科学は正しく使うべし! ロケット服を着た少年の大活躍「ロケット五郎」/藤子F初期絵物語③

藤子F先生は、小学館の学年別学習誌「小学〇年生」をメインの作品発表の場にしていたイメージが強いが、まだ20代の駆け出し時代では、ライバル誌となる講談社の「たのしい〇年生」で数多くの作品を掲載していた。

1959年3月に小学館が「週刊少年サンデー」を創刊し、藤子不二雄の合作として「海の王子」が連載となり、これを契機に小学館に主戦場を移行していくことになる。

「たのしい〇年生」では、漫画だけではなく、絵物語というジャンルにも挑戦していた。作家が書いた文章にF先生が挿絵を付けていくスタイルだが、単なる添え物ではなく、メインと言っても良いほどに絵が重要な作品となっている。

「藤子・F・不二雄大全集」では、絵物語についても収録されているが、残念ながら、未収録のものも多い。是非とも追加発行して欲しいと願っているが、いつか叶う日が来るのだろうか・・・。


なお、これまで絵物語2作品について記事にしているので、一度チェックしていただけると幸いである。


今回取り上げる作品は「科学ぼうけん絵物語」と銘打たれた「ロケット五郎」である。

文章は藤子先生と数多くのタッグ作を執筆されている久米みのる先生が担当している。上の記事の「スーパー=キャッティ」と同じコンビということになる。

しかも、連載開始時期も全く同じで、掲載誌は「スーパー=キャッティ」が「たのしい三年生」で、「ロケット五郎」が「たのしい五年生」となる。

もう一本の「かいじん二十めんそう」もこの年の11月から「たのしい一年生」で連載が始まっているし、同じく「たのしい一年生」では「やじさんきたさん」(全5回)も同時期に連載となっている。

更に言えば「たのしい四年生」では、10月から藤子A先生の「わが名はXくん」が連載されている。この作品は「パーマン」の原点とも言われたりする作品なので、こちらもいずれは記事にしなくてはならない。

何はともあれ、ペンネームは二人とも「藤子不二雄」なので、この頃の「たのしい〇年生」は、藤子両先生の独壇場のような状況にあったと言えるだろう。


さらに余談となるが、「スーパー=キャッティ」と「ロケット五郎」の連載開始と全く同じタイミングで、「海の王子」の週刊連載がスタートしている。

A先生との完全合作で、最初は高垣葵さんの原作があったとはいえ、仕事量はそれまでとは比べ物にならない。この頃から藤子先生の多忙期が本格的に始まったと言えるように思う。


「ロケット五郎」
「たのしい五年生」1959年4月号~1960年3月号

まずは、作品の構成を整理する。本作は、全12回の連載で大きく5本のエピソードで構成されている。

『ロケット五郎、出動せよ』1959年4~6月号
『雪男をまもれ』1959年7~8月号
『悪魔のさいみん術団』1959年9~12月号
『ゴールデン=バッドマンとの戦い』1960年1月号
『きょうふの大車輪』1960年2~3月号

『ロケット五郎、出動せよ』は、1話目に『だんがん特急止まれ』(17頁)、2話目に『ブラッグ=ロボットの出現』(20頁)、3話目に『ダークムーン団の最期』(15頁)というタイトルが付けられている

『雪男をまもれ』は、1話目(7月号)が18頁だが、2話目(8月号)が別冊付録での掲載となり、64頁の大ボリュームとなっている。そのため、2話目の作中では「ロボット合戦」「五郎、大あばれ」「雪男のぎゃくしゅう」の3章で区切られている。


次に登場人物たちと、各話の敵について。

主人公の少年、糸山五郎は掲載誌の読者と同じ小学五年生。五年生だから五郎なのかと思ったりもするネーミング。父親の開発した高性能の「ロケット服」を着用し、悪と戦うことになる。キャッチコピー(?)は、「空を飛ぶときは流星のように早く、力は戦車より強い」

ちなみにロケット服を着なくても、小五にしてブルトーザーやトラックの運転ができるスーパー児童である。

父親の糸山博士は、日本のエジソンと呼ばれる著名な科学者で、これまで数十の画期的な発明をしているという。

五郎には妹がいて、名前は春子。初期の藤子作品に最も多い名前である。ベレー帽がトレードマークの可愛くて勇気もある少女で、同時期連載の海の王子の妹のチマを彷彿とさせる。

