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【Gorillaz The Mountain考察 #4】The Happy Dictator | 悪いニュースのない国で、心の宮殿は本当に明るくなるのか

To Gorillaz fans around the world: what if freedom from bad news becomes a prison of its own?

This is my reading of “The Happy Dictator.”

Please use your browser’s translation feature to read the full article.


悪いニュースが一切ない世界があったら、人は本当に幸せになれるのでしょうか。

“The Happy Dictator”は、明るくキャッチーなエレクトロ・ポップの姿をした、かなり辛辣な政治風刺だと思います。
この曲の怖さは、暗い音ではなく、明るすぎる音の中にあります。

デーモン・アルバーンがトルクメニスタンへの旅から着想を得たこの曲では、権力者が「悪いニュースのない幸福」を国民に与えます。
しかしその幸福は、自由な思考と引き換えに与えられる、フィクションとしての幸福なのではないでしょうか。

この記事では、GorillazとSparksが描いた「明るい独裁国家」の不気味さを、歌詞とサウンドの両面から読み解いていきます。

なお、この記事はあくまで僕個人の解釈であり、公式見解ではありません。
僕のフィルターを通したこの考察が、あなたに新たな視点をもたらすことを願っています。

また、この記事は、長いので気になるところだけを読み飛ばしていただいて大丈夫です。
ブックマークなどして、何回かに分けて読むのも良いかもしれません。


アルバム内でのこの曲の位置づけ

1曲目"The Mountain"では、「人生の修行場としてのタフな道のり」としての「山」が示されました。

2曲目"The Moon Cave"で「私」は、純粋さを失ってしまったために死者とつながることが出来ませんでした。

アルバムの3曲目にあたるこの曲では、架空の国を舞台に、純粋さを失ってしまった人々が描かれます。
そこでは「悪いニュース」が禁止され、権力者と国民は一見幸せに暮らしているように見えます。
しかしそれは「心の宮殿」というフィクションの幸福なのかもしれません。

概要

デーモン・アルバーンはBBC Radio 1で、この曲が娘とのトルクメニスタン旅行、そしてトルクメンバシ(「トルクメンの長/父」を意味する称号)ことサパルムラト・ニヤゾフの「悪いニュースを禁じる」ような統治イメージから着想を得たと語っています。

この曲は数年前に娘とトルクメニスタンに行った旅行がきっかけです。
トルクメニスタンにはトルクメンバシという独裁者がいました。
独裁者という言葉は、自分のやり方で何でもやりたいという人を表す、かなり曖昧で一般的な表現です。
彼はトルクメニスタンのすべての人に、世界の破滅に影響されずに幸せなことだけを考え、眠り、全てを明るく保つことを望んでいたということです。
彼は悪いニュースを一切禁止したんです。
そこにいた時、そのことに本当に衝撃を受けました。
半分は恐ろしく、半分はまあいいかな、という感じでした。
悪いニュースが一切ない世界があったら、本当に素晴らしいだろうな、と思いました。

ラジオでのデーモンの発言から抜粋要約

この曲のビジュアライザーには、チャップリンの映画『独裁者』を思わせる構図が登場します。
公式に明言されたオマージュかどうかは別として、独裁者を風刺コメディとして描くという点で、かなり強い連想を誘います。

「独裁者」のワンシーン

テーマと歌詞の解説

この曲のテーマは「フィクションの幸福」というのが僕の解釈です。

この曲では、権力者によって「知る権利」や「自分で考える自由」が制限され、その代わりにフィクションとしての幸福が与えられる構図が描かれているように思います。

この曲にはアメリカのロック&ポップ・バンドであるSparksのラッセル・メイルとロン・メイルが作曲面で参加し、ボーカルではラッセルが強い存在感を示しています。

Intro:救世主を待望する国民

僕はこの曲を、「権力者が聴衆である国民に対し演説する曲」だと解釈しました。

この記事では、「国民」をこの独裁国家に属する人々全体、「聴衆」を演説の場に集まり、その国民の全体ではないが概ねの声を反映させる存在として読んでいます。

つまりラッセルの声は、抽象的な国民の声であると同時に、目の前で権力者に拍手し、合唱している聴衆の声でもある、という解釈です。
ただし曲が進むにつれて、その区別は曖昧になっていきます。

[Russell Mael]
I am the one to give you life again
私はあなたに再び命を与える者
I am the one to save your soul, amen
私はあなたの魂を救う者、アーメン

