「ルールを守れ」と言う前に、そのルールを減らしたほうがいい。
会社には、たくさんのルールがあります。
作業前に確認する。
終わったら記録する。
ここにサインする。
この場合は上司へ報告する。
この書類を保存する。
このチェック表へ記入する。
もちろん、ルールは必要です。
特に、
安全。
品質。
法令。
顧客との約束。
こうしたものを守るためのルールは、簡単になくしてはいけません。
ただ、長く会社で仕事をしていると、一つ気になることがあります。
ルールは増えるのに、なかなか減らない。
ということです。
ミスが起きるたびに、ルールが一つ増える
例えば、ある確認漏れが発生したとします。
対策会議をする。
原因を調べる。
そして、
「今後はチェック表に確認欄を追加しましょう。」
となる。
半年後。
別のミスが発生する。
「では、ダブルチェックにしましょう。」
さらに一年後。
別の問題が起きる。
「管理者の承認も追加しましょう。」
こうして、
最初は一人で確認していた仕事が、
確認。
チェック。
ダブルチェック。
承認。
記録。
保存。
と増えていきます。
一つひとつには理由があります。
だから誰も、
「不要です。」
と言いにくい。
結果として、
仕事より確認するための仕事が増えていく
ことがあります。
「ルールを増やす」は一番簡単な再発防止
問題が起きたとき、
「今後気をつけます。」
では弱い。
だから仕組みにする。
これは正しい考え方です。
ただし、
仕組みにすることと、
チェック項目を増やすことは同じではありません。
例えば入力ミスが多いなら、
入力後に3人で確認する方法もあります。
でも、
そもそも間違った値を入力できないようにする方法もあります。
私は後者のほうが強いと思っています。
人間の注意力を前提にした仕組みには限界がある
「必ず確認してください。」
「注意してください。」
「忘れないでください。」
会社ではよく使われる言葉です。
でも、人間は忘れます。
忙しい日もあります。
集中力が落ちる時間もあります。
新人も入ります。
だから、
「人が完璧に注意すれば成立する仕組み」
には限界があります。
優れた仕組みは、
注意しなくても間違えにくい。
迷わない。
異常なら止まる。
間違えたら気づける。
そんな状態です。
10個の重要ルールと、100個のルール
例えば職場Aには、
本当に重要なルールが10個あります。
全員が理解している。
なぜ必要なのかも知っている。
一方、職場Bには100個あります。
新人は全部覚えられない。
ベテランでも曖昧。
いつ作られたルールか分からない。
守られていないルールもある。
どちらが安全でしょうか。
単純に、
ルールが多い=安全
とは言えません。
むしろ重要なルールが、
大量の細かいルールに埋もれてしまうことがあります。
守られていないルールを放置するのは危険
私は、
「このルール、実際は誰も守っていません。」
という状態を放置するのは良くないと思っています。
不要なら廃止する。
必要なら守れる方法に変える。
どちらかです。
なぜなら、
一つのルールを守らなくても何も言われない状態が続くと、
社員は少しずつ、
「ルールは守らなくてもいいもの」
と学習するからです。
その感覚が、本当に重要な安全ルールや品質ルールにまで広がることが怖い。
「なぜこのルールがあるのか」を説明できるか
私はルールを見るとき、
一度この質問をしてみる価値があると思っています。
「これは、何を防ぐためのルールですか?」
すぐ答えられる。
なら目的があります。
でも、
「昔から。」
「前任者が決めた。」
「たぶん何かあったんだと思う。」
となる。
これだけで廃止していいわけではありません。
過去に重大な問題があって作られた可能性もあります。
だから調べる。
そして目的が分かったら、
今でも同じ方法で守る必要があるのか
まで考えます。
昔は必要でも、今は不要なルールがある
例えば10年前。
紙で管理していた。
だから、
担当者が記入。
別の人が確認。
管理者が承認。
ファイルへ保存。
というルールだった。
現在。
システムで自動記録される。
入力履歴も残る。
異常値なら警告も出る。
それでも昔と同じ紙の確認を続けている。
これなら、
仕組みが変わったのに、
ルールだけ昔のまま残っている
可能性があります。
管理職は「ルールを作る人」だけではない
管理職になると、
問題を防ぐためにルールを作る場面があります。
でも私は、
管理職にはもう一つ役割があると思っています。
ルールを減らすことです。
一年に一度でもいい。
今あるルールを並べる。
そして、
必要。
変更。
統合。
廃止。
に分ける。
ルールにも棚卸しが必要です。
ルールをなくすのは、作るより難しい
新しいルールを作ると、
「対策しました。」
と言えます。
一方、
既存ルールをなくして問題が起きたら、
「なぜなくしたんだ。」
と言われます。
だから管理職は、
増やすほうが心理的に安全です。
でも、その結果、
現場の負担だけが積み重なる。
だから廃止するときは、
感覚ではなく、
リスクを確認してから減らす。
必要なら一部の部署だけ試す。
一定期間止める。
問題がないか確認する。
こうすれば、無理に一気に変える必要はありません。
良いルールには「期限」があってもいい
例えばトラブル対策として、
「今後3か月間、追加確認を行う。」
そして3か月後、
結果を確認する。
問題がなければ、
通常運用へ戻すのか。
継続するのか。
別の方法へ変えるのか。
判断する。
私は、
追加対策を永久ルールにしない
という考え方も重要だと思っています。
問題が起きるたびに永久ルールを追加していたら、仕事は永遠に増えていくからです。
「守らせる」より「守れる状態を作る」
ルール違反が起きたとき、
「もっと徹底してください。」
と言う。
でも、それだけで変わらないなら、
人だけを責めても仕方ありません。
ルールが複雑すぎないか。
見つけにくくないか。
現場の実態と合っているか。
教育されているか。
守る時間が確保されているか。
そもそも必要性を理解しているか。
ここまで見る。
守れない人を探すより、守れない理由を探す。
管理する側には、この視点も必要です。
本当に強い会社は「ルールが多い会社」ではない
私は、
ルールが多い会社が管理されている会社だとは思いません。
むしろ、
重要なルールが明確。
理由も分かる。
誰でも守れる。
不要になったら見直される。
そして、
ルールで縛らなくても判断できる部分は、社員へ任せる。
このバランスが大切です。
次に職場で、
「新しいルールを追加しましょう。」
という話が出たら、
一度だけ考えてみてください。
「ルールを一つ増やす以外に、この問題を防ぐ方法はないだろうか?」
入力そのものを制限する。
表示を変える。
配置を変える。
自動で警告する。
作業そのものをなくす。
教育方法を変える。
別の選択肢があるかもしれません。
そして、新しいルールを一つ作ったなら、
古いルールを一つ見直してみる。
会社を強くするのは、
社員を100個のルールで縛ることではありません。
本当に守るべき10個を、全員が当たり前に守れる状態を作ること。
「ルールを守れ。」
と言い続ける前に、
そのルール自体が、
今の仕事に本当に必要なのか。
管理する側ほど、一度立ち止まって考える価値があると思っています。
