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一冊に決めなくていい 読書のしかた

夕方の光が、少しだけやわらいで部屋に差し込んでいる。
一日の終わりに近づくこの時間、コーヒーの湯気がゆっくりとほどけていくのを眺めながら、今日はどの本を 開こうかと、静かに手を止める。

机の上とiPadの中には
読みかけの本が何冊か並んでいる。
次の瞬間を待っている物語たち。

少しだけ、物語の中に身を置きたい夕方は、
喫茶店を舞台にした小説を手に取る。
カップの触れ合う音や、誰かの会話の余韻が、こちらの時間ともゆるやかに重なっていく。

ページをめくるときもあれば、
耳でその世界に触れることもある。
目で追うのとはまた違うリズムで、物語が内側に流れ込んでくる。

一方で、頭がすっと冴えているとき。
何かを学びたい、整えたい、そんな気持ちがある日は、
自己啓発や、ノートや手帳を書くことのついて書かれた本を開く。

言葉を受け取るというより、
どこか自分の内側をなぞるような時間になる。

気がつけば、いつも数冊の本を同時に読んでいる。
朝の数分、移動の合間、夜の静かなひととき。
そのときの気分に合わせて、本を選び直している。

以前は「一冊を読み切ること」がどこか目的のようになっていたけれど、
いまは「いまの自分に合う一冊に触れること」のほうが、しっくりくる。

そんなふうに読んでいるうちに、
一週間で5〜6冊ほどの本に触れるようになっていた。

読書のスピードが上がったのかもしれない。
けれどそれ以上に、短い時間でも、そのときの自分に合った言葉に出会おうとしているから、
ひとつひとつの読書の深さが、少しずつ変わってきているような気もしている。

たくさん読もうとしたわけではなくて、
ただ、そのときの自分に耳を澄ませていただけなのかもしれない。

だから、もう少しこの読み方を続けてみようと思う。
急がず、比べず、その日の気分とともにページをめくることを。

もしよかったら、
いまのあなたは、どんな本に手を伸ばしたくなるだろう。

その一冊は、どんな時間に寄り添っているだろう。

今日のどこかで、
その問いが、静かにひらいていきますように。

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