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読書手術 ①

縁側で分厚い上下巻本のページが絶え間なくめくられてゆく。まばゆい語彙に麻酔をかけられた読み手は美文のストレッチャーに乗せられ手術室に吸い込まれたきり戻って来なかった。

「凶器は文庫本だね。活字に耽溺していたところを背後からいきなり」
「犯人は誰? どんな動機で?」

ドクター翔が遮る。
「静かに。私は患者の治療に集中しなければならない」
アップになった表情に緊張が走る。
「先生?」
次の瞬間ゴーグルを血飛沫が襲った。
「先生!」
噴き上がる動脈血。

「もう! 患部も出さずに出血でうまく逃げたつもり? AIに手術シーン満載ドラマを作らせたのに」
医療ミステリばかり読んでいる医学部志望の息子のために作成させた動画は院内の権力抗争と三角関係ばかり。手術のデータはほとんどなかったのだ。

「犯人はわからないがこの流れはあらかじめ仕組まれていたに違いない。ヤブ医者の秘密と引き換えにのし上がるんだな。不正を許さないためにも手術を受けて元気になるぞ」


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