ハリウッド映画経験から考えるCGが上達するための学習ガイド: CG全般〜コンポジター特化まで
※この記事は有料記事ですが、無料部分だけでもCG制作全般に通じる学習の本質を読んでいただけます。コンポジター以外の方も、ぜひ無料部分だけでも目を通してみてください。
「CG合成、うまくなるには、どうしたらいい?」
「あの人、どうやって上手くなったんだろう」
「あの上手い人なら、このショットどうするだろう……」
これはコンポジットを学び始めた頃、実際に私が考えてきたことです。
(特に、煮詰まってた時。)
「すごい人たちの世界」だと思っていた
ハリウッド映画に関わることを目指していた当時の私にとって、ILMやDNEG、MPCといった世界トップクラスのVFXスタジオで働くCGアーティストは、「なんだかすごい人たち」でした。きっと特別な才能があって、選ばれた人たちが集まってるんだと、思っていました。
その後、ご縁があって実際に海外のVFXスタジオで働き、最終的にはILMでもコンポジターとして作品に携わることになりました。
もちろん、周りには優秀な人たちがたくさんいました。しかし、実際に一緒に働いてみると、私が想像していた「すごい世界」とは少し違いました。
彼らに共通していたのは、
好奇心と努力を持ち続け、自らスキルアップをし続けること。
ただそれだけでした。しかし、それをしっかりやっている人たちばかりでした。特別な才能や、生まれつきのセンスがあるわけではなく、地道な積み重ねを止めない人たちでした。
驚くようなヒミツはありません。「それは頭ではわかるよ・・」となるかもしれません。でも、振り返ると結局、結論はそこでした。
CG学習の本質は、「継続的な軌道修正」
最近、「The Slight Edge」という本をオーディオブックで聞きました。(残念ながら日本語翻訳版は絶版のようなので、英語版のリンクを添付します)
これは私が14年間見てきたハリウッドVFX業界の光景、そして自分自身の経験そのものであり、CGを学ぶ上でもそのまま当てはまります。
本「The Slight Edge」のポイントをご紹介:
・良い習慣は単体では何も変わらないように見えても複利的に効いてくること
・その効果はすぐに見えないからこそ多くの人が結果の前に諦めてしまうこと。
・そこから導かれる「continuous course correction (継続的な軌道修正)」:進み続けながら、常に軌道を微調整し、何にフォーカスすべきかを見極め続けることこそが本質だ、という考え方
この本を読んだことで、これまで経験として感じてきたことが、自分の中でストンと腑に落ちてつながりました。
そしてこの感覚は、当時の私と同じように「どうすれば上手くなれるんだろう」と悩んでいる人にこそ、伝える価値があるんじゃないかと思いました。
この記事について
今回は、私が14年間、ハリウッド映画のコンポジターとして学び続ける中で見えてきた「学び方」について整理してみようと思います。
無料部分では、コンポジターに限らず、モデラー、アニメーター、ライティング、FX、CGジェネラリストなど、あらゆるCGクリエイターに共通する「上達するための考え方」をお話しします。
そして有料部分では、コンポジター(+絵作りをする人)にテーマを絞り、「どんな視点を持って学べばよいのか」を、私自身が実践してきた方法とともに詳しく解説します。あわせて、私自身が役立ったおすすめの教材や学習用マテリアルもたっぷり紹介します!
