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曼珠沙華は恋をする ①

「赤がすっかり景色に溶け込んでいるね」
曼珠沙華畑で真紅のワンピースの女に思わず声をかけていた。
「お兄さんここで何をしているの」
「道に迷ったんだ、トーショーグーはどっちですか」ならばここをどこまでもまっすぐおいでなさいと女の身内らしき老婆が答える。江戸からきたのかね、まだまだ先は遠いよ。
江戸っていつの話だよ? 確かにここらへんは武蔵の国と呼ばれ江戸の先の宿場町だったけど新政府の東京からは切り離されて東の武蔵の鉄道圏のはずだよ。
女はクスクス笑って赤い彼岸花を差し出した。
「これでお決めになるのはいかが?」『先を急ぐ』『戻る』『ここに留まる』花弁を一枚ずつむしりながら唱えはじめる。彼岸花の花びらは六枚だ。
「花をむしっては可哀想? 昔は、ご、ん、げ、ん、さ、ま、の、い、う、と、お、り(12字)で決めたものよ」
とにかくうちにお寄りなさいませ、お名前は? タケチヨさん?」女たちに急かされ群生する彼岸花畑に踏み込んで行った。


410字


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