「なぜ?」の編集者、「どんな?」の執筆者
こんにちは。前回の投稿から、少し間が空いてしまいましたが、皆さまお元気でしょうか。
6月に入って、編集者やライター、広報のお仕事が立て込んでいます。いやはや嬉しい悲鳴…。(そして、そんなタイミングで書きたくなるのがnote。てへ)
今日は、編集者になるか、ライターになるか、キャリアにお悩みの方の参考になるお話を書きます。また、フリーランスなのか会社員なのか、働き方についてもお伝えしますので、興味がある人は、ぜひ、読んでいってください。
編集者になりたいなら「出版社」一択か?
ここのところ、KADOKAWAをはじめ、出版社のフリーランス法違反が報道されています。これまでもライターやフォトグラファーなどフリーランスへの発注をめぐり、公正取引委員会は大手出版社に対してフリーランス法や取適法(旧・下請法)の違反を認定し、改善勧告をたびたび行ってきました。
またか、という感じですが、社会的に影響力が大きい会社だからこそ、きちんと法律に則り、正しい契約・発注をしていただきたいという気持ちはあります。
このニュースからもわかりますが、「編集者=発注者=出版社」、「ライター=受託者=フリーランス」の構図は、出版業界では一般的です。
これから出版業界に入りたいという人にとっては、少しわかりにくいところがあると思いますので、簡単に解説します。
<書籍編集の場合>
出版社の正社員が編集者として、書籍の企画~制作~販売・マーケティングまで一連の舵取りをすることが一般的です。ただし、制作の部分の「編集」作業をフリーランスの人が受託するケースや、フリーランスが自ら企画持ち込み採用となった場合には編集・執筆を自ら行う場合もあります。
<雑誌編集の場合>
出版社の正社員が編集部に所属し、編集長の下、チームで行うことが一般的です。特集記事をまるっと編集プロダクションに発注しているケースは、わりあいあります。一方、特集や連載の編集作業をフリーランスに発注するケースは、ゼロではありませんがあまりありません。
そういう意味で、編集者としてバリバリやりたいとお考えなら、出版社に入るか、出版社をつくるかするのが手っ取り早いです。なぜなら、編集の仕事というのは、とても領域が広く、一人でできることは限られているからです。未経験者の場合、出版社に入ることをお勧めします。
一方で、ライターやジャーナリストはどうでしょうか。いずれもフリーランスが多い職種です。
<書籍の執筆の場合>
基本的に著者と呼ばれ、出版社外の文筆家に依頼するケースがほとんどです。また、有名経営者や実業家などの場合、書籍専門のライターやゴーストライターが執筆をすることも一般的です。それらライターを、フリーランスや編集プロダクションへ委託するのは一般的です。
<雑誌の執筆の場合>
基本的には「著者」や「執筆者」と呼ばれ、社外の文筆家に依頼するケースが多いです。ただし、すべてのページがそうというわけではなく、特集やニュース、プレゼント企画など、こまごましたページは編集者自身が書く編集部もかなりあります。つまり、書ける編集者が求められる傾向が強いです。
そういう意味で、書くことが好きで、がっつり書きたい人はフリーランスになるという道も王道だと思います。問題は、あらかじめ設定されたテーマを求められるレベルで表現するスキルをどうやって身に付け、それを証明するか。やり方は人それぞれで、学校や講座に通ったり、編集プロダクションや出版社に入って実践経験で得たりするケースなどがあります。
私の印象だと、出版社の正社員になるというのは、結構ハードルが高いです。それは、わたしが就職氷河期世代だからかもしれません。
いまは、柔軟に働きたいという人も多いと思います。そこでフリーランスを選ぶ場合は、やはりビジネス実務だけでなく、法律についても勉強することをお勧めします。残念ですが、フリーランス法違反をはじめ、一部の会社には特権意識なのか、「自分たちは何をしても許される」「忙しすぎて、法律改正とか知らんがな」と思っている発注者が業界にいるのも事実です。
それに、免税事業者に対して、「消費税相当額の半分を負担しろ」と執筆料を値切ってくる会社もあります。まだ仕入税額相当額の80%が控除されるのだから、半分は言い過ぎなはずですが。「フリーランスは法律なんて知らんだろ」と見下しているんですね。
そういう交渉も、フリーランスになると基本的にはすべて、自分でやることになります。だから、現実的には「執筆」以外にもやらなければならない業務がいろいろとあります。
それで少しだけ嫌な気分になることもあります。でも、世の中はそれだけじゃないのが面白いところです。
なかには、「これだと、シキノハナさんが損しちゃうから、請求書を出し直してください!」と言ってくれる会社さんもあったりします。めちゃくちゃ親切ですよねっ!!