この記事が、「何から勉強すればいいかわからない」「どうすればもっと上達できるのか悩んでいる」という方にとって、学習の道筋を考えるきっかけになれば幸いです。
CG学習5つのポイント
ここからは、この本質を具体的な5つの行動に分解して紹介します。コンポジターに限らず、CGに関わるすべての人に共通する話です。
①勉強し続ける
まず大前提として、学ぶことをやめないこと。
ただしここで大事なのは、「何を」学ぶかです。
ソフトの新機能や操作方法は覚えて損はありませんが、本当に効いてくるのは、色・光・物理現象・構図・演出などといった、ツールが変わっても普遍で本質的な知識です。
例えばコンポジターであれば、写真を学ぶことは特におすすめです。CGソフトの中だけで完結して勉強していると意外と気づきにくいのですが、光がどう物体に当たり、どう反射し、レンズを通してどう写るのかなどという理屈は普遍的な知識で、リアリズムへの理解に直結します。露出、被写界深度、色温度、構図の基本原則を学ぶだけで、ライティングやコンポジットで「なぜそう見えるのか」の解像度がぐっと上がります。
経験上の個人的な感覚では、学習の比重は圧倒的にこうした本質的な知識に置き、技術的な部分は基礎をしっかりかためる。ソフトの最新技術や新しいツールはまずは把握程度、必要になったときに深掘り、というスタンスで良いかなと思います。
②手を動かし続ける
知識は、手を動かし、使ってみて初めて自分のものになります。
インプットだけを続けていても、実際に手を動かして初めて「分かったつもり」と「本当に分かっている」の差が見えてきます。
チュートリアルから学習するなら、読む・見るだけでは終わらず、絶対に実際に自分でソフトをさわる。
あえてそこから逸脱して実験や自主表現も試してみる。
個人制作をすれば、評価を気にせず自由に実験できる貴重な場となります。
また、映画のワンシーンや、コンセプトアートで「かっこいい」「素敵だ」と感じた時、「見る」だけで終わらず、ラフでも良いので模写をしてみるのもお勧めです。なぜかっこいいと感じるのか、模写して初めて解像度が上がる部分があります。

③フィードバックを受け続ける
これが「軌道修正」そのものです。自分ひとりで作り続けていると、自分では気づけないズレがどうしても生まれます。そのズレを教えてくれるのが、他者からのフィードバックです。
現場にいる方は、常日頃上司やクライアントからフィードバックを受け続けていると思いますが、独学や学生さんだとなかなか難しいですよね。
しかし、ポイントは、フィードバックは「もらうもの」ではなく「もらいに行くもの」だということです。SNSやDiscordコミュニティ、ポートフォリオレビューの場など、意図的にフィードバックをもらえる環境に自分を置きに行く姿勢が重要です。
Xで私が拡散しているハッシュタグ #CG添削希望 もぜひ活用してください。
【拡散希望】 CG制作をしている皆さん、このハッシュタグで繋がりませんか? 私もチェックします!#CG添削希望 作品にアドバイスが欲しいとき#CG勉強日記 自分の勉強記録+孤独感を感じず、仲間の頑張りを見たいとき (2D/3D/実写合成などジャンル不問!)
— shiz (@shi_z67) January 6, 2026
タグを作った理由… pic.twitter.com/vNQDnKHaJy
④最新技術に注目しすぎない
新しいツールや新しいAI技術が出るたびに、話題になり、追いかけたくなる気持ちはよく分かります。ただし、これは無益ではないものの、最重要でもありません。特に初心者のうちは、最新技術を追いかけることよりも、基礎力を磨くこと、そして「なぜそうなるのか」という本質を考えるスキルを磨くことにフォーカスすべきです。
AIツールの使い方をマスターしても、「良い映像とは何か」がわかっていないと、良いAI映像は作れないですよね。
目の前で話題になっているものに飛びつくのではなく、今の自分の実力に本当に必要なものは何かを、都度見極める必要があります。
⑤英語の情報を避けない
CGに関する良質な情報は、英語のものが多いのが現実です。日本語がダメ、ということでなく、圧倒的な物量差です。
私がかなりお世話になった学習マテリアルは大部分が英語です。
なぜなら、それ以外無かったからです。
英語情報といっても、英語が得意である必要はまったくありません。
今はAI翻訳という強力な武器があります。
紙の本はスマホで撮影すれば自動文字認識→翻訳してくれます。
動画コンテンツはいくらでも自動翻訳できる時代です。自動でまとめもやってくれて、至れり尽くせり。これを活用しない手はありません。
大事なのは英語力そのものではなく、情報源を自分から狭めない姿勢です。
近道はない
ここまでで共通しているのは、「学び続ける」という前提です。
正直に言うと、「ずっと学び続けるなんて無理」「英語の情報は見るだけで拒否反応が出る」と感じてしまう場合、その考え方自体が、CG/VFXアーティストという仕事にはあまり向いていません。
