告りびとが何を言ったか知りませんが告白することなんて何もありませんよ
「たまには稼いでおいでよ」
おばあちゃんに叱られた順ちゃんは短波放送を聴きながら赤鉛筆でシワシワの新聞に印をつける。ママの一番下の弟は知らない人からお兄ちゃんと間違われた。お祭りの晩に夜空を指差して赤いのが火星だよと教えてくれた。イカ焼きを指差し火星人だねと答えた。順ちゃんは煙の味がした。印は全部はずれた。次の年の夏祭りには赤い浴衣の背を抜いて襟足をちらつかせた女の人と二人でどこかに姿を消した。おばあちゃんが腹を立ててお店に文句を言いに行ったと後で知った。襟足はたまに遊びにくるようになり、夜になっても帰らない。苦しそうな声がして翌朝窓の外の雑草に赤いげろが散らかっていた。西瓜を食べすぎたわとケラケラ笑う。「たまにはかせいでおいで」おばあちゃんの物真似をしたってちっとも似てない。闇の中で赤い火をちぎれた券に擦りつけた。
「煙草の不始末ですな」
おまわりさんが私のほうをにらんでいる。
彼が呼んでいる。火星で「おいで」と。
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