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データサイエンスにアートの視点を。 大学、産業界、地域一体で滋賀のみらいを構想するプロジェクト始動

 5月23日、滋賀大学彦根キャンパスにて、滋賀大学とトヨタ・コニック・アルファ社の包括的連携協定に関する調印式が行われました。滋賀みらい構想プロジェクト 事務局では、今回のプロジェクトに関わる主要な方々にお話をうかがいました。
 
滋賀大学は2017年に日本の大学で初めてデータサイエンス学部を設立した、国内のデータサイエンス分野を牽引する存在。そして、トヨタ・コニック・アルファ社は『データで、ありがとうをつくる仕事。』をミッションに、デジタルコミュニケーション分野の研究機関として、新たな「仕組み」と「ビジネス」の創造に取り組んでいる企業です。
 
データサイエンスで産・学それぞれのトップランナーである両者はこの協定締結により、データサイエンスにアート的要素を組み込んだ「データ アート&サイエンス(Data Art & Science 略してDAS)」の研究を共同で進めていきます。

調印を終えた滋賀大学・竹村彰通学長(左)とトヨタ・コニック・アルファ社・山下義行社長
調印式は滋賀大学彦根キャンパスで行われました。

 滋賀大学の竹村彰通学長は今回の連携を「新たな挑戦」と語ります。
「データサイエンスというのは先に解決すべき課題があり、それをデータ分析やAIなどのデジタル技術を使って解き明かす学問です。ところが変化のめまぐるしい今の時代は、技術だけでなく人々の価値観さえも一変してしまうような事態がいつ起こってもおかしくはありません。今やっていることが正しいのか、そもそも何が課題なのかさえも分からない。そのような状況で求められるのは、創造性です。今、日本中で起こっている地域課題がまさにこの状態です。さまざまな課題が山積みとなっていて、本質的な課題が何なのかは分かりませんよね。過去のデータからは見えてこないものをどうやって見るのか、調印前からトヨタ・コニック・アルファ社さんとは話し合いを続けていました。そこで出てきたのが“アート”です。これまでのデータサイエンスに足りなかった創造性。これを補うことができるのはアート的要素ではないかという考えから、DASはスタートしました。大学というのはどうしても閉じた社会なので柔軟な発想が生まれづらいところがあります。今回トヨタ・コニック・アルファ社さんに入ってもらうことで、視点が広がったり、新しいビジネスを生み出すことができるのではと大いに期待を寄せています」

滋賀大学データサイエンス学部の創設に深く関わった、竹村彰通学長


 産学連携の“産”を担うトヨタ・コニック・アルファ社の山下義行社長も「DASという新しい概念の領域で学問の枠を超えた取り組みを進めたい」と意気込みを語ります。「日本では未開拓だったデータサイエンス領域へファーストペンギンとして参入し、学問として確立された滋賀大学さんの実績は目を見張るものがあります。これまでもいろいろな企業さんや団体の方々とデータサイエンスを活用した社会課題への取り組みを進めてこられ、ネットワークもあらゆる領域に広がっています。データサイエンスにアート的要素を加えたこれまでにない取り組みを進める上で、滋賀大学さんは最良のパートナーです。しっかり連携をとりながら、これからのデータのあり方、そして未来のつくり方を一緒に考えていきたいと思います」

「データを見つめ直すことで新しい幸せが見つかる」と語る
トヨタ・コニック・アルファ社・山下義行社長


データ アート&サイエンスを活用し、
滋賀の未来を創成する

 滋賀大学とトヨタ・コニック・アルファ社による共同研究では、滋賀県内の彦根、高島、米原、近江八幡、大津、長浜など6つのエリアを足がかりに、県内のさまざまな地域でDASを活用した未来に向けた取り組みを進めていきます。

 プロジェクトを担当する滋賀大学、中野桂・特命副学長は「これまでのデータサイエンスでは分からなかった未来や新たな視点が、DASによって見えてくる」と言います。

DASプロジェクトを担当する滋賀大学、中野桂・特命副学長

「例えば高島地域は、民間組織『人口戦略会議』の報告書によると『将来的に消滅の可能性がある自治体』となっています。それは人口減少というネガティブなデータだけを見ているからであって、実際に足を運ぶと世代交代が進んでいて、若い人たちがみんな生き生きとしている。むしろ他の地域より活気があるくらいです。昔から漁師さんの多い地域で、琵琶湖の漁業を守りたいという熱意を持った人もいて、新たに漁師をめざす若者もでてきていると聞いています」

