価値観の異なる人との対話
価値観の異なる人と、どのように対話をしていくべきか。
プライベートで価値観に異なる人と出くわした時には、わりと気楽に、そういう人たちとは交わらなければいいと考えることができる。
つまり、対話をするまでもない、ということだ。
価値観が異なる人と、対話によって考え方をすり寄せていくのは時間がかかるし、そんな時間は短い人生において大変に勿体ない。
ただ、問題なのが、価値観の異なる人と、一緒に仕事をしなくてはならない場合である。
なるべく同じ価値観を共有して、ツーカーで仕事ができたら良いのだが、実際はそんな風にはいかない。同じ日本人同士でも日本語が通じないケースがあるし、相手の考え(方)がさっぱり掴めないこともある。
年齢とか性別とか国籍とか、そういう見た目の違いではなく、根本的な思想が異なる人たちと、私たちは一緒に暮らしているのである。
仕事では、そういう根本思想が異なる人たちと、共にモノを作り上げたり、売ったりしなくはならない。
各々が各々の仕事をしていればいい職場もあるだろうが、たいていの物事はチームだったり、コンビだったりで動かすことになる。
つまり、仕事をする上では、価値観の異なる人と、根気よく対話をしながら、何とか折り合いをつけていくしかないのだ。
では、どのようにして対話を進めていけば良いのだろうか。
まず一つは、仕事の目的を共有することだ。その際、きちんと言語化することが求められる。私たちは何に取り組んで、どんな結果を出すべきなのか。なるべく具体性のある仕事の到達地点を設定するべきだろう。
この時、互いに都合の良いような、玉虫色の目的にしてはならない。優先順位なども含めて、かっちりと目的を定める必要がある。
例えば、何かモノを作る時に、すぐに利益が上げたいのか、将来への布石としたいのか、方針を定めることが肝要だ。
短期的な利益を求めるのならば、現在流行しているものの二番煎じを考えてみたり、なるべくコストがかからない方法を模索したり、といった方向に頭が使われる。
将来の利益のタネにしたいのであれば、実験的な素材を使ってみたり、赤字覚悟でひとまず市場に出して反応をみたりする、という方法論が取られていくだろう。
最初の方針を曖昧にしたままだと、価値観の合わない人同士では、まるで違う考え方をしてしまう。
ある人は利益度外視の完成度の高いモノ作りを指向するかもしれないし、ある人は安かろう悪かろうのモノを大量に作る方法を考えてしまうかもしれない。
で、お互いに「あいつはモノ作りが何なのかわかってない」などと陰口を叩くことになり、同じ価値観を共有する同士で固まって、足の引っ張り合いを始めるのだ。
ポイントとしては、価値観が異なること自体を争点化させてはならないということである。
他には、個々の価値観を超えた何かを掲げるという手段がある。
例えば、組織のトップの思想を最優先し、その思想に基づく事業が成立しやすい環境つくりを徹底するというやり方である。
価値観が異なる同士、いったん自分たちの持つ価値観を脇に置いて、トップの価値観を最優先するということになる、
ただし、ここでの注意点は、トップの判断がある種の合議制である場合に、現場に下りてくる価値観が揺らぐことがあるということだ。
特にツートップを標榜するような組織では、トップ同士の価値観のすり合わせができていなかったりすると、組織全体が脆弱になってしまう。
そして、組織で言えば、対話は上司から部下へ積極的に働きかけなくてはならない。対話の一歩目は、相手の価値観をきちんと見定めることにある。これは、経験豊かな者(上司)の見せ場とも言える。
もちろん、部下の話を聞くばかりではなく、合いの手を打つようにして、自分の価値観も標榜しておくべきだ。相手の価値観に同調することが重要ではなくて、考え方は色々あるよね、ということをまずは認識し合うことだ。
あと、付け加えるならば、「急いては事を仕損じる」ということ肝に銘じておきたい。対話は一日してならずで、一回話し合ったくらいでは価値観のすり合わせなどできるわけがない。一回目の対話が破綻したとしても、諦めてはならない。
粘り強く根気強く。多少無駄とも思える時間を費やして、初めて価値観の壁が解消される。
仕事人であるならば、対話することを諦めてはならないし、対話ができる人間こそが、その人の人間力をアップさせるのだと思うのである。
