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【Rosalía LUX考察 #19】Magnolias|死は悲しみではない

To Rosalía fans around the world:

Does the final song fulfill the promise made at the very beginning of LUX? Let’s explore how “Magnolias” brings its eighteen-song journey full circle.

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死は、本当に悲しいことなのでしょうか。

Rosalíaのアルバム『LUX』を締めくくる最終曲 "Magnolias" は、死を悲しみではなく、愛と感謝をもって受け入れるためのレクイエムです。

僕たちは大切な人を失うとき、涙を流します。
けれど、この曲でRosalíaは静かに語りかけます。

「どうか泣かないで」
「花を投げて」
「そして踊って」

人生には苦しみもあります。
傷つくこともあります。
それでも、生きたことそのものは美しい。

だから死は終わりではなく、人生という旅路を祝福する最後の儀式なのだと、この曲は歌っているように聴こえます。

この記事は、LUXという壮大な巡礼の終着点として描かれた、この美しくも不思議な死生観の正体を探るための、僕なりの探求の記録です。

なお、この記事はあくまで僕の解釈であり、公式見解ではありません。
僕のフィルターを通したこの考察が、あなたに新たな視点をもたらすことを願っています。
ぜひ、ご自身の感性でこの楽曲のパズルを再構築してみてください。

また、この記事は長いので、気になるところだけを読み飛ばしていただいて大丈夫です。
ブックマークなどして、何回かに分けて読むのも良いかもしれません。


【マガジン現在地:19/20】

本記事は『LUX』全曲考察マガジンの一部となる、第四楽章 18曲目の解説記事です。

Ⅰ ○○○○○|Ⅱ ○○○○|Ⅲ ○○○○ ○|Ⅳ○○○📍

アルバム:女性的神秘、変容、超越の感情的弧線
 ┗ 第四楽章:許しと終焉
  ┣ 15 Novia Robot(自分のために生きる)
  ┣ 16 La Rumba Del Perdón(許しの力)
  ┣ 17 Memória(思い出への憧憬)
  ┗ 18 Magnolias📍(死は悲しみではない)

※本シリーズで記している楽章テーマは、Rosalía本人による4楽章構成の説明を踏まえたうえで、僕が歌詞・曲順・モチーフの流れから独自に整理した解釈です。

概要

タイトルの"Magnolias"はスペイン語で「木蓮(もくれん)」です。
「崇高」「高潔な心」といった花言葉を持ちます。

この曲は、ヒンドゥー教の神秘家、アナンダマイ・マーにインスピレーションを受けています。

彼女の葬儀は素晴らしかったんです。
たくさんのお花が溢れていて、皆が安らぎと喜びを感じていたようで、私は「えっ、こんなことが起こるなんてすごい」と思いました。
そして「私の葬儀はどんなふうになるんだろう?」と思いました。
たぶん、「どうか私が死んだら悲しまないでください。ただパーティーを開いてください」というのが私の願いでしょう、

インタビューより

また、スペインのフラメンコアーティストであり詩人でもある、マヌエル・モリーナからもインスパイアされています。

私の背中には、スペインで一番好きなアーティストであるマヌエル・モリーナのタトゥーが入っています。
「私が死ぬ日、誰も泣かないでください。たとえ悲しみを込めて歌ったとしても、歌うことのほうが美しいのです」と。

インタビューより

テーマと歌詞

本曲のテーマは「死は悲しみではない」というのが僕の解釈です。
この曲は、「愛と喜びをもって死を受け入れる」というレクイエムなのだと思います。

Verse 1

Verse 1ではRosalíaの葬式の様子が描かれます。
Rosalíaはメルセデスの霊柩車の中から、出席者の様子を眺めています。

[スペイン語]
Dicen que si vieras pasar

死がそばを
A tu la'o la muerte
通り過ぎるのを
En la Mercedes la que es alarga'
あの長いメルセデスの中で見てたら
Te da buena suerte
縁起がいいんだって

Todos habéis venido
みんな来てくれてる
Hasta mis enemigos
嫌な奴も含めて
Hoy lloran
今日は泣いてる

Verse 1

Chorus

ChorusはRosalíaから参列者への希望であり、Rosalía自身への祈りです。
マグノリアの花言葉は「崇高」「高潔な心」です。
人が葬儀に供える花は、故人への想いそのものなのだと思います。

[スペイン語]
Tírame magnolias

マグノリアを投げて
Tírame magnolias
マグノリアを投げて
Tírame magnolias
マグノリアを投げて
Tírame magnolias
マグノリアを投げて

Chorus

Verse 2

Verse 2では、参列者が思い思いに楽しんでいる様が見られます。
これは、Rosalíaの「どうか私が死んだら悲しまないでください。ただパーティーを開いてください」という想いが表れています。

[スペイン語]
Sobre mi ataúd KTMs quemando rueda

私の棺の上で、KTM(バイク)の焼けるタイヤ
Lágrimas y goma se derriten en la madera
涙とタイヤが木の上で溶けてゆく

※棺は精神的な世界を、タイヤは世俗的な世界を象徴しているのだと思います。このラインは、1曲目"Sexo, Violencia y Llantas"を連想させます。

Gasolina y vino tinto, puros y chocolate
ガソリンと赤ワイン、葉巻とチョコレート
Bailando con amor encima de mi cadáver
私の亡骸の上で愛と踊る

※このラインは、下記をそれぞれ象徴しているのだと思います。
ガソリン:行動
赤ワイン:官能
葉巻:贅沢
チョコレート:人生の甘美さ

Hoy se derrocha, burlando la suerte
今日は贅沢に、運命を騙して
Y lo que no hice en vida, lo hacéis en mi muerte
生きてる間に出来なかったことを私の死後にやるのね