Intro

このIntroは、聴衆が権力者を称える意味で、権力者目線の歌詞を歌っている構図だと思います。
もしかしたら演説会場で、聴衆がこれから演説する権力者を呼び込むようなシーンなのかもしれません。
聴衆は権力者に対し、救世主としての役割を期待しているような歌詞です。

ラッセルの澄んだ声は、聴衆の無垢さや陶酔を表しているように聴こえます。
ただし、その明るさはどこか演劇的で、少し不気味です。

Verse 1:国民を導く権力者

[2D, (Russell Mael)]
As the shadows, they are forming, come and join me centre stage
影が形作られていく、さあ、僕と一緒にステージ中央へ来てくれ
(Oh, what a happy land we live in)
(ああ、私たちはなんて幸せな国に住んでいるのだろう)

権力者の演説の場面だと思われます。危機を演出し自分を解決者として提示する、典型的な強権的支配者が使うレトリックです。

If you're empty and abstracted, and your broken heart is full of rage
もしあなたが空虚で上の空で、傷ついた心が怒りに満ちているなら
(Oh, what a happy land, oh, yeah)
(ああ、なんて幸せな国なんだ、ああ、そうだ)

"abstracted"は「抽象化された、上の空」ですが、疎外感といったニュアンスを感じます。僕には、ここが現代のSNSや情報過多の社会にも響いているように感じます。

In a world of fiction, I am a velvet glove
フィクションの世界では、私はベルベットの手袋だ
(Oh, what a happy land we live in)
(ああ、私たちはなんて幸せな国に住んでいるのだろう)

"velvet glove"は"an iron fist in a velvet glove"(ベルベットの手袋の中の鉄の拳)という慣用句の一部です。このあとのChorusでは「悪いニュースが禁止」されています。よってこのラインは、「悪いニュースが禁止された(fictionの)この世界において、自分(権力者)は表向きは優しいけれど実際は強権的な支配者である」という意味だと思います。

I am your soul, your resurrection, I am the love
私はあなたの魂、あなたの復活、私は愛です
(Oh, what a happy land, oh, yeah)
(ああ、なんて幸せな国なんだ、ああ、そうだ)

自分(権力者)はあなたにとって重要な存在である、と自らを神格化しています。

Verse 1

ラッセルは、「私たちはなんて幸せな国に住んでいるのだろう」と繰り返し歌います。

ラッセルの歌声はおそらく聴衆たる国民の声です。
ただし、これは単純な「権力者/国民」の二分法ではなく、権力者の言葉が国民の内面に入り込み、聴衆が権力者の望む言葉を歌っているようにも聴こえます。

Verse 1からは、「権力者の洗脳的な統治と、情報を制限され、幸福の物語を受け入れさせられていく聴衆の姿」といった構図が、僕には目に浮かびます。
権力者は、悪いニュースが溢れ情報過多になるSNSなどを制限することで、自身がまるで救世主であるかのように演出しているように感じます。

このVerse 1で描かれているのは、権力者が「危機」を語り、その危機から人々を守る存在として自分を提示する場面だと思います。
聴衆はその言葉に拍手し、合唱し、やがて「この人に任せれば幸せになれる」と信じ始めます。

この曲の怖さは、支配が暴力ではなく、安心感として始まっているところにあります。

Interlude:陶酔する聴衆

Ah, ah, ah, ah
Ah, ah, ah, ah
Ah, ah, ah, ah
Ah, ah, ah, ah, ah, ah, ah, ah

Interlude

この無邪気な“Ah”の反復は、明るい合唱のようでありながら、聴衆の思考が空白になっていくような印象を受けます。

Verse 2:取引する権力者

[2D, (Russell Mael)]
So look out to the west now, see where the devil lies
さあ、西の方角を見てみろ、悪魔がどこに潜んでいるか
(Oh, what a happy land we live in)
(ああ、私たちはなんて幸せな国に住んでいるのだろう)

これは権力者の定番のプロパガンダ手法です。仮想敵を作り、内部結束を高めています。幸福な国を作るためには、まず外側に悪魔を作る必要がある。ここに、この曲の政治風刺の鋭さがあります。

Its pharmakon is with you, and your empire, it is paralysed
その薬はあなたと共にあり、あなたの帝国は麻痺している
(Oh, what a happy land, oh, yeah)
(ああ、なんて幸せな国なんだ、ああ、そうだ)

"pharmakon"はギリシア語で「薬であり毒でもあるもの」です。ここでは、救済として差し出されるものが、同時に人を麻痺させる毒にもなる、という両義性を帯びているように感じます。このラインはおそらく、毒(情報制限)を薬として受け入れ疑問を持たせない(麻痺している)という意味だと思います。

