【Rosalía LUX考察 #3】Reliquia | 世界中に残されたRosalíaの断片
To Rosalía fans around the world:
What if the things Rosalía leaves behind across the world are more than memories—but sacred relics?
Let’s uncover the hidden meaning of “Reliquia.”
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旅先で失くし物をすることはありませんか。
Rosalíaのアルバム『LUX』(2025)の2曲目は、一見すると世界中を旅する中で起こる小さな出来事を歌った楽曲のように聞こえます。
しかし、その歌詞を注意深く追っていくと、そこには思いもよらない宗教的イメージが隠されているように見えてきます。
世界各地に残されるRosalíaの「失くし物」。
そして、世界各地に分散して保管される聖人たちの「聖遺物」。
この記事では、その奇妙な共通点を手掛かりに、この楽曲が描く記憶と信仰、そして『LUX』全体へと繋がる精神世界について考察します。
なお、この記事はあくまで僕の解釈であり、公式見解ではありません。
僕のフィルターを通したこの考察が、あなたに新たな視点をもたらすことを願っています。
ぜひ、ご自身の感性でこの楽曲のパズルを再構築してみてください。
また、この記事は長いので、気になるところだけを読み飛ばしていただいて大丈夫です。
ブックマークなどして、何回かに分けて読むのも良いかもしれません。
【マガジン現在地:3/20】
本記事は『LUX』全曲考察マガジンの一部となる、第一楽章 2曲目の解説記事です。
Ⅰ ○📍○○○|Ⅱ ○○○○|Ⅲ ○○○○○|Ⅳ ○○○○
アルバム:女性的神秘、変容、超越の感情的弧線
┗ 第一楽章:世俗と神聖の共存
┣ 1. Sexo, Violencia y Llantas
| (世俗と神聖の共存)
┣ 2. Reliquia📍(献身)
┣ 3. Divinize(中心にいること)
┣ 4. Porcelana(自由への渇望と恐れ)
┗ 5. Mio Cristo Piange Diamanti(アガペー)
※本シリーズで記している楽章テーマは、Rosalía本人による4楽章構成の説明を踏まえたうえで、僕が歌詞・曲順・モチーフの流れから独自に整理した解釈です。
概要
タイトルの"reliquia"(レリキア)はスペイン語で「聖遺物」です。
聖遺物とは、聖人の遺体、遺骨、衣服、使用した道具などを指し、崇拝の対象となります。
Rosalíaはインタビューで、この曲はリマの聖ローザ(Santa Rosa de Lima)にインスピレーションを受けたと語っています。
リマの聖ローザは16世紀後半~17世紀前半に生きたペルー(当時スペイン帝国領)の修道女で、厳しい苦行と貧困層への支援から列聖されました。
リマの聖ローザの遺体の一部は、聖遺物として世界各地で崇められています。

テーマと歌詞
この曲のテーマはあなたへの「献身」というのが僕の解釈です。
歌詞では特定の相手は示されておらず、様々な対象へ開かれているように感じます。
この曲の「あなた」とは、愛しい人であり、家族や友人であり、リスナーであり、音楽そのものではないかと思います。
この曲はスペイン語で歌われます。
歌詞は、Rosalíaが世界中を旅し、各地で失くし物をする話です。
例えば、「ローマで目を失った」はローマの美術館で作品に釘付けになった体験を、「LAでは時間を失った」は前作『MOTOMAMI』の制作に忙殺された日々を表しているように思えます。
こうした非常に個人的な体験と想いを、聖女の遺体がバラバラにされ世界各地に分散(聖遺物化)して祀られた歴史と対比して表現しています。
ここでも俗と聖が共存しています。
Verse 1
Verse 1ではRosalíaが世界中を旅し、各地で失くし物をします。
[スペイン語]
Yo que perdí mis manos en Jerez y mis ojos en Roma
ヘレスで手を失い、ローマで目を失った
Crecí y el descaro lo aprendí por ahí por Barcelona
成長しバルセロナを歩き回って生意気な自分を見つけた
Perdí mi lengua en París, mi tiempo en LA
パリでは声を失くして、LAでは時間を失った
Los heels en Milán, la sonrisa en UK
ミラノでヒールを失くして、UKでは笑顔を失った
Chorus
Chorusはこの曲のテーマです。
自分が全てを「あなた」に捧げてきたことを、聖遺物に例えて表現しています。
[スペイン語]
Pero mi corazón nunca ha sido mío, yo siempre lo doy, oh
でも心は私のものじゃない、いつだって誰かに渡してきた
Coge un trozo de mí, quédatelo pa' cuando no esté
だからひとかけらを持っていて、私がいない時のために
Seré tu reliquia
私はあなたの聖遺物になる
Soy tu reliquia
私はあなたの聖遺物
Seré tu reliquia
私はあなたの聖遺物になる
※「ひとかけら」「聖遺物」とは、このアルバムそのものを指しているように思います。
Verse 2
Verse 2で歌われるのは、さまざまな想いです。
さまざまな想いを振り返り「自分は聖人ではないが祝福されている」と歌います。
[スペイン語]
Perdí la fe en DC, y la amiga en Bangkok
ワシントンDCでは信仰心を、バンコクでは友を失った
Un mal amor en Madrid, y en México el blunt