あるいは、自分の仕事ぶりを見てお声かけくださったり、人に紹介していただいたりと、「ありがたや」「自分は本当に人に恵まれている」と拝みたくなる出会いが時々あります。
喜びが大きいから、フリーランスも悪くないなと思えます。正直に言うと、私はもう会社員には戻れないくらいフリーランス生活が気に入っています。えへへ。
どちらが得意?「なぜ」の編集仕事と「どんな」の執筆仕事
むかし私がビジネス雑誌の編集部に配属になったとき、その出版社では、編集も執筆もすべて自前でやるというのが基本の体制でした。しかし、その後、会社の組織改革があって、「編集者志望」と「ライターやジャーナリスト志望」で所属が分かれることになりました。
私は編集者の道を選び、結果的に、副編集長→編集長というキャリアを歩ませてもらいました。今振り返ると、「出版」というビジネスが好きだったのだと思います。
現在はというと、執筆だけの仕事もあれば、編集・執筆をセットでやっている仕事もあり、また編集だけの仕事もあります。そこの垣根が今ではなくなっていて、時間や報酬、やりがいなどのバランスをみながら、受託業務を調整しています。
大学院で「文芸」という領域に進み、改めて「書く」ことと向き合う時間が増える中で、ひとつ気がついたことがあります。
それは、「編集」の仕事は、「なぜ、今、このテーマ?」「なぜ、この執筆者に頼む?」「なぜ、この会社を取材する?」「なぜ、この製品に注目する?」と、なぜ・なぜ・なぜ・なぜ・なぜ…のオンパレード。企画を進めていくのに、ひたすら「なぜ」を自問自答するんですね。
ビジネスの世界でも、よく言います。「なぜ」を5回繰り返せ、と。戦略を策定するには、そういう視点が大切なのはわかります。編集作業において、いかにロジカルに考えられるかは、とてもとても大事です。
でも、いざ文章を書こうとすると、今度はそれよりも「どんな」が重要になると気がついたのです(文筆専業の方にとっては、当たり前の気づきかもしれません)。
「どんな光?」「どんな香り?」「どんな温度?」「どんな表情?」と、どんな・どんな・どんな・どんな…のオンパレード。それを、いかにすっきりと端的に伝えるかが重要になるんですね。
もちろん、あらかじめテーマが決まった文章を書く場合には、「なぜ」をきちんと押さえた文章は、編集者からとても喜ばれます。テーマ設定が執筆者の都合でブレてしまうと、全体の企画意図が変わってしまうことすら、あるからです。
だから、「なぜ」が不要なわけではない。意図を汲めるライターは強いですし、ビジネス上でも成功を収める確率は高まります。
多くの商業出版の場合、編集者とライターは、ふたりでひとつの作品をつくりあげます。それは、脳の「右脳」と「左脳」の役割分担と同じなのだな、と実感しています。編集者の朱字には、企画意図が見え隠れします。
もし、編集者になるか、ライターになるか、迷っている人がいたら、「ビジネスが好きか、表現が好きか」そんな視点で、自分の好みを掘り下げてみてもよいかもしれません。
今日も、ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
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よしもとばななさんのことを書こうかな、とちょっとだけ思ったのだけれど、便乗商売のようでやっぱりやめました。みんなが忘れたころに、こそっと書きたいと思います。
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