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riyu
曼珠沙華は恋をする ②
昔村に乙音という娘がいた。みずみずしく大らかで気立も良いのだがなにぶんマイペース、いったんヘソを曲げると手がつけられないのが欠点だった。口汚く相手を罵り大暴れして家屋や作物を破壊した。みなが困ったもんだと悩んでいたら、通りすがりの若い坊さんいわく
「誰かが嫁に貰ってやるのです。家族ができればきっとその人も大人しくなりますよ」
いったい誰が乙音と所帯をもつのだろうか? 村人たちは思案した。誰もそんな役は御免だったのだ。
「なあ、坊さんよ。言い出しっぺのアンタがアイツと一緒になれや」
「そうだそうだ!」
「わかりました」
彼はくるりと皆に背を向け乙音の家に向かった。その後彼を見たものはいない。乙音が暴れることもなかったそうな。これが村に伝わる伝説だ。村には二人を記念した墓標が残っているという。
実際のところ何があったのか?
僧のプロポーズに乙音は
「オラじつは男なんだ。太郎という名だ。嫁にはなれん」すると僧は
「二度とここで暴れるなよ」と法力で乙音を村から遠ざけた。白い花がそれを見ていた。
「あんた勇気あるね。あれと所帯持とうなんて。いっそ売れ残りのアタシでどう? アタシ花だけどどんなにキレイでも他所もんだしおまけに毒があるせいで、嫌われ者なのさ。おかしいだろ、食うわけでもないのに」
僧は答えた。
「私は人の役に立ちたいのだ。私がキミと一緒になるのはいいことなのか」
「たぶんね」
言うなり花は無数のオシベで僧を絡めとった。それ以来秋になると村には血のような花が一面に咲き誇るようになったという。
「こんなもんでどうだね」
坂東太郎こと利根川がすこし遠くから曼珠沙華に声をかけた。花は黙って風に揺れた。意中の人と毎年秋に世間の絶賛を手に入れてもはや何も言うことはなかったのだ。
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