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ちゃんみなとHANAは何に対して「勝とうとしている」のか

ちょっとすごいことになりつつある。

オーディション「No No Girls」がひとつの現象になっていったことも、HANAのデビューからの躍進も見ていたけれど、ちゃんみなの「SAD SONG」のここまでのチャートアクションは正直予想してなかった。

2019年にリリースされたこの曲が急浮上したきっかけは5月16日に公開された「THE FIRST TAKE」でのパフォーマンス。オーディション「No No Girls」のファイナリスト10名と歌った動画が大きな反響を集め、公開10日ほどで再生回数は1000万回を突破。その勢いはストリーミングサービスに飛び火して、Apple Musicのチャートで2週連続1位になるなど再生回数も急増。反響を受けて6月2日には新バージョンの「SAD SONG - From THE FIRST TAKE」もリリースされた。

その背景にはオーディションの最終審査「No No Girls THE FINAL」の最後、合格者発表の後にファイナリスト10名でこの曲を歌ったということもある。

もちろんそういう物語性はあるのだけれど、ここに来て、「No No Girls」を熱心に追っていた人だけじゃなく、その外側に楽曲が届き始めている感がある。

端的に、ここのところのストリーミングチャートはずっとMrs.GREEN APPLEが席巻しているわけなのだけれど、じゃあミセスの牙城を揺るがすのは誰か?というとHANAとBE:FIRSTのBMSG勢、そしてちゃんみなということになってきている。

今年のMUSIC AWARDS JAPANでのちゃんみなのパフォーマンスも度肝を抜くようなものだったし(YouTubeにフルで公開されていないのがもったいない!)、いよいよ日本の音楽シーンのメインストリームでの存在感を増してきた感がある。

そして、それがここまで受け入れられているのも、やっぱりちゃんみなとHANAが、時代の変化の中で求められていた新しい価値観の象徴だったからだったと思うのだよな。

僕はもともとリアリティーショーには全く興味がないたちで、サバイバルオーディション番組にも全然入れ込めないタイプ。なので「PRODUCE 101 JAPAN」とか「timelesz project」とかいろんなオーディション企画が人気なのは知ってるけど、正直、自分にとってはその話題性は「圏外」だと思ってここ数年を過ごしている。「No No Girls」自体もぶっちゃけ全然追いかけてなかった。なので「ノノガが他のオーディション番組に比べてどうのこうの〜」みたいなことは率直に言うとよく分からない。

もちろんオーディション番組発の”人気”とか”現象”については、自分なりにいろいろ考えたり書いたりはすることもあるけど、どうしても、その熱量に真っ向からコミットしている人に比べると、外側からのロジックになるのは否めない。

僕にとって大事なのは、やっぱり、グループをプロデュースする側にどんなビジョンがあるのか、そこに新しい価値観を打ち出す意志があるかどうか。そして何より楽曲自体のクリエイティブなんだと思う。BE:FIRSTがデビューした時もそうだった。やっぱりSKY-HIという人が掲げるビジョンの大きさと明晰さ、あとは曲の良さだった。HANAもそう。「ROSE」という曲が出て、それがスマッシュヒットして、そこから。

『CUT』5月号に載ってたインタビューがとてもよかった。


「この先5年分のロードマップをメンバーと共有している」という話をしたあとに、そこについて問われた時の発言。

「我々の持つルーツだったり文化みたいなものを大事にしながら、ちゃんと正当な道で勝っていくということですね。『清く正しく美しく』というスローガンが、私たちのロードマップにおいては重要かなと思います。私は力業が嫌いなので」
「力業って、この世の中に溢れ返ってるんですよね。私も何回も目撃してますし、私自身に力業がかかったことも結構あるので、そういうところには勝っていきたいと思ってます。正直者が馬鹿を観ることなく、頑張った人が報われるべきですし、だからこそ、ちゃんと頑張らなきゃいけないっていうのもあるし。だから私たちも身を引き締めて、ちゃんとしていかないとなと思ってます」

『CUT』5月号 ちゃんみなインタビュー

HANAとちゃんみなが「勝つ」というのはどういうことか。何に勝とうとしているのか。

どこでライブをやるとか、何人動員するとか、そういうわかりやすい数字の目標もあるだろうけれど、もうちょっと大きなものだと思う。

ちゃんみなは「力業」という言葉で表現している。

言ってしまえば、政治力とか資本力とか、そういう「力」のことだろうと思う。「世の中、そういうものだから」と誰かに言い含めるような時に無意識のうちに従ってしまっている「力」。

その無意識は、ひとつの(諦念混じりの)価値観につながっている。自分自身の大事なものを「売り渡す」ことが「売れる」ことと同義である、というような世界観だ。

特にアイドルやガールズグループを巡る領域には根強くこれがあるように思う。何かに媚びたり、何かにおもねったり、何かに奉仕したり、自分たちが「消費される」存在であることを過剰に受け入れるマインドが根底に流れているというか。

その価値観に異議を申し立て、そうじゃない道での成功を示すことが「勝つ」ということなのではないかと思う。

SKY-HIがそのことをきちんと言語化していた。

アーティストとファンは相互関係で成り立っているものだと思います。アーティストがいるからファンがいるし、ファンがいるからアーティストが成り立つ。だから僕もファンにはものすごく感謝もリスペクトもしているんですが、ファンにおもねる形でアーティストが傷ついたり、あるべき姿を変えてしまうことは避けなくてはなりません。

よくも悪くもエンタメの世界では「売れる」ことが正義である。

数字としての結果を出したからこそ、SKY-HIとBMSGの掲げる「才能を殺さないために」というコンセプトが単なる綺麗事ではなく実効性を持って浸透し始めているようなところもある。

そういう意味でもHANAのブレイクとちゃんみなの躍進は、ガールズグループの価値観を巡るひとつのターニングポイントになるかもしれないという予感がある。


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