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選ぶ時間を、思い出す

モーニングを食べながら、コーヒーを飲んでいるときに
ふと、「今日はボールペンを買いに行こう」と思いました。
それだけのことなのに、心の奥に小さな灯りがともるような感覚がありました。

子どものころ、実家の近くにあった文房具屋さん。
少しだけインクの匂いがして、棚には色とりどりのノートやペンが並んでいて。
どれにしようか迷う時間が、なぜだかとても好きでした。

少し大きくなってからは、街中の大きな文房具店にも行くようになって。
選べるものが増えた分、わくわくも広がっていった気がします。

でも、いつからでしょう。
文房具を「買うこと」は、いつの間にか「必要だから選ぶこと」に変わっていました。
急いで手に取って、迷わずレジへ向かう。
あの頃の、立ち止まる時間や、手に取って眺める余白は、どこかに置いてきたままでした。

ここ数年、また少しずつ、文房具屋さんに足を運ぶようになりました。
理由はうまく言えないけれど、
ただ「見ていたいな」と思う時間が戻ってきた気がします。

ペンを一本選ぶだけなのに、
書き心地を試してみたり、色を比べてみたり。
その時間が、どこか自分をやわらかくしてくれるようでした。

大きな変化ではないし、
誰かにとっては、ほんの些細なことかもしれません。

それでも、
「今日はボールペンを買いに行こう」と思えること。
その小さな楽しみが、ちゃんとここにあること。

それだけで、少しだけ呼吸が深くなる気がします。

もしかしたら、忘れていたのは「文房具」ではなくて、
立ち止まって選ぶ時間そのものだったのかもしれません。

いま、どんなふうに何かを選んでいるだろう。
もしよかったら、急がずに選べるものがあるとしたら、それは何だろう。

今日のどこかで、
少しだけ立ち止まれる時間が、ありますように。


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