Law School Ranking ver.2026

昨年度の記事はこちら

毎年恒例のU.S. Newsによるロースクールランキング2026ver.が発表されました。記事へのリンクはこちら

20位までは以下の通りとなっています。(括弧内は、2025からの変動)

1. Stanford(変動無し)
2. Chicago(+1)
2. Yale(-1)
4. Pennsylvania (Carey)(+1)
4. Virginia(変動無し)
6. Harvard(変動無し)
7. Duke(-1)
7. NYU(+1)
9.  Columbia(+1)
9.  Northwestern(+1)
9. Michigan(-1)
12. Vanderbilt(+2)
13. Cornell(+5)
13. UCLA(-1)
13. St. Louis(+1)
16. Berkeley(-3)
16. Texas Austin(-2)
18. Georgetown(-4)
18. North Carolina(変動無し)
20. Boston(+5)

主要な変化点

Yaleが首位陥落

U.S. Newsによるロースクールランキングがスタートした1990年以来、36年間1位でだったYaleがついに首位の座をStanfordに明け渡しました。2023年から2025年までは、Stanfordと首位タイでしたが、ついにランキングが逆転した形です。

BerkeleyがT14圏外へ

ロースクールによる情報提供ボイコットを受けたU.S. Newsによるランキング算出式の変更以来、少しずつランキングを落としていたBerkeleyですが、今年は初めて16位とT14圏外になりました。

CornellがT14復活

CornellもBerkeleyと同じく順位を落としていましたが、昨年度一気に順位を落として(14→18)T14圏外になっていたところ、今年はT14へ返り咲く結果となりました。

ランキング変動をもたらした要因は何か

このランキングについては、JD向けでLLMには関係ないですとか、もはやアメリカ人は誰も気にしていないとかいうコメントも見られるところですが、そもそもなぜこういった変動が発生しているのか、を見てみたいと思います。

評価クライテリアの変化

(詳細は下に記載しますが)U.S. Newsはロースクールにデータ提供ボイコットを受けて、ランキング算出の根拠となる基準を変更しています。
 今回のYaleとStanfordの入れ替わりについては、理由として以下の点が指摘されています。
(1)就職率の差
 指標変更の大きな変化として、就職率の指標があります。本当にわずかな差(Yale:96.2%、Stanford:98.4%)ですが、トップ校ゆえにこのわずかな差が順位差をもたらしたことが指摘されています。(参照元はこちら

(2)司法試験合格率に対する地理的補正
 もう1つの点は、どの州の司法試験に合格したかです。U.S. Newsのランキングは、合格率が低い州の司法試験をパスした場合、より高い点数が得られるように設計されています。両校とも合格率は95%を超える高い水準ですが、立地的にYaleはNew York州の受験が多いのに対して、Stanfordは全米でも合格率が低いCalifornia州での受験が多めのため、補正係数としてStanfordに有利に作用したことが指摘されています。(参照元はこちら

新旧評価クライテリアの比較

ボイコット前(〜2022年)のいわゆる旧形式と(移行期の2023年を除く)2024年以降の現行形式を比較すると以下の変化が見られます。
 現行形式の方法はこちら
 旧形式は、一次ソースが公開されていないようなので、Top-Law-Schools.comを参照しています。※日本からだとアクセスができないかもしれません。

1.アウトカム系
 ロースクールがデータを提供してくれない結果、U.S. Newsは、公開されているデータのみを用いる形に方向を転換しました。その結果として、以下のようにアウトカム系の比重が非常に高くなっています。

1)就職率(卒業10ヶ月後) 14%    → 33%
2)卒業時就職率      4%    → 廃止
3)初回司法試験合格率   2-3%   → 18%
4)最終司法試験合格率   無し     → 7%
5)アウトカム系合計    約20% → 58%

2. レピュテーション
 アウトカム系とは異なり、評判といったある意味主観的な評価基準の比重は減少しています。

1) 学術評価           25%  → 12.5%
2) 実務家(弁護士・裁判官)評価 15%   → 12.5%
3) レピュテーション合計     40%   → 25%

3. 入学者
 各ロースクールに入学した学生の入学時の指標も比重が減少しています。

1) LSAT/GRE(中央値) 11.25%  → 5%
2) GPA(中央値)     8.75%   →   4%
3) 合格率         2.5%   → 1%
4) 入学者関連合計      22.5%   → 10%

4. リソース
 ロースクールの学生に対するリソースですね。ロースクールからの情報提供が無くなった影響からか比重が減少しています。

1) 1人あたりの教育費・支出 9.75%   → 廃止
2) 財政援助(奨学金)      1.5%   → 廃止
3) 学生・教員比率       3%   → 5%
4) 図書館のリソース      0.75-1%   → 2%
5) リソース合計        約15%   → 7%

廃止された指標の意味合い

旧形式で9.75%を占めていた学生1人あたりの支出については、学校側によるデータ提供であったため、廃止せざるを得なかった指標です。ただ、この指標については、支出が多ければ教育の質が高い、ということが当然の前提になってしまうことや、学費値上げを正当化してしまう、という観点も指摘されていたようです。

就職率指標の精緻化

 旧来の形式は、単純に10ヶ月後に就職してさえいれば良いという指標だったようですが、現行形式では、フルタイムかどうか、長期か短期か、学校資金かどうか、などで重み付けが変化するように設計されており、どんな仕事に就いたのか、まで評価されるようになったようです。

ランキング変動から見えたこと

T14とは、長年上位14位に同じロースクールがランクインし続けていたことからついた名称であり、T14とそれ以外は別の世界という暗黙のコンセンサスがあったように思います。T14出身の方にとっては、その中での変動はあったにしてもある種の安心材料のように使われていたのかもしれません。

エコチェンバーだった?

旧方式では、いわゆるピアアセスメント(評判系)が全体の40%を占めていました。評判による評価になると、結局のところ過去のランキングを参照しながら、または自分がよく知っている学校を評価する構造になりやすいでしょうから、結局一度固定化された評価が次の評価を生み出し、そのままぐるぐると繰り返されるという非常に閉じたランキングになっていた面は否めないと思います。

アウトカムの重視

Yaleがデータ提供の離脱を宣言した理由は、公共サービスや多様性を軽視していることでした。その際、Yaleは、司法試験合格率や就職率を重視すべきだと表明(こちらこちら)し、結果として、それらのアウトカムを重視した指標にシフトしました。ロースクール自身がある意味それらをベースとして市場価値は測られるべきと主張したのに対応した結果ですが、皮肉にもYaleやHarvardにとっては、自分達が閉じた世界での評価に助けられていた側面を浮き彫りにしてしまったということがあるのかもしれません。

ランキングはどこへ行くのか

 新たな指標体系への移行(評判重視ではなく、アウトカム重視)によって、ランキングはより柔軟なものになった一方で、少しの指標変化が順位変動を生む形にもなりました。ある意味はこれは当然で、指標をより厳密にしようとすればするほど、それを敏感に汲み取ってしまうということだと思います。その意味で、ランキングには、まだまだ実験的な要素もある印象です。
 日本のリーガルマーケットにも同じような構造があるかは興味深いですが、特定のロースクールや大学出身が法曹コミュニティでの各学校の評判を再生産していく側面はあるかもしれません。

いいなと思ったら応援しよう!