マドリードではくだらない愛を、メキシコではブラントを失った
La mala hostia en Berlín y el arte en Graná'
ベルリンでは機嫌の悪さを、グラナダでは芸術を失った
En PR nació еl coraje, pero el ciеlo nació en Buenos Aires
プエルトリコでは勇気が、ブエノスアイレスでは天国が生まれた
En Japón lloré y mis pestañas deshilé
日本では泣き、まつ毛が乱れた
Y en la ciudad de Cristal fue que me trasquilé
クリスタルの街では髪を雑に刈った
Pero el pelo vuelve a crecer, la pureza también
でも髪はまた生え、純潔もまた戻る
La pureza está en mí y está en Marrakech
純粋さは私の中、そしてマラケシュにある
No, no, no soy una santa, pero estoy blessed
いいえ、私は聖人ではないけど祝福されてる
※ブラントは、葉巻たばこの中身を抜いて大麻を詰めたものです。
Chorus
ここで2回目のChorusになり再びこの曲のテーマが歌われます。
[スペイン語]
Pero mi corazón nunca ha sido mío, yo siempre lo doy, oh
でも心は私のものじゃない、いつだって誰かに渡してきた
Coge un trozo de mí, quédatelo pa' cuando no esté
だからひとかけらを持っていて、私がいない時のために
Seré tu reliquia
私はあなたの聖遺物になる
Soy tu reliquia
私はあなたの聖遺物
Seré tu reliquia
私はあなたの聖遺物になる
Outro
Outroでは、「無限の時間の中で一生はほんの一瞬の出来事に過ぎない」という無常感が歌われます。
この無常観は17曲目"Memória"で再び扱われ、18曲目"Magnolias"のレクイエムへと繋がります。
[スペイン語]
Huyendo de aquí, como hui de Florida
フロリダから逃げたようにここから逃げる
Somos delfines saltando, saliendo y entrando
私たちは跳ねたり出たりしているイルカ
En el aro escarlata y brillante del tiempo
緋色に輝く時間の輪の中で
Es solo un momento, es solo un momento
それはほんの一瞬、一瞬だけ
Mar eterno y bravo, la eterna canción
永遠の荒々しい海、永遠の歌
Ni tiene salida ni tiene mi perdón
逃げ道はなく、許しもない
※「緋色に輝く時間の輪」は永遠に続く太陽の運行であり、私たちは「荒々しい海」という厳しい現世で跳ね回るイルカのごときであり、永遠の中で一生は一瞬に過ぎない、という無常感だと思われます。
サウンドとプロダクション
プロデュースはRosalía、ノア・ゴールドスタイン、サー・ディラン、キャロライン・ショーです。
キャロライン・ショーはアメリカの現代クラシック音楽作曲家で、ヴァイオリニストでもあり歌手でもあります。
キャロライン・ショーについても軽く調べてみましたが、この人も相当良いですね。
そして作曲にはなんとダフト・パンクのギ=マニュエルが名を連ねています。
この曲の聴きどころは、まずストリングスですよ。
オンマイクのLSO(ロンドン交響楽団)良いわぁ~!
1:16くらいから鳴るドラム音がサパテアード(フラメンコの足踏み)っぽいです。
そしてRosalíaの歌が素晴らしいです。
オペラの歌い方とポップスの歌い方とが入り混じっています。
本当に素晴らしい歌声だなぁ。
2回目のChorusでの、消え入るようなピッチコントロールには息をのみます。
プロダクションもカッコいい。
コーダでエレクトリックサウンドが入り混じります。
この辺がギ=マニュエルでしょうか。
その、コーダに入る直前に譜面をめくる音が聞こえます。
くぅ~、オケ好きをくすぐるディテールです。
《コラム:リマの聖ローザについて》
リマの聖ローザは、アメリカ大陸で聖人として列聖された最初の人物です。
彼女は幼い頃から厳しい苦行で知られ、美貌を褒められると髪を切り、顔に唐辛子をすり込みました。
また、キリストが被せられた茨の冠を模して、内側に小さな釘の付いた銀製の冠を身につけていたと伝えられています。
一般的にはこうした聖人の言行は崇高なものとされています。
ですがひねくれ者の僕は、「内側に小さな釘の付いた銀製の重い冠」で恍惚という話を聞くと、そこには崇高な献身だけでなく、身体的苦痛と恍惚が隣り合う危うさも感じてしまいます。
なんとなくウンベルト・エーコの「薔薇の名前」を思い出しました。
ジャン=ジャック・アノー監督の映画も良かったです。
最後に
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
皆さんはこの曲をどう感じましたか?
音楽は開かれたナラティブです。
リスナーの数だけ解釈や感想があって良いと思います。
是非皆さんの感想をコメントや「スキ」で教えてください。
本シリーズでは、『LUX』の全曲を解説しています。
もしこの考察が気に入っていただけたら、ぜひ他の考察記事も覗いてみてください。
全記事はマガジンにまとめています。
Thank you for reading.
I hope you’ll join me next time as we continue our journey through LUX with “Divinize.”
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