琵琶湖を中心とした6つのエリアでDASによる地域創生プロジェクトをスタート。
今後県内のさまざな地域に広げていく予定です。

 今年の9月には、オーストリアで開催される世界最大級のメディアアートの祭典、アルスエレクトロニカ・フェスティバルに出展。各エリアでの取り組みを公開する予定です。
「私は東京で生まれ育ち、滋賀大学で教鞭をとることになってからこの地で生活するようになりました。湖畔の家に住み、夏は琵琶湖でウィンドサーフィンをし、冬は薪ストーブを焚きながらここでの暮らしを満喫しています。滋賀県はいろいろな意味でクオリティオブライフが高いと思っています。ところがずっとここに住んでいる地元の人にはそれが当たり前になっていて、滋賀県の持っている良さに気がついていない方が多いんです」
 各エリアのプロジェクトには、地域の人だけではなく、滋賀大学の学生さんも参加します。
「彼らがリーダーになって、関係者の方と調整してデータを集めていくエリアもあるでしょうし、ワークショップに参加したり、データの解析も担当することになると思います。ただし、DASのポイントであるアートの部分、我々にはアーティスティックなところが足りないので、そこはアルスエレクトロニカ・フューチャーラボさんのお手伝をいただくことになります」


オーストリア・リンツ市に拠点を置く
アルスエレクトロニカ・フューチャーラボも参加

 アルスエレクトロニカは、オーストリア・リンツ市に拠点を置く、世界的なクリエイティブ機関です。元々工業都市として栄えたリンツ市でしたが、1970年代から重工業は下火となり、高い失業率、大気汚染など、地域課題は山積み。「灰色の工業都市」と呼ばれるまでに。方向転換を迫られたリンツ市が選んだのが、アートとテクノロジーでした。
 1979年に行政によって先端技術やメディアアートなどの研究教育を行う機関としてアルスエレクトロニカが誕生。リンツ市は世界的なメディアアートの拠点として生まれ変わります。毎年9月には、アルスエレクトロニカ・フェスティバルが開催され、世界中からメディアアート作品が集まります。DASプロジェクトが出展を予定しているのも、このフェスティバルです。

アルスエレクトロニカの誕生によって工業都市から大きく変貌を遂げたリンツ市

 今回のDASプロジェクトには、アルスエレクトロニカの研究開発部門であるアルスエレクトロニカ・フューチャーラボも連携しています。
アルスエレクトロニカ・アンバサダーの久納鏡子さんは、参加の経緯をこう語ります。
「2年前にトヨタ・コニック・アルファ社の皆さんがアルスエレクトロニカ・フェスティバルにいらして、そこで話していくなかでデータサイエンスにアートの視点を入れるというアイデアが生まれました。DASプロジェクトによる地域創生にも初期の段階から参加していて、滋賀の地域のためになるようにDASをどう活用していったらいいのかという、地域プロジェクト全体のグランドデザインを考えるところに関わらせていただいています」

アルスエレクトロニカ・アンバサダーの久納鏡子さん

 米原エリアのプロジェクトでは、アルスエレクトロニカ・フューチャーラボチームも参加したワークショップが開催されます。
「私たちが見ているデータはただの数値ですが、その裏側には人がいたり、住んでいる環境があったり、データサイエンスでは見えなくなっているものがあります。個人、個人が持っている想い、これを私たちは『エモーショナルな情報』と呼びますが、『エモーショナルな情報』をデータに加えることで、データの背後にいる人々をもう一度見える形にしてあげる。これもデータ アート&サイエンスの一つだと思います。数値化することで誰もがパッと一目で理解できるのがデータの良さですが、みんながそうだよねと共感できるエモーショナルなものにもう一度作り直してみることで、新しい視点が生まれる。そういうものを地域のみなさんと一緒につくりたいですね」

 データサイエンスにアートを加えた、「データ アート&サイエンス」による地域創生の試みは、まだ始まったばかりです。これからどんな新しいアイデアが生まれるのか、どんなプロジェクトが行われるのか。
 滋賀大学×トヨタ・コニック・アルファ社×アルスエレクトロニカ・フューチャーラボによるDASプロジェクトの情報は、このnoteで随時更新していきます。DASプロジェクトの今後にどうぞご期待ください。