技術もツールも情報も日々更新され続けるこの業界では、「学び続けること」は選択肢ではなく仕事そのものの一部だからです。これは才能の話ではなく、この前提を拒否した瞬間に、求められる条件そのものから外れてしまう、というだけの話です。
もう一つ。「このソフトを覚えれば〇〇になれますか?」「このチュートリアルをやれば⚪︎⚪︎できるようになれますか?」「Deepコンポジット、使った方がいいですか?」「おすすめプラグインは」・・・こうした趣旨の質問もよく見かけますが、残念ながらそんな単純な話ではありません。
特定のソフトやチュートリアル、あるいは特定の技術は、数ある学びの要素の一つでしかなく、それ単体が答えになることはないからです。もしそんな近道があるなら、とっくにみんながやっています。
簡単では無いという事実と折り合いをつけられるかどうかが、この仕事を目指せるか、そして続けられるかの分かれ目になります。
ここから先は、コンポジター特化の話
ここまでは、CG制作に関わるすべての人に共通する、学習の本質的な姿勢でした。
とはいえ、「地道な積み重ね」だけでは、何を積み重ねればいいか分かりませんよね。
ここから、具体的にコンポジターとして何を学習すれば良いか、私の経験を元にまとめました。
無料部分まとめ
CG学習、5つのポイント
①勉強し続ける—「何を」学ぶかが重要。ツールが変わっても腐らない本質的な知識に時間を投資する
②手を動かし続ける—インプットだけでなく、実際に手を動かして初めて自分のものになる
③フィードバックを受け続ける—フィードバックは「もらうもの」ではなく「もらいに行くもの」
④最新技術に注目しすぎない—基礎力を磨くことに軸足を置き、最新技術は把握する程度で十分
⑤英語の情報を避けない—情報源を自分から狭めない姿勢
有料部分でわかること
- コンポジット(CG/実写合成)に特化した、学習要素のカテゴリ分け
- 各カテゴリに対し、自信を持っておすすめする学習マテリアル・学習法
学び方は、直線ではなく「点」の集まり
キャリアを振り返ると、私は段階を踏んで一つずつスキルを習得してきたわけではありませんでした。
画像処理を勉強しながら、
かっこいい作品の分析をしながら、
Behind the Scenesを見漁る。
当時は、それぞれが将来どう役立つのかなんて考えていませんでした。
ただ、「面白そう」「役に立ちそう」だと思ったことに手を伸ばしていただけです。
でも振り返ると、それらはすべて「点」でした。
写真を勉強したことがライティングの理解につながり、画像処理の知識がグレーディングにつながり、人間の知覚を学んだことが画作りにつながる。
当時は無関係に見えていた知識同士が、あとから仕事の中で結び付いていったのです。
だから、このあと紹介する学習カテゴリも、「①を終えたら②」というロードマップではありません。
興味を持ったところから手を伸ばしてください。
点は、あとから線になります。
では具体的に何を学ぶのか。
ここから先では、その「点」をカテゴリごとに紹介します。
補足
・ここからは、「画像処理」「グレーディング」「画の見方」といった本質的な学習に特化しており、Nuke、After Effectsなど特定ソフトウェアの操作方法には触れていません。ソフトの使い方は、公式ドキュメントやチュートリアルで十分学べますし、何より前述の通り、ソフトの操作知識はすぐに陳腐化してしまうからです。
・私が実際に使った学習マテリアルを厳選して紹介しますので、必然的に英語情報が多くなります。本など、日本語翻訳版があるものはできるだけ翻訳版を紹介します。
・おすすめ教材紹介は、私が今まで何度もXやnote別記事でご紹介してきたものが含まれています。本記事では、それらを含め、コンポジター用保存版としてあらゆる角度をカバーするよう編集しています。
本記事「学び方」と「コンポジット思考法」記事のセット販売を始めました。
既に片方をお持ちの方は、単品購入の方がお得です。詳しくは下記リンクをご覧ください。
著者の経歴(shizプロフィール)
高校生: 映画メイキングを観て「ハリウッド映画に関わる仕事がしたい」と目標設定。
専門学校卒: 国内のCG専門学校を卒業後、東京のスタジオへ新卒就職。
留学: 海外生活の経験を得るため、1年間オーストラリアの専門学校へ留学。
帰国後: 日本へ帰国し、国内のTV局やCGアニメーション会社に勤務。
渡英: イギリスのワーキングホリデー(YMS)に当選し渡英。現地で The Mill や MPC とコンポジターとして映画・コマーシャル・TV案件契約。
渡カナダ: カナダのMPCへ移籍し、映画案件に深く従事。
再びイギリスへ: イギリスへ戻り、DNEG、MPC Episodic、ILM で映画・TVシリーズ案件のシニアコンポジター/リードコンポジターとして携わり、現在に至る。
最初に一つだけ。「何をするか」より「なぜするか」を考える
ここから先は

コンポジット「学習ガイド」「思考法」2記事セット
「どう学ぶか → 実制作でどう考えるか」をまとめて学びたい方へ。 コンポジット上達に必要な「学習ガイド」と「思考法」をまとめた2記事セット…
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