見出し画像

歯医者さんが、こわかったあの子のこと…



歯医者さんが、どうしても嫌いだった小さなお子さんがいました。
泣いてしまう日も、体が固まってしまう日もあって、
一番困っていたのは、きっとママだったと思います。

「連れて行かなきゃいけない」
「でも、嫌がる姿を見るのがつらい」

そんな気持ちの板挟みの中で、
ママもまた、毎回が精一杯だったのではないでしょうか。

歯医者が怖いのは、わがままでも、弱いからでもありません。
小さな心が、自分を守ろうとしているだけ。

だから私たちは、無理をさせませんでした。
泣いてもいい。
座れなくてもいい。
今日はお話だけでもいい。

その子のペースを、大切にしました。

少しずつ、少しずつ。
表情が変わり、声が変わり、空気が変わっていきました。

そしてある日。
ママが、少し驚いた顔で教えてくれました。

「最近、この子が“次はいつ歯医者さん?”って聞くんです」

その言葉を聞いたとき、
胸の奥が、じんわりとあたたかくなりました。

歯医者さんが「怖い場所」から
「安心できる場所」に変わった瞬間。

その変化は、決して特別なことではありません。
ただ、その子の心に、ちゃんと寄り添えた結果だと思っています。

私たちスタッフも、そして私自身も、
この瞬間に立ち会えたことが、本当にうれしい。

歯医者が嫌いだったあの子が、
今は楽しそうに通ってくれている。

それだけで、
今日もこの仕事をしていてよかったと、
心から思えるのです。

いいなと思ったら応援しよう!