ただし、五郎と違って装備を与えられていないので、毎回のように敵に捕まって命の危険にさらされてしまう・・。


続けて、糸山博士が秘密の研究所で数年かけて開発した「ロケット服」の性能について。

ロケット服は、①マジック手ぶくろ、②ヘルメット、③特殊合金のよろい、④ロケットエンジン、⑤ブーツ を組み合わせたものとなっている。

初回では「マジック手ぶくろ」の性能について非常に細かい説明がある。両手の10本の指の先に様々な新兵器を仕込んであり、指を1本折り曲げると、ロケットエンジンと連携して空に飛びあがることができる。

1本曲げるだけでも時速300キロのスピードが出るが、2本、3本と折り曲げていくとスピードが増していき、10本全てを曲げると十数時間でアフリカに着く爆発的なスピードが出る。

そこまでくると飛行中は「絶対に息が吸えないだろうが、その点後の「パーマン」ではバッジを咥えるということでクリアになっている。


8月号の別冊付録では、ロケット服のしくみが図解化されている。マジック手ぶくろが、なぜか「マイテー手ぶくろ」と表記されているが、ここで10本の指の機能が明示されている。

それぞれ、「X光線」「磁力液」「衝撃波」「ゴムテープ」「煙幕」「冷凍光線」「協力接着剤」「ドリル」「高熱線」「トカゲ・ノミ・南京虫」という効果がある。どの指がどんな機能だったかを覚えるだけでも大変で、これを使いこなすのは一苦労であろう。

ヘルメットはヘッドライト、ラジオ、無線などが装備されていて、宇宙や潜水仕様にもなり、光から目を守るブラインド機能もある。いかにも子供たちが絶対に欲しくなる多機能装備である。

よろいには大きく「R」の文字が書かれているが、五郎(GORO)のRという意味だろうか。ちょっとこの辺りは不明である。


最後に各話の敵について簡単に。

『ロケット五郎、出動せよ』
ホフマン団長率いるダークムーン団
アフリカ地底都市を根城に、糸山博士の開発したAG金属を使ったまめ円盤で、世界征服を企む。

『雪男をまもれ』
ロボット博士率いるロボット団
マンモス=ロボット、巨大なノミ型ロボット、怪物型千手ロボット、モグラロボット、床屋ロボット、ドクター=ロボット、お掃除ロボット、荷作りロボット等々・・が登場。

『悪魔のさいみん術団』
団長率いるさいみん術団。

『ゴールデン=バッドマンとの戦い』
バッドマンスーツに身を包んだ、無数のゴールデン=バッドマンたち。スピード成長光線を武器に、人口島爆弾を奪おうと画策する。

『きょうふの大車輪』
イゴール博士。行く手をすべて破壊していく大車輪を使って、大阪城の地下に眠る豊臣家の埋蔵金を狙う。


以上、あまり中身に踏み込んだ作品解説をしてこなかったが、本作は全編を通じて、同じ発明品でも、良い発明と悪い発明がある、というメッセージがそこかしこに見られる。

例えば『ロケット五郎、出動せよ』では、ラストのまとめとして、「素晴らしい頭脳を持っていても、それを正しいことに使わなければ何もならない」と糸山博士は語る。

『悪魔のさいみん術団』では、世界各国の首脳を操って、核戦争を引き起こそうと計画するのだが、核兵器は原子力の平和利用と真逆の科学の使い方を指し示すものだ。

『ゴールデン=バッドマンとの戦い』での人口島を作り出す爆弾や、『きょうふの大車輪』での破壊力のある車輪も、それぞれ武器としての使用を五郎たちが食い止めるが、最後には途上国の平和的開発に使用される。

本作は「科学ぼうけん物語」を標榜する作品だが、科学は毒にも薬にもなることを、懇切丁寧に読者たちに伝えているのだ。

作者である久米みのる先生の主張なのだろうが、その後の藤子先生のキャリアを考えた時に、いかにも藤子的な科学の知見が組み込まれていると思う。


そして本作での「ロケット服」のアイディアは、次なる絵物語の新作「ロケット=ボーイ」へと引き継がれることになる。近く記事にしたいと考えているので、どうぞお楽しみに・・・。



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