も明るいうちにお帰り下さい」

やはりここは危険地帯・・・。しかも暗くなるとどんなことになるのか・・・。かなり気味の悪い意味深発言である。


せっかく来たのでカミカミ星を見物していくことにする三人。女の子の案内で町へと繰り出す。父親は「日暮れまでにお帰しするんだよ」と念を押す。

町ではさらに大歓迎ムード。お土産を渡されたり、サインをねだられたりして、気分が良くなる空夫たち。けれどやはり「明るいうちに帰って下さい」と通行人にも釘を刺される。


そうこうしているうちに、日が暮れ始める。ロケットへと急ぐ三人。その途中で女の子に、「どうしてこの星から逃げないのか」と尋ねると、「逃げても無駄だ」と答える。

すると、よせば良いのに、「こんないい人たちを見捨てて、自分たちだけ逃げられるか」と、急に男気を見せてしまう空夫。モジャ公もドンモも賛同し、三人は帰るどころか、女の子の家へと戻ってきてしまう。

そして口々に「怪獣をやっちまえ」「冒険は飯より好き」「安心して任せとけ」と勇敢な言葉を発する三人。それを聞いた女の子の父親は、「何言ってんだ、命に関わるんだぞ、このおっちょこちょいども」と、激怒する。


すると、そこへ月の光が差し込む。「月が出た、もう駄目だわ」と肩を落とす女の子と父親。すると今度は、「うちへはいれ」と三人を家の中に入れて、鍵を渡し、「誰が来ても開けるな」と強く言い放つ。

「どうだろうねあの態度」と憤慨する空夫。のんびりと夕ご飯の心配をするモジャ公。ここまで散々ここはヤバいと指摘されているのに、なぜのんびりしているのか・・・。読んでてイライラしてくる。


大きな月が夜空に浮かぶ。女の子と父親が月の光を浴びると、徐々に姿を獣のように変えていく。そう、彼女たちは月の光を浴びると、オオカミになる人種なのであった。それは体ばかりか、心の底までも変身してしまうようである。

町ではオオカミ人たちが集まり、空夫たちが帰らなかったので、久しぶりのご馳走にありつけると盛り上がる。

そして部屋に閉じ籠っている空夫たちに、部屋の外から「そろそろ晩ご飯にしましょうよ」と声を掛ける。夕飯の心配をしていたモジャ公は「待ってました!」と大喜び。


ところが、「ご飯の前にお風呂に入って下さい」と言われ、少し不思議がる三人。その理由も「近ごろ食品衛生法がやかましいものですから」と訳がわからない。

浴室で温まって出てくると、空夫の服が無くなっている。外から、別の服を着て下さいと指示が出る。まず、ドロッとした液体を体に塗る。それはまるで地球のうどん粉のようだ。そして、続けて粉の上で転がるように言われる。

終わったら部屋から出ていらっしゃいと言われる。鍵を開けるなと言っていたはずだが、それは冗談だったと言う。家の外へ出ると誰もいない。そのまままっすぐ広場へ向かうよう、物陰から声を掛けられる。

広場の真ん中には巨大な鍋が設置され、中はゴボゴボと油が煮立っている。「これからどうするのー」と空夫が声を上げると、

「さあ、元気に中へ飛び込みましょう!!」

と声がかかる。声に釣られて飛び込もうとしてしまう三人だが、寸前で「冗談じゃない」と我に返る。するとオオカミ人間になった家族が姿を見せて、「せっかく穏やかに済まそうと思ったのに」と残念がる。


ここへきて、ようやく事態の深刻さに気がつく空夫たち。三人は逃げ出そうとするが、既に広場はオオカミたちに取り囲まれている。オオカミたちの目的が自分たちを食べることだと知って、ロボットのドンモだけは余裕の表情に変わる。

