バイト列伝(2) 宅配ピザ
DS全盛期、リズム天国GOLDでリズムを学び、わがままMODEガールズコレクションでおしゃれを学び、ぷちぷちおみせっちで働くことを学んだ身として、歯医者もハンバーガー屋もケーキ屋もなんだかやったことがある、バイトってあんなもんだろうと思っていた。
宅配ピザ屋になんで応募したのかといえば、なんか高校の近くだったとか歯医者以外のバイト以外のバイトをしてみたいとかそういう理由で、雑誌とか漫画とかで描かれる「バイトで他校の男子と出会う」みたいなものを強烈に求めていた。多分これは私がDSでラブプラスをやりすぎたせいだと思う。ラブプラス通りにするならファミレスにすればよかった(寧々様…)。
私がラブプラスに青春を捧げていた話は長くなるので置いておいて、某宅配ピザ屋。冬と春の間くらいの時期に決め、17歳はキラキラ高校生ライフを送るんやと期待膨らませていたが、私が入り浸っていた高校図書室の司書さんからは「ピザ屋と牛丼屋は本当にすぐ辞めるかめっちゃ長くのどちらかって聞くよ。辛いらしいよ。多分柴野さんは向いてないよ」と忠告された。
いやいや、春の生暖かい風は吹いており、それを人は「青い春」と呼ぶんやで。さあレッツゴー!あんな消毒液のする歯医者でシケたお局に詰められる生活なんてやめてやる!!!
歯医者はナース服支給だったため持っていくものはなかったが、某宅配ピザは黒いズボンと黒い靴が必要らしい。自腹。身銭なんて切りたくねえわと思いつつ渡されたポロシャツに着替える。なんか並ばされる。なんか社訓?を復唱させられる。「私たちはお客様第一に考えます、絶対にピザは30分以内に届けます、安全に運転します」…etc。怠い。これがバイトなのか。あと宅配ピザって店内めっちゃ宅配ピザの匂いする。ずっと嗅ぎ続けてると苦痛。
なんかバイト専用のアプリ?があって、そこにピザを作る手順の動画がある。それを見ないとバイトに入れないんだか罰則なんだかただ怒られるだけなのかは忘れたが、早送りできない仕様になっており、バイトに入る時にチェックされる。
私は入ったばかりだからピザ生地を伸ばすのはやらなくて、覚えた手順で具材を乗せなければいけない。ミニトマトの置き方は縁の方にSなら6個、Mなら8個。期間限定はこれで、ソースはこれで。ああ、全く覚えられない。覚えられないから他の人に聞くけど露骨に嫌そうな顔される。
司書さんが言っていたのはこれか。すぐ辞めるやつはすぐに辞める、長いやつはずっとやってる。注文が入らなかったらピザ段ボールをひたすら折りたたむ。指が切れる。注文が入る。指が切れてるって言ってるのに消毒して作らされる。おかしい。あと冷凍庫から足りない食材を探して持ってくる。寒い。どこにあるかもわかんない。冷凍庫でかい。手順覚えられない、なぜか洗い場水しか出ない。あとパリピ大学生みたいなのから電話かかってきてチーズめっちゃ足してとかサービス要求されて断る。こんな大学生になりたくない。怠い!
2週間くらいやったある日、店長が休みの日があった。ちなみにキラキラ高校生ライフは全く送れておらず、バイト先で仲良くなった人もいなかった。具材聞いただけで嫌な顔されるんだから当然か。しかし今日は店長に内緒でピザパーティーらしい。大胆なことをするなと思ったが、賄いもなければ割引もないインセンティブがなさすぎるバイトだったのでそれくらいは許されるかと納得した。ピザを作り、作り間違えたことにして、奥の事務所で食べる。
先に一人男の人がいた。大学生で、スマホでYogee New WavesのClimax Nightを流していた。やっと音楽好きな人がいた!この人が恋の相手なのか?やんわりとした期待を持って「ヨギー好きなんですか?」と話しかけると、「え、何?」と言われる。「ヨギーニューウェーブスです」と言うと、今自分がかけている曲がYogee New Wavesだと初めて知ったらしい。サブスクが流行るよりも前の話で、youtubeをそのまま流していたので今思うとデータ量どうなってるんだと言う気もするが、おすすめに出てきてその時たまたま流れていただけだったらしい。
なんとなく気まずい雰囲気が流れる。後から聞いたらその大学生は免停くらってドライバーの仕事が中止されており作る側を今だけやってるがたり〜とのことだった。免停も2回目らしい。早まりすぎてこんなやつに淡い恋心を抱かなくてよかった。それくらい高校生って何かに飢えていた。
バイトは週に短時間の2回くらいしか入っていなかったが、音楽活動はその裏で徐々に再開していた。ライブもやったし、高校生時代を代表したであろう「スクールフィクション」という曲もできた。まあ学校で言ってることなんて全部嘘だし友達もみんな嘘ですよねみたいなことで、それは本当はリア充(そんな言葉は死語ですよ)に憧れているのに学校でも宅配ピザ屋でもキラキラできない故のサブカル、反動、初期衝動、ルサンチマンみたいなものだった。言葉にすると陳腐だが、高校生としては色々大問題だった。
チームフェスボルタでは「渋谷のラジオ」に急遽出演が決まり、それがバイトと被っていた。電話して「すみません、出れなくなったので休ませてください」と言っても「規則だから」「代わりを見つけて」的なことを言われる。「ラジオに出演が決まったんです」と言った。
「音楽活動をしています」と履歴書に書いていたがまあそんなちゃんとやってるとは思われていなかったし、渋谷のラジオと言っても伝わらなかった。「まあじゃあ今回だけ仕方ないけど今後は…」見たいなことを言われたままバックれてしまい、某宅配ピザを食べるとなんとなく嫌な気持ちになるのはそのためである。
あの時のズボンと靴は確か頑張って回収しに行ったし、渋谷のラジオで「スクールフィクション」と言う曲を歌ってみんなに後押ししてもらったことでお金をかけてレコーディングし、タワーレコード渋谷店のプッシュや下北沢サウンドクルージングコンピに参加させてもらうこともできた。怠すぎたバイトのおかげで曲ができたのか?とも思うが、やっぱり司書さんの言うことは聞いたほうがいい。私は辞める人はすぐ辞める側の人間だった。
宅配ピザ屋バイト
期間;1ヶ月くらい
時給:最低
業務内容;微妙
総合:★⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
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