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tachiki_kitaoka
骨折祈願 ①
「どうしても行くんだね」
祖母が何度目かの念を押す。
「もちろんよ」
「じゃあ、しっかりおやり。天国のマサキのためにも」あたしは獣医を目指し努力してきた。小雨降る公園のベンチに置き去りにされた段ボール箱に『可愛がってください』のメモ。あこがれの先輩にちなんだ名をつけて育てた。ずっと一緒だったのに。あの事故さえなければ。
「あなたは運がいいです」
指導の医師が微笑んだ。
「では本日の研修の骨折の応急処置を始めます。つい先ほど足をケージの扉に挟まれた子犬が運び込まれたのです」白衣に着替え、患部のレントゲンを拡大する。麻酔でぐったりした子犬の足を石膏で固定してやる。だけど、もし事故が起きなかったらこの研修はできなかったのだろうか? わざと折っているという噂は本当なのだろうか。なぜか祖母の顔が浮かんだ。
「あたしもコツをつかんだのさ。前回は効き過ぎた」息子夫婦は遊んでばかりいる娘をなんとか受験勉強に向かわせたいと悩んでいたからね。
410字
フィクションです。
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