I'll propagate eternity, and seal it with my kiss
私は永遠を広め、私のキスでそれを封印する
(Oh, what a happy land we live in)
(ああ、私たちはなんて幸せな国に住んでいるのだろう)

自分(権力者)は情報を制限し、それにより国民にフィクションとしての幸せをもたらす、ということだと思います。

So look into the coffin, and let me grant your wish
さあ、棺の中を覗いてごらん。そして、君の願いを叶えてあげよう
(Oh, what a happy land, oh, yeah)
(ああ、なんて幸せな国なんだ、ああ、そうだ)

棺は、国民の自我や批判精神が死んでいく場所のメタファーのようにも読めます。考えることを止めて従えば幸せにしてあげる、ということです。

Verse 2

Verse 2では、権力者が「フィクションとしての幸福」と引き換えに、自身に従うことを聴衆に提示しています。
まるでファウストの取引です。

Verse 1で権力者は、人々の前に「救済者」として現れました。
しかしVerse 2では、その救済が少しずつ支配へ変わっていきます。

怖いのは、ここでも権力者が乱暴に命令しているようには聞こえないことです。
むしろ優しく、親切で、安心させるような言葉で、人々を自分の作った幸福の中へ招き入れているように聞こえます。

Chorus:心の宮殿という美しい牢獄

[2D]
No more bad news
もう悪いニュースはない
So you can sleep well at night
だから夜はぐっすり眠れる
And the palace of your mind
そしてあなたの心の宮殿
Will be bright
明るくなるよ

Chorus

Chorusでは、「悪いニュースを制限したから、夜はぐっすり眠れるし、明るく過ごせる」状態を、「心の宮殿」として表現しています。
ただし、この明るさはフィクションなので、「心の宮殿」とは実は美しい牢獄なのかもしれません。

Interlude:膨れ上がる陶酔感

Ah, ah, ah, ah
Ah, ah, ah, ah
Ah, ah, ah, ah
Ah, ah, ah, ah, ah, ah, ah, ah

Interlude

”Ah"の合唱が、安心と明るさをもたらす権力者を賛美するかのようです。
聴衆の思考が、より空白化していく印象を受けます。

Verse 3:矛盾に満ちながら増大する幸福

[2D, (Russell Mael)]
Everything is slowing down, yet everything is faster
すべてが減速しているようで、同時にすべてが加速している
(Oh, what a happy land we live in)
(ああ、私たちはなんて幸せな国に住んでいるのだろう)

権力者の国の矛盾を示しています。そして同時に、我々の「現代社会の矛盾」を指摘している、と僕には思えます。

While everyone's consuming, I'll save you from yourself
皆が消費に溺れる中で、私はあなたをあなた自身から救う
(Oh, what a happy land, oh, yeah)
(ああ、なんて幸せな国なんだ、ああ、そうだ)

他の国では皆が情報過多に苦しんでいる(消費に溺れている)が、私の国では情報を制限する、または自己を消すことにより救われている、というのが僕の解釈です。

Upon this world of fiction, my love I will bestow
この架空の世界に、私の愛を捧げよう
(Oh, what a happy land we live in)
(ああ、私たちはなんて幸せな国に住んでいるのだろう)

And as we march into the future, happiness will grow
そして未来へと進むにつれ、幸福は増大していくだろう
(Oh, what a happy land, oh, yeah)
(ああ、なんて幸せな国なんだ、ああ、そうだ)

Verse 3

Verse 3で権力者は、心の宮殿(牢獄)内のフィクションとしての幸福をアピールしています。

Chorus:美しい牢獄を受け入れる国民

[2D, Russell Mael]
No more bad news
もう悪いニュースはない
So you can sleep well at night
だから夜はぐっすり眠れる
And the palace of your mind
そしてあなたの心の宮殿
Will be bright
明るくなるよ

Chorus

1回目のコーラスは主に2Dによって歌われていましたが、2回目のコーラスでは2Dとラッセルが一緒に歌います。

権力者と国民の想いがひとつになった印象を受け、まるで独裁統治国家が徐々に完成に向かっているかのようです。

明るいコーラスに、ゾッとするような皮肉が潜んでいます。

Bridge:加速する幸福

[Russell Mael, 2D]
Everything is slowing down, yet faster
すべてが減速しているのに、同時に速くなっている
(Will be bright)
(明るくなるよ)

And consuming, I'll save you from yourself
皆が消費に溺れる中で、私は君を君自身から救う
(Will be bright)
(明るくなるよ)

