《書体のはなし》 #46 フランスっぽい書体 “Banco”
ビジネスに使えるデザインの話
ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。
Banco(バンコ)

カテゴリー:デコラティブ
デザイナー:ロジェ・エスコフォン(Roger Excoffon)
ファウンダリー:Olive
リリース:1951年
Banco(バンコ)は、タイトル用のディスプレイ書体で、1951年にFonderie Olive鋳造所のためにロジェ・エスコフォン(Roger Excoffon)によってデザインされました。この書体は、1981年に創刊されたスケートボード雑誌『Thrasher』の書体として世界的には有名です。

source: Dusk
Thrasherのウェブサイト
1991年にはフィル・グリムショー(Phill Grimshaw)がITCのためにリバイバルおよび拡張を行い、小文字と第2のライトウェイトを追加しました。2000年にはタギール・サファエフ(Tagir Safayev )がParaTypeのためにキリル文字版をデザインしました。
エクスコフンの後期の書体 Mistral や Choc と同様に、Banco は人目を引くことを目的としてデザインされました。デザイナーのサイラス・ハイスミス(Cyrus Highsmith)は、その特徴を「率直で大胆な華やかさ(outspoken flair)」と評しています。
発表当時、この書体は多くのデザイナーから時代遅れで魅力に欠けると見なされ、主にヨーロッパの小規模事業者によって使用されていました。しかし、1974年のボブ・マーリーのアルバム『Natty Dread』のジャケットに採用されたことで再び注目を集め、その後多くのレゲエ作品に使われるようになりました。レゲエやダブ文化から強い影響を受けていたスケートボード雑誌『Thrasher』も、1981年の創刊号およびその後の号でこの書体を採用しました。また、PK Ripper BMX、自転車関連製品、テレビシリーズ『Darkwing Duck』、ビデオゲーム『Shinobi Legions』などにも使用されました。
エクスコフン自身はBancoの小文字をデザインしていませんでしたが、2000年にフィル・グリムショーとITCフォントファウンドリーが、軽量化されたバージョンを発表し、小文字を追加しました。同年にはキリル文字版も制作されました。

Source: www.rootsvinylguide.com License: All Rights Reserved. Via Fonts in Use.
書体デザイナー、ロジェ・エスコフォン(Roger Excoffon)

source: bruno bernard typographie
ロジェ・エスコフォン(Roger Excoffon)(1910–1983)は、フランスの書体デザイナー、グラフィックデザイナー。マルセイユに生まれ、エクス・アン・プロヴァンス大学(the University of Aix-en-Provence)で法律を学んだ後、パリに移り、印刷所で見習いをします。1947年(37歳)、自身の広告代理店を設立し、同時にマルセイユの小さな鋳造所「オリーブ鋳造所(Fonderie Olive)」のデザイン・ディレクターに就任。
ロジェ・エスコフォン氏がデザインした他の書体
Mistral(1953)

By Betulo92 - Own work, CC BY 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=12220744
Calypso(1958)

By Betulo92 - Own work, CC BY 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=12220691
Antique Olive(1962-1966)

By Betulo92 - Own work, CC BY 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=12220680
エスコフォンの書体で最も有名なのはMistralとAntique Olive(アンティークオリーブ)で、後者は1962年から1966年にかけてデザインされました。ロジェ・エスコフォン氏の最大のクライアントだったエールフランス(Air France)は、新しいロゴが導入される2009年まで、ロゴとしてAntique Olive(アンティークオリーブ)をカスタマイズしたものを使用していました。
ロジェ・エスコフォンの書体は、一見地味に見えるサンセリフのAntique Oliveでも有機的な躍動感が備わっています。
Banco(バンコ)の使われ方
書体Bancoに戻りますが、このちょっと現代の日本人視点からは使いづらい書体はどのように使われているのか、その実例を見ていきましょう。
映画『気狂いピエロ』(1965)

Via Fonts in Use.
ジャン=リュック・ゴダール監督の1965年のフランス・イタリア合作映画『気狂いピエロ』(きちがいピエロ、フランス語: Pierrot Le Fou)。アンナ・カリーナ、ジャン=ポール・ベルモンド主演。日本公開は1967年。
Boucherie Chevaline(フランス南東部にある肉屋さん)

Via Fonts in Use
フランスでは、Bancoからインスピレーションを受けた手描きの文字をまちなかに多く見かけるようです。
ジル・マルシャル(Gilles Marchal)のポスターか楽譜

via Fonts in Use
ジル・マルシャル(Gilles Marchal)がカバーしたリー・ヘイズルウッドの曲、「Pauvre Buddy River」のポスターもしくは楽譜。
映画『ビッグ・リボウスキ』のポスター(1998)

via Fonts in Use
ボブ・マーリーのアルバム『Natty Dread』の広告

via Fonts in Use.
ボブ・マーリーのアルバム『Natty Dread』の発売を告知する Island Records の雑誌広告 (出所不明)。
まとめ
このBancoという書体、誕生した国である「フランスらしい」かといえば、そういうわけでもく、この「整っているがカジュアルである」というキャラクターが書体の本質であり、らしさです。鎌倉にあるタイだったかなー、アジア料理のレストラン・カフェのロゴにも使われていました。それに違和感があるかといえば、無くよく馴染んでいました。Bancoには、ちょっとした野暮ったさがあるようにみえるんですが、なんというか不思議な、劣化しない親しみやすさがあります。
いや、やっぱりちょっと「フランスっぽさ」はある気がします……。フランスらしさを演出するのに有効というわけじゃないんですが。
参照
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