空夫とモジャ公は抵抗するが、ドンモは「ワタシハ見グルシクジタバタシナイ」と悠然とした態度。ところが、「たまには鉄分も取らないとな」とオオカミに睨まれ、正気を失う。「食われるの嫌だー」と見苦しいまでに激しく抵抗して、一時的にオオカミたちを遠ざけることに成功する。


オオカミから乱暴者だと呆れられる空夫たち。そこで最初の女の子が「話し合ってみるわ」と言って、空夫の元へと歩いて行く。「凶暴な相手でも真心で話せば・・」と、いつの間にか立場が逆転しているようである。

空夫たちはオオカミの姿をしている女の子であるとわかり、話し合いに応じることにする。周囲のオオカミは「暴力は避けたい。話し合いで食べられてくれれば」と噂し、あくまで空夫たちを食べるつもりのようだ。

女の子のオオカミは「月の光が狂わせる、カミカミ星人の宿命だ」と嘆く。同情する空夫だったが、すぐさま「可哀想だと思ったら食べさせて」と涎をこぼす。


・・・結局話し合いは妥結せず(当然)。モジャ公たちは網で捕らえられ、灼熱の油へと落とされそうになる。するとここで、空夫たちをどんな風に食べるかで論争が巻き起こってしまう。その後「のび太の魔界大冒険」でも描かれたネタである。

食べ方については民主主義のルールに則ってじっくり話し合うことになる。皆の食べ方案は以下。

・カツ
・さっぱりと水炊き
・塩焼き
・混ぜご飯
・オイル焼き
・みそおでん
・刺身

空夫たちは、この議論が長引けば、月が沈んで助かるかもしれないと希望を見出す。そして、論争に茶々を入れるべく、食べ方について自分たちも声を上げていく。

・カレーライス
・油炒め
・シチュー
・にぎりずし
・海苔巻き
・丸蒸し焼き
・赤だし味噌汁

調子に乗って発言していると、オオカミたちに気付かれてしまい、議論の邪魔はできなくなる。時間を稼いだつもりだったが、月は沈むどころか、ますます高く昇っていく。

そして食べ方の採決が始まるのだが、そこへお腹が空いたと一人の子供オオカミが泣き出す。困ったママのオオカミが「ほんのちょっぴりね」と言ってモジャ公たちのところへ子供を連れて行く。

そして「いただきまーす」と声を上げてガブリとモジャ公の頭にかぶりつく。たまらず「みなさーん、つまみ食いですよ~」と大声を出す空夫。ここの一コマは、あまりにシュールなので、何度見ても笑ってしまう。


そしてついにカツにされるべく、3人は縛られたまま宙釣りにさせられて、そのまま油の中へと投下される・・・。絶体絶命のピンチだが、何とここで奇跡が起こる。夜空に浮かぶ月が欠けていくのだ。

偶然にも月食が起こったのである。オオカミ人たちは元の人間の姿へと、変化していく。「何をしようとしてたのかしら」と正気を取り戻すカミカミ星人たち。

そして皆にお詫びされる空夫たち。「今のうちに帰りなさい」と家族の父親にせっつかれる。女の子も元の優しい人間に戻り、「本当に許して下さる?」と泣いて謝ってくる。

空夫は「もういいんです」と彼女を許す。そして「君たちのために何かしてあげられたらと思うよ」と、またまた男気っぽいセリフを吐くと、女の子がオオカミに姿を変え「じゃ、一口食べさせて」と牙を剥く。月食タイムは終わっていたようだ・・・。


慌ててロケットに乗り込み、カミカミ星から命からがら逃げだす空夫たち。今回は何とか脱出に成功したが、絶体絶命の大ピンチであった。そしてこれは、十分に避けられた事態である。安全さよりも無鉄砲さが先んじてしまう3人のリスクマネンジメントが全くできていないのである。

このような旅の姿勢では命はいくつあっても足りないが、実際にこの先の冒険の中で、幾度も死線を乗り越える事態に陥ってしまう。ずっと「死の香り」が漂う不穏な「モジャ公」なのである。


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