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連れ添って20年。あの日、「もうだめだ」と思った。

2月18日。
この日は私にとって特別な日だ。

結婚記念日としてふたりで選んだこの日は、私と夫がその昔、お付き合いをはじめた記念日でもある。

2006年の2月18日。
私は、はりきりすぎの高校デビューがいったん落ち着きだした高校1年生。夫はバドミントン部の部長として精を出す、真面目な高校2年生だった。

今日は2026年2月18日。
結婚したのは2014年なので、結婚12周年。
ただし、付き合ってからの換算でいえば、私たちは連れ添って20周年。
今年は私たちにとってSpecialなyearなのである。
Yeah!めっちゃanniversary!である。
あややの推し曲は、めっちゃホリデイよりも、LOVE涙色である。


話を戻す。


16歳と17歳だった若きふたりは、たまに些細な喧嘩をしつつも、とくに離れる危機を感じることもなく、穏やかに年をとって36歳と37歳になった。


当時のふたりは知る由もない。
ここから私が子ども5人を生み、7人の大家族をブチ上げることになるだなんて・・・。




ということで、20周年である。
この歴史をつづっていたら当然ながら何万字をかけても一生終わらないわけなので、なぜ高校デビューに張り切りすぎた派手好きオンナが、マジメ一辺倒(に見えただけで実はそうでもない)、オシャレにまったく興味のなかった垢ぬけねえオトコに惚れちまったのかを話す。

(めちゃくちゃ前評判落とすやん)


高校1年生の秋。
私はすっかりバドミントンにおいてスランプに陥っていた。その焦りから自分のフォームを見失い、肩を痛めてしまったのだ。
大きな病院に行ったら、やたらと大げさな病名を言い渡されてしまった。その病名は忘れた。とにかく、肩が外れやすくて、その骨がズレて肩の血管を圧迫しているようだった。リハビリに通いつめて肩を鍛えることとなった。

「これじゃあバドミントンは向かないんじゃないかなあ。ダンスとかやったらどう?」

整形外科のおじいちゃん先生に適当なことを言われて、私はふざけんじゃねえとブチギレながらリハビリに明けくれた。

筋トレマニア★しいも誕生の瞬間である。

その後の団体戦は、私と同じ1年生のふたりが抜擢された。中学から実力を重ねて、はるかに私よりも上手だったふたり。彼女たちがさらに離れて遠くに行ってしまうようで、私は悔しくて悲しかった。

狭い会場でコートサイドにも立てずに、体育館の上から声を出して試合を見守る。それしかできない自分が情けなく、私は座り込む。
そのとき、観覧席の格子を強く握る私の手に、カサッと袋がふれる音がした。

「髙塚さん。あげるよ」

見上げると、先輩が袋に入ったお菓子を差し出してくれていた。
彼は当時、小さい背をカバーするように、目いっぱい髪の毛をとんがらせていた。ベッカムヘアー、と称しても、まだ周りには通じる頃だった。でもベッカムには程遠い身長だね、という逆効果な感想をいただきそうなほどにベッカムヘアーだった。

「あ、ありがとうございます……え、これ、手作りですか?」

「うん、そうだよ。俺ら試合に出られないし、これくらいしかできないと思って」

その袋の中には、手作りの大きなクッキーがたくさん入っていた。かわいらしいアンパンマンの袋に入っていたそれを、そっと一枚取り出す。まるでカントリーマアムのような、分厚くて食べ応えのある、素朴なクッキー。

「うま。めっちゃおいしいですよ。びっくりした~」

私が驚いてそういうと、彼は「よかった」と心底うれしそうな顔をした。
当時の男子部員は彼を含めて4人。団体戦への出場権すらなかった。彼はシングルスでいつも市内の上位に食い込む実力はあったから、きっとずっと、私よりもこの場にいて悔しいはずだった。
それなのに。団体戦の出場をする仲間のために、なにができるかを考えて。クッキーを焼いてくるなんて。

そんな選択肢、とる? と、思った。
アータはぜったいそんなことできないでしょ?と、私の中のデヴィ夫人が自らを蔑んだ。しかし、脳内のデヴィ夫人はクッキーがちょうど大好物だった。

クッキーをたいらげた私は格子を強く握り直し、仲間たちに声援を送った。隣で、髪をとんがらせながら先輩も大きな声を出した。


「みんなお疲れ様~」

試合の後の帰り道。
みんなで、先輩のクッキーをほおばりながら帰った。先輩は袋にぱんぱんにクッキーを詰め込んできたので、部員全員に配り終えても何枚か余った。

「じゃあこれ、あとは髙塚さんに全部あげるね」

先輩はそういって、私の手にそれを雑にのせた。私はあわててそのアンパンマンたちを抱えなおした。

「ええ、いいんですか、私で。私、今日なんもしてない人なんですけど」

その言葉を聞いた先輩は、前を歩く男子たちに合流するために走り出した。

「いや、めっちゃしてたでしょ! 応援!」

先輩はそう言い残した。
そしてそのまま足早に、ぐんぐん前を進んでいってしまった。



その後ろ姿。いつまでも乱れぬベッカムヘアーを眺めながら私は、「ああもうだめだ」と思った。



バドミントンにまっすぐに向き合っている先輩のことは、気になっていた。だけどそれは、中学から付き合っていた当時の元カレと、うまくいかなくなってきた時期でもあって、単にまわりの男性に惹かれているだけだと思っていた。だからこそ、つい先日元カレに別れを告げて、心機一転、バドミントンに集中しようとした矢先。


もうだめだ。認めるしかない。こんなの。


───こんなん。もう好きじゃん。


私は、すっかり観念したのである。


そしてその日以降。
しいものモーレツ★アタック!の日々が、静かに幕を開けるのであった。

そのアタックはいずれ彼に届くのだが、それはまた……別のはなし。






最後に私のキモイ部分をさらしておく。
当時もらったクッキーがあまりにもうれしくって。
ずっとずっと、いまだに袋を大切に実家に保管しているのである……


先日実家に行ったときに撮影。
どうだ。キモイだろう。
21年ものだ。

いまだにクッキーの袋を保管しているだなんて、どう考えてもキモイの極み乙女でしかないのだが。

「毎年もっと大好きになる」
「スキの気持ちがてっぺんを知らない」

当時は恥ずかしさが勝ってまったく言ってくれなかった言葉を、今や当たり前のように量産してくれるこのThe best husband。

国民栄誉賞を与えたいレベルに成長した先輩のこと。
来年も10年後も20年後も、この私が大切にしないわけがないのである。





なぜか背比べをする
当時の写真。
わたし、うれしそうだ。




Dear my husband.
Thank you for 20 years.


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