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このなかにお殿さまはいらっしゃいますか ①

 まさかこんなところで人生を終えることになろうとは。場違いも甚だしい。自分ともあろうものがなぜこんな扱いを。嗚呼わが城が懐かしい。家臣はどうしているだろう、領民たちは。
 ここはいったい何だ。騒がしい。ひっきりなしにアナウンスが流れる。
「大変長らくお待たせいたしました。10時発ニューヨーク行き650便にご搭乗のお客さま、ご案内を開始いたします」
ニューヨークだと? そんな所は真っ平じゃ。わしは城に戻りたいのじゃ。
「お呼び出しいたします。音野様、音野様はおいででしょうか」
 音野氏すなわち家臣はすぐに姿を見せた。「お忘れ物です。こちらのスーツケースをお預かりしております」
 余を閉じ込めたゴテゴテと派手なロゴが目立つ奇怪な箱だ。さきほど係員に咎められ没収されたのだった。
「だからよ、バッタもんじゃねえから。気分害した、もうニューヨークはやめだ」
 家臣は箱を車に積み込みわが領地に向かい、余は安堵のあまり緑色の羽を震わせた。

410字

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