My love bestowed on this world of fiction
このフィクションの世界に捧げる私の愛は
(Will be bright)
(明るくなるよ)

We march to the future, happiness grows
私たちは未来へ向かって進み、幸福は育っていく
(Will be bright)
(明るくなるよ)

Are you not better off than ever?
あなたはこれまで以上に恵まれた状況にあるんじゃない?
(Will be bright)
(明るくなるよ)

And are you not better off right now?
そして、あなたは今の方がずっと良い状況にあるんじゃない?
(Will be bright)
(明るくなるよ)

"When have you felt this way?", I ask you
「いつこんな気持ちになったの?」と私はあなたに尋ねる
(Will be bright)
(明るくなるよ)

When have you felt better off than now?
今より気分が良いと感じたのはいつ?
(Will be bright)
(明るくなるよ)

Bridge

Bridgeでは、ラッセルが権力者の言葉を歌っています。
権力者の言葉が徐々に聴衆の内面に入り込み、聴衆自らが権力者の言葉を反復しているように感じます。

2Dはまるで指揮者の様に、ときどき合いの手的に歌うだけです。
聴衆は自発的に美しい牢獄を賛美し始めており、プロパガンダが完成しつつあるような印象を受けます。

Interlude:支配の完成

[Russell Mael]
I am the one to give you life again
私はあなたに再び命を与える者
I am the one to save your soul, amen
私はあなたの魂を救う者、アーメン

Interlude

Introと同じ歌詞が再び歌われます。
同じ歌詞でも、今回は聴衆が権力者を救世主として確信している印象を受け、ゾッとします。

Chorus:フィクションとしての幸福の謳歌

[2D & Russell Mael]
No more bad news
もう悪いニュースはない
(Mountains and rainbows)
(山と虹)

You can sleep well at night
だから夜はぐっすり眠れる
(Palaces)
(宮殿)

And the palace of your mind
そしてあなたの心の宮殿
(Of love)
(愛の)

Will be bright
明るくなるよ
(Mountains and rainbows)
(山と虹)

You can sleep well at night
だから夜はぐっすり眠れる
(Palaces)
(宮殿)

And the palace of your mind
そしてあなたの心の宮殿
(Of love)
(愛の)

Will be bright
明るくなるよ

Chorus

3回目のChorusでも2Dとラッセルが一緒に歌います。
権力者の言葉は聴衆の内面に刷り込まれ、国民はフィクションとしての幸福を謳歌しているように感じます。

美しい牢獄は完成しました。
この曲の中で最も明るく、ゾッとするような皮肉が効いたパートです。

なお、面白いのは、ここにきて「山と虹」という言葉が突然出てきたことです。
一見、明るさを補強するための歌詞ともとれますが、文脈的にちょっとそぐわない気がします。

"The Mountain"における本物の山は、死、喪失、自己との対面を伴う厳しい場所です。
一方、ここで歌われる「山と虹」は、山を苦痛のない装飾へと変えた、まるでポストカードのような景色です。
つまりここにあるのは山そのものではなく、山のフィクションなのではないでしょうか。

僕は、「山と虹」という歌詞は、「心の宮殿」が「純粋な心」と精神的にもっとも遠い場所であることを象徴しているように思います。
この曲は、権力者と聴衆が「純粋な心を徐々に失っていく」歌なのだと思います。

Outro:一体化する権力者と国民

[2D]
(Will be bright)
(明るくなるよ)
The palace of your mind
あなたの心の宮殿
Will be bright
明るくなるよ
(So you can sleep well at night)
(これで夜はぐっすり眠れる)

And the palace of your mind
そしてあなたの心の宮殿
Will be bright
明るくなるよ
(So you can sleep well at night)
(これで夜はぐっすり眠れる)

And the palace of your mind
そしてあなたの心の宮殿
Will be bright
明るくなるよ
(So you can sleep well at night)
(これで夜はぐっすり眠れる)