Verse 2

Chorus

2回目のChorusとBridgeはクワイアが歌います。
このChorusとBridgeは、まるでレクイエムのコラール(死者の魂が天国へ迎え入れられるよう神に祈るパート)のようです。

[スペイン語]
Tírame magnolias

マグノリアを投げて
Tírame magnolias
マグノリアを投げて
Tírame magnolias
マグノリアを投げて
Tírame magnolias
マグノリアを投げて

Chorus

Bridge

BridgeはRosalíaの死生観です。
自分の死は悲しみではなく、崇高な存在になることだ、と歌っているように見えます。

[スペイン語]
Dios desciende y yo asciendo

神様が下りてきたら私は昇る
Nos encontramos en el medio
私たちは真ん中にいる

※「神が下りて私は昇る」という表現から、僕は『死によって聖なる存在へと移行する』というイメージを強く感じました。特に、聖人を称える日がその聖人の命日であることを考えると、人は死の瞬間に聖人として生まれるという捉え方なのだと、僕は思います。

※「私たちは真ん中にいる」は、3曲目"Divinize"の「中心=神聖=創造」に呼応しています。

Bridge

Verse 3

Verse 3は自分の人生への感謝と、残された人々への想いです。

前曲"Memória"では「私が死ぬときに願うのはただひとつ、私が生きたことを忘れないで」と歌いました。
この曲でも同様に「私がもうここにいなくなったら、私の名前を守ってくれるって約束して」と歌います。

[スペイン語]
Algún que otro navajazo, me he llevado de la vida

人生で、ナイフで刺されたことが何度もあった
Ella a mí me desarmó y yo le estoy agradecida
全てを奪われたけど、それでも私は人生に感謝している

※「全てを奪われたけど…」は13曲目"Sauvignon Blanc"の「執着からの解放」を思わせます。

Y lanzará azúcar moreno sobre mi ataúd
そして彼は私の棺に黒砂糖を投げつけるだろう
Y quedaros despiertos hasta que vuelva otra vez la luz
光が戻るまで目を覚ましている

※黒砂糖(Brown Sugar)は、薬物のメタファーとも取れますが、むしろ『世俗の快楽を棺の上で爆発させる』という、聖と俗の対比を強調した表現のようにも感じました。

Promete que me protegerás
私がもうここにいなくなったら
A mí y a mi nombre en mi ausencia
私の名前を守ってくれるって約束して

Yo que vengo de las estrellas
私は星から来たけど
Hoy me convierto en polvo
今日は塵に戻る
Pa' volver con ellas
そしてまた星に帰る

※「私は星から来た…」からは、聖書の一部が連想されます。創世記「あなたは額に汗して食物を食べ、ついには土に帰る。あなたは土から取られたのだから。あなたは塵であり、塵に帰るのだ。」

Verse 3

自分の死を、悲しみではなく愛おしみで表現した美しいレクイエムです。
このアルバムの各曲に触れながら、自身の葬儀という形でアルバムの終焉を表現している様に思います。

これまでの曲で語られてきた聖人たちの物語や神との合一というテーマを踏まえると、この最終曲は、Rosalía自身が聖なるものへ近づく通過点、として描かれているように思います。
もちろんこれは僕の勝手な解釈です。

この最終曲では、Rosalía自身がこのアルバムの聖人たちと一体化する、僕にはそんな構図が浮かんでくるのです。

Rosalíaは「地上と天界を行き来するもの」になれたのでしょうか?

少なくとも僕には、この18曲の旅路そのものが、その答えのように思えるのです。

サウンドとプロダクション

プロデューサーはRosalía、ノア・ゴールドスタイン、サー・ディランです。

オーケストラの演奏と静謐なクワイア、そこにフラメンコの情熱的な歌唱です。
素晴らしい!

木管(オーボエかな?)で始まります。
僕の中には「木管で始まる曲は名曲」と勝手なジンクスがあります。

1回目のChorus後のクワイアが良いですね。
「ん~」と連続して上昇する感じがちょっとテクノっぽいです。
昇天のイメージでしょうか。
曲の終わり方も消え入る様で、命の灯が静かに消えゆく感じです。

アルバムを通して聴いた最後にこの曲を聴くと、ため息が出ます。
魂を浄化されたかのような、深いカタルシスがあります。
この曲が終わった後は、しばらく無音で余韻に浸りたくなります。

《コラム:アナンダマイ・マーについて》

アナンダマイ・マー

アナンダマイ・マーは、インドの聖者、教師、神秘主義者です。
本名をニルマラ・スンダリと言い、1896年生まれで、没年は1982年です。

彼女の教えの中心となるテーマは、
「すべての人間の至高の使命は自己実現を目指すことである。他のすべての義務は二次的なものに過ぎない」
「人間の神聖な本性を燃え上がらせる行為だけが行為の名に値する」
というものでした。

アナンダマイ・マーは信者たちから、至福の体現者、癒し手、そして女神カーリーの化身と言われていました。

最後に

最後まで読んでいただいてありがとうございます。

皆さんはこの曲をどう感じましたか?
音楽は開かれたナラティブです。
リスナーの数だけ解釈や感想があって良いと思います。
是非皆さんの感想をコメントや「スキ」で教えてください。

本シリーズでは、『LUX』の全曲を解説しています。
もしこの考察が気に入っていただけたら、ぜひ他の考察記事も覗いてみてください。
全記事はマガジンにまとめています。


Thank you for joining me at the end of the album.

One article remains—next, we’ll look back at the full journey and bring this series to its conclusion.

《マガジン最終話へのリンク》

《シリーズ全体へのリンク》

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