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髭は恋する。①

 正体なく酔った夜こんな夢をみていた。ウロウロと迷い込んだ店は水のなかで営業している。いつのまにか私まで尾鰭を生やして泳ぎまわっている。
コイさんこちら、手のなるほうへ。
スイスイと手拍子の音を追いかけているつもりでも私の姿はみんなとどこか違っている。うまく説明できない。鱗を煌めかせているけれどそばに寄ると皺が目立つ巨体にあなたはどなたですかとたずねると
「あたしはフナだよ。ホレあんたと違ってヒゲがないもの」
濁流を泳ぎ抜いてきた貫禄を漂わせている。
「あたしはともかくウチの娘と付き合ってみない? いい子だよ」この人の娘さん? どうしたものかな。フナの背後から派手な鰭をはためかせて小柄で派手なリュウキンが現れた。
おお、これは! 私の心は一気に滝を登ってゆく。

 翌朝自宅で目が覚めると脱ぎ捨てられた真っ赤なフリルのドレスの傍に見知らぬ女がいた。キャバレー金魚のホステスだ。しくじった!
ヒゲキの予感。
「このすっとこどっコイ!」


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鯉と鮒の違いはヒゲの有無で、鮒を原種に金魚がつくられたそうです。


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