And the palace of your mind, woo…
そしてあなたの心の宮殿、う~…

Outro

Outroでは、もはや権力者が外側から語りかけているというより、権力者の言葉が聴衆の内面に入り込み、聴衆の頭の中で権力者の声が反復されているように聞こえます。

支配の完成とは、命令されることではなく、自分の心の中でその言葉を繰り返してしまうことなのかもしれません。

歌詞全体のまとめ

全体の歌詞を振り返ると、権力者と聴衆の双方が徐々に近づき、心の宮殿という美しい牢獄が完成していく様が描かれています。

曲の後半で「もう悪いニュースはない」「夜はぐっすり眠れる」「あなたの心の宮殿」「明るくなるよ」といったワードが繰り返され、これがだんだん怖くなります。

この曲の歌詞は、表面上は明るいのですが、その裏にダークで辛辣な皮肉が隠れています。
まるで全体主義のプロパガンダです。

この曲で描かれる幸福は「フィクションの幸福」です。
僕は、この曲に登場する「独裁する権力者」と「自分で考える自由を手放した国民」は、どちらも純粋な心を失ってしまった状態なのだと思います。

サウンドとプロダクション

クレジット

《プロデュース》

  • Gorillaz

  • ジェームス・フォード

  • サミュエル・エグレントン

  • レミ・カバカ・ジュニア

《作詞作曲》

  • ラッセル・メイル

  • デーモン・アルバーン

  • ロン・メイル

《インド楽器》

  • バンスリ(インドの竹笛):アジャイ・プラサンナ

  • パーカッション:ヴィラージ・アチャリヤ

解説

キャッチーで明るいエレクトロ・ポップです。
Gorillaz的でもあり、Sparks的でもあります。

初めて聴いたとき、僕はこの曲を明るくキャッチーな曲として楽しんでいました。
2回目のコーラスなんて、「おぉ、このSparksっぽいGorillazソングでラッセルと2Dが一緒に歌ってる!」なんて、無邪気に興奮していたものです。

しかし「明るくなるよ」という言葉が何度も繰り返され、歌詞の意味やボーカルの構図を追っているうちに、このキャッチーさがだんだん怖くなってきました。

ラジオボイス処理されたいつもの2Dのボーカルが、この曲ではまるで拡声器で演説しているかのように聴こえます。
一方、ラッセルのボーカルはどこかドリーミーな雰囲気が漂います。
演説する権力者と、夢見がちに権力者に従う聴衆をよく表しているように思います。

デーモンはSparks参加について、「Sparksが必要な曲だと思った」と語っています。
Sparksの音楽には、昔から「明るいのにどこか不気味」「楽しげなのに笑っていいのかわからない」ような、独特の演劇性があります。

ラッセル・メイルの歌声は、祝祭の合唱にも、宗教的な賛美にも、狂った国歌にも聞こえます。
この曲では、Sparksが参加することで「幸福な国」のユーモアと怖さが同時に増幅されているように感じます。

デーモンの狙いは、気持ちいいくらい完璧にハマっています。
これまでもGorillazが得意としてきた「ポップさで包み込んだディストピア」の手法が、Sparks参加でより際立っています。

この曲で本当に怖いのは、独裁者だけではないのかもしれません。
「悪いニュースはもうない。だから安心して眠れる」
その言葉に、ほんの少しでも救われたいと思ってしまう僕たち自身の心です。
僕たちも毎日ニュースやSNSに疲れているからこそ、この曲の誘惑を完全には笑えません。

"The Happy Dictator"は、独裁者の歌であると同時に、情報に疲れ、誰かに心の宮殿を明るくしてほしいと願ってしまう我々現代人の歌でもあるのだと思います。
フィクションは人を自由にすることもあれば、人を閉じ込めることもある。
この二面性が、この曲の怖さだと思います。

そしてGorillazはそもそも、架空のキャラクターが現実の音楽を鳴らすプロジェクトです。
だからこの曲の“world of fiction”という言葉は、独裁者が作る虚構の国家だけでなく、Gorillazというプロジェクトそのものにもメタ的に解釈できます。

Gorillazはこれまでも、“Demon Days”では終末感とポップを、“Plastic Beach”では消費社会と快楽を、“Humanz”では政治的不安とパーティ感覚を同時に鳴らしてきました。
“The Happy Dictator”もその系譜にある曲だと思います。

明るいから怖い。
楽しいから逃げられない。
そこがGorillazらしいと思うのです。

最後に

最後まで読んでいただいてありがとうございます。

皆さんはこの曲をどう感じましたか?
音楽は開かれたナラティブです。
リスナーの数だけ解釈や感想があって良いと思います。
是非皆さんの感想をコメントや「スキ」で教えてください。

この記事の解釈をお楽しみいただけたなら、ぜひシリーズの他の記事もご覧ください。

僕の視点が、Gorillazファンに"The Mountain"への新たな入り口を提供できれば幸いです。


Thank you for reading.

Next, we leave this manufactured happiness behind and face “The Hardest Thing.”

I hope you’ll continue the journey with me.

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