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【映画】ダニエル・シュミット『季節のはざまで』

取り壊しが決まったスイスの古いホテルを訪れる中年男性。ここは男性の祖父母が経営し、少年時代を過ごした場所だった。

ホテルをめぐるうちに幼少期の思い出が溢れ出す。どこからともなく漫画ミッキーマウスの最新号を取り出す売店の売り子、音楽家夫妻が作り出すうっとりするようなサロンの雰囲気、何度聞いても飽きない祖母のお話し、怪しげな奇術師による大人のための夜のショー。

来年は別の場所に行こうと言いながらも毎年やってくる親子や、隙を見てテニスコーチと浮気をする「世界一の美女」、南米からやってくるややヒステリックな妻とその家族、客たちは少し変わったところのあるごく普通の上流階級の人々である。この映画の時代設定はおそらく1930年代。さながら第二次世界大戦前のスイスの保養地を舞台にした「失われたときを求めて」である。

ホテルの出来事全てが少年の好奇心の対象であり、従業員も客もみな少年の思い出の中ではあたたかい。父親を亡くした主人公が祖母に「天国ってどんなところ?」とたずねると、祖母は「ここよりちょっと広いけれど、ここみたいな所だよ」と答える。少年にとってはホテルはこの世の天国のような場所だったのだろう。

上階の部屋で探していたミッキーマウスの漫画を見つけた主人公が窓を開けると、そこにはスイスには存在しないはずの海が見える。彼が見たのはサロンの歌手が歌っていたカプリの海なのだろうか。思い出は幻想かもしれないが、美しくかけがえのないものであることは、紛れのない真実である。


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